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第9話 4人目の仲間

「まずさっきの話し合いで決まったことがある。俺はシエラを仲間にするつもりでいる。「なんで一般人のシエラさんを仲間にするんですか!」とか思うかもしれないがその辺は後で話すから今は黙って聞いててほしい。

 仲間になるあたってお互いの事を知る事は必須だと思うから自己紹介をしてもらう。まずはシエラから頼む」


 想像通り俺の話を聞いて2人とも驚いている。俺もそんなこと言われたら驚く。それよりも色々と聞かれることが面倒なので2人が何かを言う間もなく話を進める。


「…紹介通り私の名前はシエラ。…よろしく」


 ミラとシェンが自己紹介をする前に俺は2人に念話を飛ばしておく。念話は俺が指輪に付与した効果で、魔力を込めることで同じ念話が付与してある指輪をつけている者と頭の中で会話ができるという便利な物だ。


(…あーあー、聞こえるか?あらかじめ2人に言っておくが自己紹介をするときにミラは魔族で魔王軍の幹部だったこと、シェンは竜王だってことを打ち明けてほしい)

(なんでですか?そんなことしたら私たちの正体がシエラちゃんにバレるじゃないですか)


 俺の念話が届いたようで、ミラから返事が返ってくる。まだ頭の中に声が響く感じが慣れないが次第に慣れるだろう。


(俺の事を信じてほしい)

(我はマスターの使い魔としてマスターに従うのみじゃ)

(うん。ありがとな)

(分かりました。ソーマさんを信じますけど後で理由を言ってくださいよ?)

(その辺は後々わかる。じゃあ頼んだ)


 念話を切り2人は自己紹介を始めるよう促した。


「えっと、私の名前はミラって言います。この前まで魔王軍幹部をやっていましたが私は悪い人じゃないですよ!今はソーマさんの仲間として旅をしてます。よろしくお願いします!」


 どこかのスライムが言いそうなセリフだな。まあ本当にいい奴だからセリフとしては合ってはいるんだがな。


「ミラは魔王軍幹部だったけど根はいいやつだから仲良くしてやってくれよな」

「…分かった。よろしくお願いしますミラ」

「こちらこそよろしくお願いします。シエラさん!」


 魔王軍幹部と知って少し顔が引きつってたから駄目かと思ったけど意外と仲良くできそうだな。問題はシェンなんだよな…竜王は世界中の誰もが知るおとぎ話とかにしか出てこないような奴だからな。信じてもらえるかどうか。


「では次は我じゃな。我の名前はシェン。この名前は我がマスターであるソーマ殿につけていただいた名前じゃ。今は竜族の姿をしているが以前は竜王と言う名で呼ばれておった。今はマスターの使い魔としてミラとマスターと共に旅をしておる。これからよろしく頼むぞ。シエラよ」


 シエラは呆気にとられている。無理もない。いきなり空想の存在だと言われ続けた存在が目の前にいるのだ。それが本当であろうが嘘であろうがほとんどの人は反応できなくなる。


「えっと今竜王って聞こえた気がするんだけど…竜王ってあれ?おとぎ話とかに出てくる竜種をまとめて世界の頂点に君臨するっていう…」

「確かに竜種は我の眷属じゃった。それがどうかしたのか?」

「じゃった?ってことは今は違うの?」

「今は我はマスターの使い魔じゃから自動的に竜族はマスターの眷属じゃぞ?」

「…すいません。俺っていつの間に竜族の長になったんですかね」


 は!?初耳だが?というより俺竜族じゃないのに治めなきゃいけないの?どこに住んでるか分からないのに!?


「基本的な管理は我がやるからマスターは高みの見物でもしてておくれ」

「はぁ…分かったよ。それでシエラ、シェンが竜王だって信じてもらえた?」


 高みの見物をしてていいなら別に俺が長にならなくてもシェンが続けてもいいんじゃないかと思ったけどシェンの決意は本物みたいだからそれでいいことにしておこう。


「…少しは。でも今度シェンの竜の時の姿が見てみたい」

「マスターの許可が下りるのと人気のない広いところでなら見せてやろう。改めてシエラよ、よろしく頼む」

「よろしくシェン。それとも竜王だから様つけたほうがいい?」

「様などいらん。シェンで良い」


 まだ完全に信じてもらえないようだから今度シェンの竜の姿を見せてあげるか。さてと…そろそろシエラが勇者だってことを公表しますか。


「シエラが仲間になるにあたってブレイブソードはシエラに渡した」

「なんでですか?シエラは一般人なんですからどっちかと言えば弓や魔法などの後衛を任せる方がいいような気がしますが…」

「それは我も同感じゃな。言葉は悪いが身体能力の低い者が前線に行っても早死にするだけだろう。マスターもそれぐらいは知っておろう」

「ああ、知ってるさ。実際しばらくは後衛をさせるさ。俺がシエラにブレイブソードを渡したのはだな…」


 一呼吸おいてから俺は真実を打ち明ける。


「…シエラが勇者の娘だからだ」


 その瞬間ミラとシェンがシエラの方を向いて俺とシエラの前に壁のように立ちふさがる。俺の口調から冗談ではないと感じとったらしい。だが俺は仲間になったばかりとは言えいきなり仲間割れとも受け取れる行動をとった2人に若干の怒りを込めた威圧感のある口調で説明を求める。


