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カオスタワー  作者: 冬ノ木目


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16/16

16.頽理世界・5

〜頽理の楔(???????)・最深部〜



「Vv■OO■ooOO…」


「「………………」」



…何だこれ。牛が急に馬を喰ったぞ?

脚が治って牙や眼が増えている事からして、体力の回復と自己強化を同時に行う特殊行動?だとしたら…!


予想は当たった。

馬を取り込んだ牛は俺達を一瞥もせず、鹿に向き直る。

だが、鹿はまるで置物にでもなったかのように動きを止めていた。



「鹿も喰う気だ!止めるぞ!!」


「あ、は、はい!ですぅ!」



鹿を討伐してしまえば強化は防げる。そう読んで攻撃を仕掛けるが、鹿の首に噛み付いた牛は、自身と同サイズの鹿を持ち上げ、振り回す。


クソが、これじゃ近づけない。牛は頑丈過ぎて鋼草玉一発じゃ部位破壊に至らない。ならばと鹿の頭を攻撃してみても、一部吹き飛びはしたが、流石に全身消し飛ばす事は出来ない。


そのまま鹿の巨体も牛は貪り、3体の巨獣は完全に1つとなる。


それが何らかのトリガーだったのか、2体を腹に収めた牛が突如形を失い、スライムのように流動し、1つの巨大な肉塊となる。

試しに攻撃してみるが、表面に僅かにめり込んで鋼草玉が落ちたので、あまり効果は無かったようだ。




その直後、肉塊に罅が入り、ガラスが割れるような音と共に砕け散った。


中から現れたのは…異形を極めた怪物。



口周りに牙が生え、口は喉元まで裂け、裂けた肉の内にも臼歯のようなものが覗いている。


鹿と牛の角が二重螺旋を描いて前方に伸びており、ヘドロのようなものが纏わり付いている。


眼は六つ。額が眼窩のように裂けており、そこに六つの眼球が押し込められるように収まっている。本来の眼球の場所には奇形の毒々しい花が咲いていた。


胴体は腹の肉がごっそり消え去って背骨と肋骨のみとなり、内側に大量の腐った果実が詰め込まれている。


両肩から触手のように背骨が伸び、先端にはおそらく馬と鹿のものであろう頭骨。鹿の頭骨は口内に眼球のついた毒果実を大量に生成している。


尻尾は幾本もの脚を継ぎ足して作られており、長さは本来の数倍にもなっていた。



“■■■■■■□□ローLv100”


「■Q■□hIV■■OO!!」



世界一悪趣味なケルベロスが尾を振るい、俺達のいた場所を真一文字に薙ぎ払う。真上に跳んで避けたが、風圧で体勢を崩し、不恰好に着地する。


急いで顔を上げると、前方にいたはずの異形牛がいつのまにか真横に移動しており、二つの頭骨が目の前に迫っているところだった。



「迎撃ィ!!」



咄嗟に投擲し、頭骨を弾き飛ばす。賭けだったが上手く行ってよかった。理想は破壊だったが、対処出来るだけでも上々だ。


それにしても今のスピード、馬の突進と同等だったな?


なるほどステータスも3匹分。まさか体力まで統合されてないだろうな?この元気一杯ぶりを見るに、ありえない話じゃない。


異形牛が後ろを向いて前脚を地面に突き刺し、脚で出来た尾と両後ろ脚で一息に蹴り上げを放つ。


異形牛の後方に一斉に地雷を起爆したような爆発が放たれるが、|後ろを向いた時点でサイドに回る。《知ってる動きなので回避余裕》


残念、既に馬で予習済みだ。


「これがホントの馬鹿力ってか!?シフォン、とりあえず脚を狙うぞ!今までの化物を見るに、多分アイツも再生持ちだ!だが推定ボス戦な以上、弱点はある!動きを止めるんだ!」


「了解ですぅ!!」



頭上に名前が表示された事といい、間違いなくこっからが本番だ。


シフォンがスキルを発動し、異形牛の右前脚を斬りつける。だが、切断はできず、表面に食い込んで止まっていた。元々防御力の高い牛だったが、強化されればこうなるのか。ここに馬の機動力や、鹿の遠距離攻撃も加わってくる。少なくとも正面に立つのは避けたほうがいいだろう。



「硬っったいですねぇ!なら何度でも斬るまでですぅ!!」


「肩の骨に注意しろ!いくらお前でも食らったらシャレにならねえ!」



二本の背骨と先端の頭骨は、言わば自在に動くフレイルのようなものだ。特に鹿頭骨の方は毒付き。体力の削れ方が尋常ではない。



「迎撃すれば無問題ですぅ!あっちょっそんな高いとこで振り回されたら攻撃出来ませぇん!」



異形牛が鹿の頭骨を振り回し、毒果実をばら撒いてきた。回避したが、着弾した瞬間に毒果実が弾け、毒液を床にぶち撒ける。行動範囲の制限までやってくんのかよ、害悪め。鹿頭骨は最優先で破壊すべきだな。



「どうにか鹿の頭をぶっ壊す!シフォンは脚優先!それ以外は迎撃だけでいい!」


「分かりましたぁ!」



鹿の頭にもう10発以上ぶち込んでるが、弾き飛ばせるだけで罅すら入らねぇ。破壊不能ってこたないだろうが、肉があの硬さだからな、骨がそれより頑丈でも納得だ。だがそれはそれとしてさっさと壊れてくれ。



「〔全撃斧(アックスオールアウト)〕ぉ!!」


「H■□MM■Qoo!!」



べギィ!と鈍い音が鳴り、異形牛の右前脚がへし折れた。だがその直後、折れた脚を黒い蔦のような植物が少しずつ覆い、元の形に治っていく。やっぱ再生(そう)すると思ったよ!


