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雷魔法が最弱の世界  作者: ともとも
22/22

決闘宣言

一人、暗い闇の中で食事をしていた。


セクアナとは喧嘩別れ。

この世の全てが嫌になる。


これからどうしようか……

いっそ、死んでしまおうかな。


悲観的な感情が強まり始めた時、ドサッと何かが倒れる音がした。


心が追い込まれていても、今の現象は気になるもので音がした方へ近づいた。


林をかき分けて進む。


たどり着いた先、そこには大人の女性が倒れていた。


真っ白な髪がストレートに伸びている。とても柔らかな優しい瞳。まるで黒い感情が浄化されそうな輝きだ。

純白の羽織を着て肌の透明感がより際立っている。

身長は普通の女性と比べると高い。

僕と同じくらいかそれ以上。


僕と目が合うとその女性は急に腕を組んで立った。

まるで何かを自慢するように。


「ふっふん……あれれ?」


堂々とした態度も、僕の反応を見るとすぐにやめていた。

人差し指を顔につけて考え込んでいる様子。


僕には何をしたいのかよくわからない。


始めは心配した。だけど、元気そうに立っているのを確認すると、たぶん怪我はないんだろう。


女性が安全だと分かると、何もなかったかのように素通りして家に戻った。


「すいません……無視しないでください~~~」

女性が柔らかい口調で僕の方へ近づいてきた。


「何! なんか用ですか? 僕は忙しいので後にしてもらえますか!」


強く言い、帰ろうとすると腕を掴まれた。


「あの……私、一応貴族で、六大天という魔法騎士なんですが~~~」

「は?」


こいつは何を言っているんだと思い、疑いの目を向ける。


「この国を守るために、食料と灯りになる魔石を恵んで欲しいです~~」

「ごめんなさい、今はそんな余裕ないので、他をあたってください」


腕を振り払って足早に帰った。


家に戻り食事をしようとすると、またあの人の声が聞こえた。


「誰か~~~助けて~~~」


何度も叫んでいた。

どうせすぐに飽きて、どこかへ行くだろう……



---30分後---


「誰か~~~助けて~~~」


ああ……イライラする……


30分間この声を聞いていた。

さすがに我慢の限界がきて、女性の元まで行く。


今日一日分のおにぎりと、唯一の明かりである懐中電灯を渡した。

充電は満タンだから一週間くらいは持つだろう。


「これ持って、さっさとどこかへ行ってください!」


それを渡して帰ろうとした。

でもまた、腕を掴まれて止められる。

今度は、力が強くて引き剝がせなかった。


「少年、君はとてもやさぐれているようだけど何かあったのかな?~~? お礼にお姉さんが話を聞いてあげるよ」

「いえ、おばさんに話すことは何もありません!」


「うわぁ! いま、おばさんって言いましたよね! こんなこと生まれて初めて言われましたよ!

一応、私は貴族様なんですよ!」


「はいはい、貴族様ね……」


「絶対信じてないでしょう! ここまで貶す人、初めて出会いましたよ! あぁ、もういいから話しなさい、少しは楽になると思いますよ!」


少し迷った。

もう死んでしまおうと考えているし、最後に聞いてもらおうかな……


女性の目を見ると、ニコッと笑みを向けてくれた。


「もし、存在するだけでたくさんの人に嫌われて、家族や友達にまで迷惑をかける人がいたら、その人は死んだ方がいいでしょうか?」


「うーーーん……そんな風には思わないね~~たくさんの人に迷惑をかける。たくさんの人に嫌われている。

そんな中でも、死んでしまったら悲しむ人は必ずいるはずよ。

もし死んだら、愛を注いでくれた人たちが苦しいからね。実際、人の死を受け止めるのはとても辛いわ。私も魔法騎士だからね、何度も経験しているのよ……」


ふわふわしたイメージだったが、ちゃんとしたことを言ってくれて心に響いた。


「まともなこと言ってる……」

小さな声で言うと、どうやら聞こえていたようで、とても怒られた。


「またそんなこと言う! 私、貴族なんですよ! 