「…お前ら何してんの?いくらお前らでも仲間割れとみなされるような行動は慎むべきだ。俺が仲間を何よりも大事にする性格なのはお前らが一番知っているだろう?」

「じゃ、じゃがしかしマスターよ!シエラが勇者だと分かっていながらなぜブレイブソードを渡したのじゃ!ブレイブソードを持った勇者を一番恐れなければならんのはマスターのはず!」

「そうですよ!ブレイブソードを装備した勇者はソーマさんを滅ぼせる数少ない相手です!」


 ミラとシェンが俺に対して激しく口論をしているのを黙って聞いていたシエラはどうやら自分の事で俺が攻められていると気づいて申し訳ない気持ちになったのかシュンとしている。


「あ、あの…さっきから勇者の娘だとか何を言ってるの?」

「さっきシエラに何個か質問しただろ?それはシエラがもしかしたら勇者の娘かもしれないと思ってな。結果は見事お前は勇者の娘だと断定されたよ」

「…根拠はあるの?」

「もちろんあるとも。まず1つ目、シエラに渡したその剣は先代勇者と先代魔王が戦った時の勇者が持っていた剣だ。それを父親が持っていたと言う事はシエラの父親は先代勇者でありその娘であるお前も勇者だと言う事が1つ。

 2つ目は、俺とシエラの肉体が反発しあっていると言う事。勇者であるシエラの肉体が俺の体と反発しているということは…分かったか?」


 俺の問いかけにしばらく考え込むシエラだったが答えが出たようで顔が青ざめる。


「勇者である私と正反対の人ってことは…ソーマは魔王なの?」


 あまり言いたくはなかったんだが、これから仲間になるっていうのに隠し事もするわけにはいかないな。


「おう、正真正銘ではないかもしれんが俺が第100代目の魔王だそうだぜ」


 俺の魔王宣言を聞いて突然シエラがブレイブソードを鞘から抜き、俺めがけて突進してくる。


「体が勝手に!ソーマ避けて!」

「させん!」

「行かせませんよ!」


 突進をしてくるシエラに立ちふさがるミラとシェン。2人は知っているのだろう。いくら聖剣を扱ったことがないシエラでも勇者の血が流れている以上聖剣をそこらへんの一般人が振るうのとわけが違う。当たり所が悪ければ俺は死ぬだろう。だからこそ自分らが命を懸けてでもここでシエラを止めなければならない、と。


 だが2人のその思いは俺自身によって打ち砕かれる。シエラと2人が衝突する寸前俺はリミッターをすべて外しミラとシェンを横に突き飛ばした。そしてそのまま聖剣は俺の腹部に突き刺さる。


「ぐはっ!」

「ソーマさん!?」

「マスターー!!」

「…なんで?なんでソーマが出てくるの?ミラとシェンに任せればきっと止められたのに…」


 俺は口から血を流しながらなんとか喋る。


「…お、俺は…仲間同士で…戦うのを…見たくないんだ…。それに俺はこっちの世界の住人じゃないからさ…俺がいなくてもこの世界には大した影響はでないと思ってな」 


 俺は血を流しすぎたのか、かすんであまり見えない目を酷使してなんとか3人の表情を確認する。


「そんな…悲しい顔するんじゃねぇよ…。俺がいなくてもそんなに変わらねぇだろ…」

「そんなことないですよ…私はソーマさんからたくさんの物をもらいました…。だからこれからも私にいろんなことを教えてくださいよ!」

「我はこの世界は弱者で溢れていてみんな我より弱いと見下しておった。じゃがマスターは我に本当の強さを教えてくれた。大切な者を守る強さを…」

「私はみんなとあってから時間が経っていないから分からないけど…私にはなぜ魔王であるソーマが私が勇者の血を引いていると分かっていながら仲間にしようとしたのかが分からない。仲間にしたところを殺すつもりだったの?」


 俺はシエラの問いかけに少し考え、ぽつりと漏らすように返答する。


「…俺の住んでいた国には差別がなかった。だから…俺には魔王がどうとか勇者がどうとかはわからないんだ。だから…俺は…たぶん勇者と魔王とのわだかまりを無くしたかったのかもしれないな」


 シエラがゆっくりと剣を抜く。抜いた後俺は大量の血と共に床に倒れる。すごい痛いはずなのにそんなに痛く感じなかった。これがアドレナリンってやつだろうか。多分違うと思うけど今は頭が回らないな…。


