差別
はぁはぁ……
カナメを無事、家まで連れて帰った。
カナメは大怪我だったから連れて帰った時、両親にとても驚かれた。
命に外傷はないのでいいけれど。
送り届けると次は一人で家に帰る。
足を火傷しているから木の棒を見つけて杖の代わりに使った。
家までは遠く、いつものように歩けないから大変だった。
だから家に着くころにはすでに日が落ちて、辺りは暗くなっていた。
家にはセクアナが立っていた。
家に着くまで外でずっと待ってくれたらしい。
「おーい……た、ただいま!」
かすれた声になりながらも、安心させるために大きく叫んだ。
「トモヤ、大丈夫?」
僕の姿を見ると、駆け付けて肩を貸してくれた。
「アハハハ、ごめん。自分から仕掛けておいてボコボコにされたよ。まぁ、大丈夫だから心配しないで」
頬を掻きながら言う。
セクアナは大きくため息をついていた。
「体、ボロボロじゃない! 私が魔法で治すから静かに座って!」
久しぶりに怒られた。
セクアナはいつも面倒をみてくれる。
感謝だな。
「ありがとう!」
「どうしたの、いきなり素直になって。いいから座って」
早く怪我を治すために座らされた。
「それにしてもこの火傷は酷いね。よくここで帰ってこれたよ」
「頑張ったよ、僕も」
離しながら、セクアナの手から光が発生し、霧のような細かい水が出てきた。
火傷をしていた足はいつものように戻り、痛みも感じなくなっていた。
「これで痛くない?」
「おー、回復の魔法はやっぱりすごいね。それってもしかして女神の力も含まれている?」
「最近、昔の勘が戻ってきたから少し含まれているかもね。でも今は人間だから女神パワーみたいなものはないね」
いいな、すこし羨ましい……
足が治り、家の中に入った。
そして母に今日の出来事を話しす。静かに聞いて結局、何も言ってはくれなかった。
僕を哀れむ顔だけ向けて。
と、思って持っていると、母はみんな大好きなカレーを作ってくれた。
間接的に慰めてくれた。
お母さん、大好き!
それにしても今日は散々な目に遭ったな。
貴族が入学した初日に問題を起こすなんて……
意外に僕は問題児なのか?
今日のことは後悔していないが、雷魔法のことを皆に知れれて、学校に行くのが怖くなった。
次の日になり、学校。
覚悟していた。
ちゃんと覚悟していたが、とても苦くなる。
誰か生徒にで出会うと避けられ、陰口を言われ、小さな子どもからは石を投げつけられた。
「この悪魔! この学校からいなくなっちまえ!」
「どっか行け!」
「近づくな、やー、とりゃー」
「どんどん投げつけろ!」
小さい子に魔法を向けるのはさすがにできない。顔だけ手で覆いかぶせて防ぐ。
逃げるように学校に向かった。
グラウンドや廊下を歩いても誰も近づかない。
セクアナも哀れむような顔をして近くにいてくれる。
だけど、そんな顔されたら余計に苦しくなる。
教室に着くとアランたちが昔のように虐めてきた。
最近は何をしても動じない僕を見て、面白くなくなったのかほとんど関らない。
平和だった。
しかし、みんなから避けられて僕が落ち込んでいるのをいいように思い、ちょっかいをかけてきた。
机に落書きで「死ね」や「消えろ」など書かれる。
典型的な虐めだ。
今まで軽く考えていたが、今日それをされると怒りがこみあげてくる。
「よく来れたな、この学校に! 貴族様に逆らった後、強そうな護衛が出てきたらコソコソ逃げる、ろくでなしが!」
「おい、調子に乗るなよ」
気持ちに耐え切れず、僕の口から低い声が出る。
その声に少しビビっていたがまだしつこく言い返してきた。
「なんだよ、やんのかこのろくでなし! 来いよ! ふん、でもよ……お前、これからどうなるだろうな」
「おはよう!」
アランが挑発するも、ホノカのお挨拶によって打ち消された。隣にはカナメもいた。
「また、そんなしょうもないことやってるの。面白い?」
正義感の強いホノカが苦手なのか、何か捨てセリフを言って教室を出ていった。
「ごめんね、僕のせいでトモヤが嫌な思いをして」
「いいよ、自分でやったことだから」
「そうだったね……私もご免ん。皆から怖い視線に怯えて何も言い返せなかった。これからは守るから安心して!」
「そうだよ、みんなついてる。私もトモヤのことを守るよ」
僕を三人が囲んで気持ちを抑えてくれた。
おかげで、苦しい気持ち落ち着く。
カナメが昨日、酷い目に遭ったから
ふとカナメを見ると手首や足、頭など、あらゆるところに包帯が巻かれていた。
自分のことばかりで全然気づかなかった。
一応、僕は昨日セクアナの魔法によって完全に回復している。
というか、今まであった肩こりや、修行の疲れなども取れて、いつものより元気かもしれない。
「カナメ! 私が魔法で怪我を治すよ。痛そうで見てられない!」
「えっ、あっ、ありがとう」
「怪我が深いから手を握ってくれない?」
「てっ、手を!」
「ほらほら、いいから」
おやおや、良かったね。
僕は心の中で呟いた。
恥ずかしがっているのか顔や手からすごい汗が出ていた。手汗を取るために一度ズボンで拭いてから、セクアナの手を握る。
顔だけでなく、耳まで赤くなっていた。
回復すると時、セクアナは両手を握り返す。
気づくと手の周りには霧のような水が発生する。
光が反射して少し眩しい。
だからこそとても幻想的な光景だ。
目を閉じて魔法を唱えるセクアナが地味に可愛くて、カナメが目を合わせられていない。
見てるこっちがキュンキュンする。
それを自然にできるセクアナもすごい。
無事カナメの怪我も治り元気になった。
「あれ、回復魔法かけたけど、なんかカナメの顔赤くない? ごめん、もしかして失敗したかな」
「ああ、うん、心配しなくてもいいよ。もう十分です」
「ほんと?」
不意打ちでセクアナはカナメのおでこに手を当てていた。
まさかの出来事にカナメは手を震わせておどおどしていた。
このままだと、カナメが違う意味で倒れそうになるから、どうにか話題を変える。
「それにしても今日、カールは何もしなかったな。てっきり校門の前に待ち伏せして、何かやり返すと思っていたよ」
「本当本当! 私も何かするんじゃないかって怖がっていたよ。結局、何もなくてよかったけど、気を付けないとダメだね。
まぁ、みんな無事でよかったんじゃない!」
「そうだね]
ホノカの明るい声で、お互いに安心しあった。
もう貴族から何もない、この時の僕たちは、そうやって決めつけていた。
ある事件によって、学校生活が崩れ去るなんて……