本当に初めてだよこんな失礼な人!」


まぁ、無関心だったので適当に「はいはい」とうなずいてあしらった。


「君みたいな若者には分からないと思うけど、死っていうのは本当に恐ろしいことだよ……」


女性の真面目な目が心に突き刺さる。

もう自殺をしようという考えはなくなっていた。


「あっ! 私はそろそろ任務に行かないと~~~少年、食料と灯りありがとう! また会おうね!」


そう言ってゆっくりと歩いて消えていった。


おばさん話していると場が和んだ。


そう思っているのも束の間、一人になるととても静かになる。

懐中電灯を渡し、周りも真っ暗。

どっと疲れが押し寄せて、寝いてしまった。



セクアナに酷いことを言ってしまった。

もう戻ってこないかもしれない。

でも、もしもう一度会いに来てくれるなら仲直りしたい……

裏切っていたとしても、今までの感謝を伝えたいな。







数日が過ぎて私はまた貴族様の屋敷に足を踏み入れていた。


悔しい、許せない、そんな気持ちでいっぱいだったが、感情を押し殺して笑顔で言う。


「あの時の提案、どうか受けさせてください!」

「ほう、そうか! いい返事が聞けると思っていた」


トモヤは苦しんでいた。あんな怒鳴る姿を見たことがない。

私がこの世界に転生してしまったからこんなことになってしまった……


「せめて最後にトモヤに会わせてください!」


「フフフ、そうか、最後だからな、お別れくらいさしてやろう。そうだな、家族だからあいさつしないとな、ハッハハハハ」


そう言って馬車を出し、貴族様もついてきた。


家の近くまで来ると馬車が止まり、私と貴族様の二人が降りた。


前帰った時は暗くてよく見えなかったが、家は丸焦げになって潰れている。

その近くにはトモヤが汗まみれで休憩のためか座っていた。


会うの、怖いな……

あんなことを言われたし……


だけど、必死なトモヤを見ていると心を入れ替える。


胸の前に拳を握った。

勇気をだしてトモヤを呼んだ。


私に気づいた時、前とは違って表情が明るくなっていた。

でも後ろに控えている貴族様を見ると、浮かない顔になる。


「少し二人で話させてください……」


貴族様に許可を取ると、トモヤと二人っきりになる。







「その……あの時は、僕がおかしくて、酷いことを言ってしまいました。ごめんなさい……」


丁寧に頭を下げた。

こんなことで許してもらえるとは思っていない。僕は何を言われても耐えるために目を強く瞑る。


「うん……全然いいよ、あんなことで嫌いになんてならない」


セクアナの返答を聞いて、思わず大きく目を見開く。


「それより今日は大切な話があってここへ来たんだ」


仲直りできたことに正直、もっと明るくなりたかった。

だけど深刻そうなセクアナの顔を見て、何も発せられなかった。


「うっ……うん、大切な話って?」


ごくりと唾を飲む。


「それがね……私は貴族様の妻になるんだ! めでたいでしょ!」

「……えっ?」


言っている意味が分からず混乱する。


仲直りはできた。

しかし、セクアナが貴族の妻になる。

このことを聞くと、頭が真っ白になる。


「え、何言っているの? うっ……嘘だよね? そんなことないよね!」


「全部本当のことだよ。私が貴族様の妻になったらトモヤは今までのように、苦しい思いをしなくて済む。貴族様が召し使いや家を用意して下さるからね。

本当はずっと一緒にいたいけど……今日からお別れだね」


「そっ、そんなの絶対嘘に決まってる! 

今までずっと騙されてきたんじゃないか、簡単に信じちゃダメだ!」


「私、ちゃんと実物見に行ったよ。家もあって誰にも邪魔されない山の中。執事の方もおられるし、嫌な思いをした貴族様とも離れられるよ。平和で自然も豊か。

トモヤにぴったりなところだよ!

だから安心して!」


言い終わるとしばらくの沈黙が訪れた。


明るく笑顔でいたが、セクアナの手は震えていた。


これが最後……?


「おい! もういいか、そろそろ行くぞ!」

クソ野郎の声が聞こえたと同時にセクアナが離れていく。


「バイバイ、今までありがとう!」


震えた手を横に振る。

セクアナは偽りの笑みを向けた。


無理をしている。


「ちょっと待っ……うっ!」


こんな時につまずいてしまった。


握ろうとしていた手がだんだん離れていく。


待って、待って、待って!


また僕は助けることができないのか……


セクアナも母と同じように、自分を犠牲にして僕を助けてくれる。


そんなの嫌だ!


もう母と同じ思いをさせたくない。


遅れて走ると、馬車はすぐ近くまで来ていた。

貴族とセクアナはすぐに乗り込み、止める間もなく出発する。



……そうだ、この世界は力が全て。

強い者が勝ち、弱い者が負ける弱肉強食。


その考えが頭に浮かんで、ある決意をした。



馬が速いスピードで走る。

距離は相当あった。


だけど間に合う。


馬に集中し無我夢中に追いかける。


体勢が整った時、魔法を発動させた。


「電気ショック!!」


青光は素早く飛んでいき、狙い通り馬の脚に命中した。

少量の電気だったこともあり、馬の足が痺れて馬車が止まる。


この一瞬で一気に距離を詰める。


馬車が止まったため兵士が数名、外に出ていた。

しばらく馬車は動かないだろう。


僕はこのチャンスを逃さない。


とうとう馬車の前まで来た。


「クッ!? なんだ、なぜ悪魔がここにいる!」


怯えながらも兵士が僕を睨む。

セクアナも驚いていた。


「決闘……」

「は?」


「セクアナを返してもらうために、一対一の決闘を申し込む!!」


鋭い目つきで言う。


当然のように周りからは笑われた。


「貴様、このワシに向かって何を言っている? もし決闘してお前が負けたら何をもらえるのだ、ハッハハハ! 

冗談もほどほどしろ!

こちらにいい条件がない限り、その決闘は無効だろ。Sぁ、この馬鹿げた悪魔を連れて行け」

「はっ!」


兵士たちが取り囲んできたので手を前に出すと、動きを止めた。

僕を捕まえるのに恐怖心はあるようだ。


「待て、まだ話は終わっていない!

もし僕が負けたら、僕自身をくれてやる!

僕を奴隷にするなり、拷問したり、お前の喜ぶことは何でも受けてやる!」


「やめて、そんなことに手を出さないで! 私が望んでやっているの、トモヤには関係ないでしょ!」


何かセクアナが言っているが、僕の耳に入ってこない。

今はただ一点、貴族だけを見て返答を待っている。


「……ふん、いいだろう。その決闘、私が認めてやろう」


すこし考えた末、貴族は僕の決闘宣言を認めた。


「それまでこの娘は預かる。また後日、決闘の日時を伝えに使者を送ろう。だが、お前と戦うのはうちの最強の戦士、魔法騎士である、ゲンブ・フライグだ!

せいぜい頑張れよ」


「望むところだ!」


この言葉を交わすと、貴族たちは馬車に乗り帰って行った。


負けたらそこで僕の全人生は終わることになる。

命を懸ける決闘が行われる。


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― 新着の感想 ―
[一言] まさかの連日投稿ありがとうございます! あぁーそうきたか 相手は例の女魔法騎士かな ようやく胸糞展開から光が見えてきたかも!
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