 俺は最後の力を振り絞って思いをつぶやく。


「こっちでも向こうでも刺されて死ぬのか…なんか嫌だな。でもこれで魔王はこの世からいなくなるのか。いい事じゃないか。こんどこそ本当に輪廻の輪に加わるんだろうな…。神様…頼んだぜ?」


 俺は薄れゆく意識の中3人が今できるであろう最大限の笑顔をつくって自分を見ているのが分かった。そんな暖かい視線を浴びながら俺の意識は消えた。



 目を開けると俺は変な空間にいた。真っ白のもやがかかったような空間だった。

 そしてそこに俺ともう一人男がいた。


「ここは…どうやら俺は輪廻の輪に加えられていないようだな」

「どうしてそんな事がわかるんだい?」

「だってお前、前魔王だろ?」


 その男はどこから見ても前魔王だった。そいつが俺が姿を変える前の姿だったからだ。


「ご名答。僕が前魔王だよ」

「これはこれは魔王陛下。こんなところで何をされているのですか?」

「やめてくれよ。今の魔王は君だろ?それにこれは君の心の中だよ」

「俺の心の中ってことは俺は死んでないのか?」

「うーんなんていったらいいのかな。体は死んでるけど精神は生きてるっていうのかな?この前君がやった仮死状態?みたいなものだよ」


 仮死状態ってことは一応生きてはいるのか…いや体は死んでるってことはもう戻れないのか?


「俺はこれからどうすればいい?ここで一生お前と雑談でもすればいいのか?」

「君に戻る意思があるなら今の世界にも前の世界にも戻れるよ」

「日本にも戻れるのか!?」

「うん。どっちの世界も君の肉体は死んだあとすぐに修復されたようだよ。今の世界ではきっとミラがやったんだろうね。それにしても君はすごいね。昔はいつもどこか暗い感じで命令に忠実な秘書って感じだったのに君が来てからあんなに明るくなって」


 明るくなったのは俺が秘書みたいな時のミラの精神をぶっ壊したからなんだけどな。でもおかげでミラも吹っ切れたみたいだし結果オーライだったな。


 前世での修復というのはおそらく手術のことだろう。


「かわいくなっただろ?…どっちの世界にも戻れるのか…でも俺は今の世界に帰りたい。帰って3人にちゃんとただいまを言いたい」

「君を産んでくれた親には会いたくないのかい?」

「会いたいさ。会いたいけど向こうの世界…というか俺の中ではもう前世っていう風に割り切ってるが。そこでは基本的に死んだ人は生き返ったらダメなんだ。でもこっちなら俺だからなんて理由で許してもらえそうだしな」


 会えるならば何よりも会いたいが、会うためだけに向こうの世界のルールを破ってはいけないし、向こうの世界に戻ったとしてもこっちに戻ってこれる保証がない。


「はは、実に君らしい。僕は君みたいな人が僕の代わりをやってくれてうれしいよ。魔王はこの世界では嫌われている傾向にあるからね。僕はそれをどうにかしたかった。結局はできなかったけどね。でも君なら成し遂げてくれそうな気がするんだ。魔王という存在が生まれてから5,000年近く変わることのなかった固定概念をさ。

…さてそろそろお別れだけど何か聞きたいことはあるかい?」


 少し考えて俺は2つだけ質問を出した。


「じゃあ2つ聞かせてくれ。まず、この世界はなんだ?なんで日本人がこっちに紛れてるんだ?」

「それはこの世界が天界を通して向こうの世界とつながっているからだよ。いわゆる兄弟の関係にある世界なんだ。だからちょうど同じタイミングで死んだ人はその片方の魂だけがもう片方の肉体に定着することで転生するんだよ。基本的に転生者の元の肉体と転生された肉体の本来の魂は消滅するはずなんだけど君は例外みたいだね。向こうの君の肉体も僕の魂もこうして残ってるよ。まあ僕の魂は君の魂に隠れてる感じだけどね」


 と言う事はここは精神の中で、俺の精神とその中に隠れてる前魔王の魂と話してるって事か?この世界と向こうの世界は親密な関係にあるのか…裏世界みたいなもんか?


「そうか…じゃあ2つ目の質問だ。これからもお前に会えるのか?」

「君が望むなら夢の時にでも現れるとしよう。…あとミラに伝言を頼めるかな?」

「なんだ?」

「「ソーマ君とお幸せに」ってね」


 …ちょっとまて。その伝言俺が言わなきゃいけないんだろ?完全に変な奴だと思われるじゃんか。


「それ俺が言わなきゃいけないんだろ?」

「それはそうなんだけどさ…頑張って」

「じゃあ代わりに明日の夜に返信もらってくるから明日の夜会おう。じゃあな」

「じゃあね。僕が言うのもなんだけど君に幸あれ!」


 前魔王の祝福の言葉を聞きながら、俺はまた意識を失った。

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