一瞬魔法を使おうかとも思ったが、俺が投擲を当てられるのは時間加速(ダビデピース)と制球力(リアル技能)の合わせ技だ。

激しく暴れ回るアレを相手に魔法を狙った場所に当てるなんて無理。


頭を弾き飛ばしたり脚を斬りつけたりを繰り返していたら、異形牛の動きが変わる。



「Vv□QuU■■■Aaa!!!」


「ボスが引き撃ち(それ)はダメだろォ!!」


「足元が毒液塗れで動けませぇん!」



異形牛が俺達の周囲を囲むように周回しながら、鹿頭骨の毒果実を連射してくる。厄介な戦法かましやがって、ならこっちにも考えがある。



「〔放火(ファイア)〕!」


「QuH■YYMM□■■!?」



いよぉし!同じ軌道で走り回るってんなら、途中の床に魔法を置けば引っ掛かると思ったぜ!


炎上するかどうかは賭けだったが、あんなナリでも元はクノッサ平原のモンスター。

やっぱ火が弱点なのは変わらないみたいだ。


だが一点だけミスった、これじゃシフォンが攻撃出来ないな。仕方ない、その分は俺が働こう。狙いは変わらず鹿頭骨だ。アレさえ壊せば大分楽になる。再生されるだろうが、脚の治る速度からして完全破壊されたパーツを治すには時間がかかると予想。


だからはよ壊れろや!もう100発は投げたぞ!?



「よし、炎が消えた!攻撃頼む!」


「分かりましたぁ!足止めしますのでぇ、炎をもっとくださぁい!」


「え?いや、炎上してたらシフォン近づけないだろ?」


「やりようはありますぅ!」



シフォンの「やりよう」とやらは分からないが、信じよう。



「行くぞシフォン!〔放火(ファイア)〕!」


「よいしょぉ!」



着弾の直前、シフォンがバックステップで回避。再び異形牛が激しく燃え盛る。ここからシフォンはどうする気なんだ…?


炎を払おうともがく異形牛に投擲で嫌がらせしていたら、シフォンが戦斧を大上段に構え、スキル名を叫ぶ。






「〔翔けよ刃、雷の如く(ブリッツディバイド)〕ぉ!!」



振り下ろすと同時、三日月型の雷とでも形容すべき閃光が、一瞬の内に異形牛を奔り抜ける。


一拍遅れて、軌道上を光が埋め尽くし――





「……ッ……■■…□oo……」


「すっげぇ…」


「わたしのドロップスキル、ようやく見せられましたぁ…」





異形牛の胴体は袈裟斬りに両断され、断面は完全に炭化して煙を噴いていた。


そして――肉の無い胴体、そこに詰め込まれた毒果実の塊。その中央に――


種のような卵のような、ともすれば腫瘍にも見える黒い「なにか」が、ドクンドクンと脈打っていた。



「ナイスシフォン、絶対アレが弱点だ。毒果実が固まってたのはアレに近づけさせないためだったって事だろ」


「うーん…断面から露出してるってことはぁ、あの黒いのは真っ二つに出来なかったってことですよねぇ。ちょっと悔しいですぅ」


「何、もっかいぶった斬ってやればいいんだよ。さっきのを次撃つまでにどれくらいかかる?」


「リキャストは10分ですねぇ。それとぉ、〔翔けよ刃、雷の如く(ブリッツディバイド)〕は一撃毎にMPを全部消費しますぅ。あとぉ、反動で5分間ATKが70%減ですぅ」



随分重(・)い(・)スキルだが、あれだけの威力を誇るなら妥当か。

とりあえず弱点に〔放火(ファイア)〕と投擲をぶつけ、どうにか壊せないか試す。



「成程な…道中で使わなかったのも納得だ。ドロップスキルは2つ持ってるんだっけ?もう片方はどうだ?」


「そっちは今は使えないですねぇ。コストやリキャストが軽い代わりに色々と条件がきついのでぇ、この戦闘中は絶対に満たせないですぅ」


「まさに必殺技って事か…」



無料で常時発動《ノーコストノーリキャスト》の〔権能(マスタースキル)〕マジぶっ壊れ。〔神片:試練(ハーキュリーピース)〕のデメリット部分も、高いPSを前提とするならレベリングに最適だしな。



「分かった。マナタブレットをありったけ渡しておくから、撃てるようになったらどんどんやっちゃってくれ」


「えっ!?い、いいんですかぁ?さらっと1スタック(100個)渡されましたけどぉ、多分こんなに使わないですよぉ?」



俺は投擲があるからMP回復の機会が少ない。奴の身体を両断できる火力を持つシフォンに渡す方が有意義だろう。



「俺も自分の分は残してあるから問題無し。気が引けるって言うなら、使わなかった分だけ返してくれればいいからさ」



ぶっちゃけ返してくれずとも何の問題も無いのだが、貰うのが気が進まないと言うのならまあいいだろう。



「分かりましたぁ、必ず真っ二つにして見せますよぅ!」





「VM■……O…!!」


「クソッ、まだ再生できんのか…!」




視線の先には、弱点と覚しき塊に集中砲火を受けながらも再生を続ける異形牛の姿。

そして今、再生だけではない別の変異が起きようとしていた。

ボスの名前ですが、モンスターの名前が重なってるように見えてます。

名前の長さが違うため、3種の名前が重なる部分は■、2種の部分は□、ガーデンバッファローが最も名前が長いので、最後だけ牛の名前が見えてます。

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