いか
『いやぁ、途中で寝落ちしてしまうとは、こっちでも変わらんのぉ』
「寝落ちってサンも昔、いっぱい訓練したりしてたの?その、召喚される前のところで」
『まぁのぉ』
あー、そういえば、けっこう訓練中いろんなこと話せたのぉ。
一応、儂、ここに召喚する前の設定を一人でいろいろとやっていた老人としておいた。
まぁ、一部事実じゃしな。
ただ、一人暮らし、オンラインゲームでいろいろやっていたくらいか。
一応、なんとなく其の辺はちょい伏せた。
やはし、言いづらいものがガガガガ。
「そっかぁ、僕もがんばりたいなぁ」
あははは、あんまし徹夜では訓練以外はがんばんじゃないよぉ。
『にしてもお腹すいたのぉ』
「そだねぇ。僕もこんなにいっぱい訓練してお腹すいたのは初めてかも」
確かに。
というか魔力を盛大に使うと回復せずに放って置いていると異常にお腹空くのぉ。
何か食べたい。
個人的に昔ならあっさりうどんかそばかたぐるのもよいが今の体には肉っけがほしいな。
あ、でもこの体は猫じゃからネギ系はダメだったりするのかの?
うーぬ。
あと、イカをたべると耳が取れるとか。
あー、そんなこと考えるとイカ喰いたくなるなぁ。
生でよし、焼いてよし、煮てよし、干して炙ってよし。
そんときゃ、日本酒できゅっと一杯・・・・・あー、じゅるり。
おっとよだれが。
あっ、炙るなら七輪の炭がいいな。
ガスだと、匂いが映るし、炭のが美味しく思える。
『して、昨日いった食堂はどうじゃ?昨日はかなり遅く閉店ぎりぎりじゃったから人なんぞほとんど、というかわしらくらいしかおらんかったが、今はどうかのぉ』
まぁ、いても何か言われたりする可能性を思うといなくて良かったと思えるがな。
正直あのときは疲れているというのもあって、仮にそういうことがあったら対処するのも面倒じゃったからな。
というか、そもこの学園の食堂はさすがに広い。
昨日いったところは第二食堂とやらで、全部で食堂は第三まである。
メニューで出すものは同じなんじゃが、場所が北と南とで分かれておって、各々その時の好みでいけるのじゃが、なんでか遠目の第二食堂へとメルは向かっておった。
今もそう。
んー、やはり同じクラスメイトとは顔が合わせづらいのか。
さすがに便所飯でないだけよいのか。
ともあれ、遅い朝食をとりに結構長めに歩いて第二食堂へと到着した。
とにもかくにも貴族が食事をしにくるということで、学園食堂とはいえとても綺麗なカフェテリアになっていた。
各所丸テーブルが有り、思い思いに食事が楽しめるようゆったり間隔もあいている。
ちょっと高級なレストランみたいじゃ。
昨日は夜で星空を眺められ、日中なら日中で窓の外には森が広がり自然豊かな光景を楽しめる。
けっこう金取れるような構造じゃのぉ。
で、中に入れば、生徒の数はいることはいるものの両手で数える程しかいない。
食事時からはずらして入ったがそれでも少なすぎるくらいじゃ。まぁ、理由も訓練中にきいたことじゃが、なんでも休日はどうも貴族の生徒はほとんどがその授業の状況と自身の魔法の進捗状況を報告しにそれぞれの家に帰るようである。
遠いところの領地のものもかえるとのことでどうやって帰るのじゃろうと聞いたときは思ったが、なんでもポータルというのがあってそこから帰るとのこと。
はじめは所謂、ワープかとも思ったが、その名のとおり、ポータルは駅。つまり、この学園の地下に魔導列車なるものがあり、有料で各々の領地へ短時間で移動することができる代物があるんだとか。
なら、メルも帰らないのかとも思ったが、自身の状況に加え、家族環境を鑑みてそりゃまぁ、帰りにくいわな。
なので、学園に残っているんだとか。
ただ、そういう生徒はごく少数であり、また帰らない生徒に対して、暗黙のうちに「金がない」だとか「成績劣等者」だとか「偏屈」だとか思われるらしい。
帰った生徒にはその領地内で社交の場というものがあったりするので余計にその見栄の部分が大きくなるのだとか。
正直、羨ましいというよりも貴族というのも面倒じゃなと思ったのが正直なところなんじゃがな。
ま、そんなわけで、休日はいじめるようなやつもいないし、のんびりまったり好きなようにご飯が食べれるというのがいいな。
『さて、何を食べるか』
「そうだね・・・・・んー・・・・・」
入りながらそう言いつつ、食堂に立てかけられているメニューを見る。
ウェイターがやってきて注文をきくでなくこうして立札のそばの厨房まで趣いてセルフでとっていくのは学生食堂といったところじゃな。
「おやおや、メルちゃんかい。また遅くにきたもんだねぇ」
厨房内にいる顔見知りのおばちゃんに声をかけられる。
昨日の夕飯時にはじめて敵意以外の感情のある声を聞いたなと思ったが、このおばちゃん、ライアというおばちゃんで、都市からのまぁ、いうなればパートタイマーのおばちゃんである。
料理の腕はいいし、とてもおいしいごはんを作ってくれるけど、それ以上に誰にでも分け隔てなく接してくれるところがいいところといったところである。
「こんにちは」
「にゃ」
儂もそんな彼女にぴっと手をあげる。
「あい、こんにちは、サンちゃんは本当に愛想がいいねぇ。ここの使い魔はあまり愛想が良くないし、食べるもの食べてはい終わりなものだからちょっと寂しいからねぇ。さて、今日は何にする?」
「おすすめは?」
「ちょうど平民イカがあがったところでおいしいからそれの煮付けと焼き物にしようと思ってね」
「そうなんだ」
おお、イカか。
よくわからん名前のイカじゃが、イカはイカ。
ホタルイカみたいに小さいものか?それともスルメイカみたいなものか?
うーぬ、ごくり。
「あ、猫ちゃんはだめよ。イカを食べたら倒れちゃうって言うからね」
な、なんと、食えないのか?!
うー、いやじゃいやじゃ。
こう言われると余計に食べたくなるぞぃ。
「あー、そうなんだ。ごめんね。じゃあ、他のにしようか」
そう言われ、儂はやおら床にぴょんと着地するや・・・・
「にゃーにゃーにゃーにゃー」
駄々こね始めた。
ここの食事、昨日体験してわかったがそれなりにおいしい。
昨日は簡単なものしかなく、軽く焼いたササミに麦飯じゃったが、ササミは焼いていながらもぱさぱさせず、しっとりしていておいしかった。
なら、イカ好きじゃし、それならもっと美味しく食べれるじゃろうと思って期待したとたん食えんとは。
悲しいにも程がある。
ほかのもおいしんじゃろうが今はイカの気分なんじゃもん。
そうして、やや駄々こねていると
「別に猫にいかあげてもいいんじゃないの?よく焼けばだいじょうぶだし」
ふとメルの後ろで女の子の声で天の助けのようなセリフが聞こえてきた。
駄々こねをやめ声の主を見やれば、
赤い髪をポニテにまとめて長く垂らしているやや勝気そうな女の子がそこにたっていた。




