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ファンタジー 10ダメージ

高校への通学時、急に階段を踏み外したような浮遊感が僕を襲う。数舜後、体感で数メートル落下した。


「痛・・・くない?」


尻もちをついたが、思ったほど痛くなかった。そして、辺りを見回すと知らない平原で――


「お前、一体どこから現れた!」


西洋のような全身甲冑の騎士団に囲まれていた。剣は抜き身で、今にも斬りかかってきそう。


「ぼ、僕は――」


「いいから、逃げろ!」


一体何から逃げろと言うのだろうか。そう思った瞬間――


「ぎゃおおおお!」


真後ろから咆哮が響き渡る。恐る恐る後ろを振り向くと、全身を黒い鱗に包まれたドラゴンが居た。僕の事をエサだと思ったのか、ゆっくりと顔を近づけてくる。逃げたいのに、足に力が入らない。喉に力が入りすぎて言葉が出ない。


そのまま食われると思った時、僕はある事に気が付いた。


「あ、これ夢だ。それならドラゴンとだって戦ってやるさ。くらえ!」


僕の記憶が正しければ、犬は確か鼻が弱点だ。いや、ドラゴンは爬虫類だろうけど、やってみるしかない。僕は数メートルジャンプし、ドラゴンの鼻にパンチする。うん、やっぱり夢だ。だって、僕が数メートルもジャンプできるわけないし。


ドパンッ


僕の全力のパンチがドラゴンの顔を弾けさせる。


「ととっ、着地成功」


数秒後、バランスの崩れたドラゴンの体がドズンと大きな音を立てて倒れる。しばらくして、大きな歓声が沸き上がった。


「ゆ、勇者様だ! 勇者様が現れたぞ!」


「国が救われた!」


「家族の元へ帰れる!」


騒がしい中、一際目立つ鎧を着た人が僕へ近づいてきた。


「私はこの部隊の騎士団長です。勇者様、ぜひお礼をさせてください。さあ、街へ一緒へ来ていただきたい」


僕は、なし崩し的に騎士団長の馬に乗せられる。そして、1時間ほどして街へ着いた。


「王城の準備が整うまで、ギルドへ行ってもらえませんか? 是非、勇者様のお力を知りたいのです」


「え。ええ、いいですけど・・・」


僕は押しに弱く、特に何の予定も無いのでギルドへ行く事にした。ちなみに、1時間の間にこれは夢では無い事が分かった。さすがに1時間もずっと馬に乗る夢なんて見るわけが無い。 


ギルドに入ると、綺麗な受付嬢が居て、団長が何やら話をすると訓練場らしき場所へと連れていかれる。


「ここで、力試しが出来るんですよ」


「さあ、勇者様。この魔道具を殴ってください。あ、最初は手加減してくださいね? 今まで壊れた事はないのですけれど、ドラゴンを1発で倒された勇者様の力だと壊れる可能性が高いので」


僕は受付嬢が渡してくれた板っぽい魔道具に軽くパンチする。すると、板に600という数字が表れた。


「おぉ、軽く殴っただけなのに600ダメージとは恐れ入った! ちなみに、平均的な騎士が本気で殴っても100くらいです」


つまり、僕は軽く殴っただけで騎士の6倍ものダメージがあるっていう事だ。


「今度は、もう少し強めに殴ってみてください。過去最高の数値は、騎士団長の出された1000ダメージです」


さすがに騎士団長なだけあって、普通の騎士の10倍もダメージが出るのか。それなら、僕はさっきの倍の力で殴れば記録更新する訳だ。なので、僕はさっきの倍の力で殴る。しかし、表示されたのは10ダメージだった。


「・・・あれ? 故障でしょうか?」


「私が試してもよろしいでしょうか?」


騎士団長は、僕から魔道具を受け取ると、殴りつける。それほど本気に見えなかったけれど、300ダメージと出た。


「私の今の攻撃なら、いつも大体これくらいの数字です。壊れてはいないようですね」


「で、では、もう一度やってみてください」


僕は騎士団長から魔道具を受け取ると、今度は本気で殴る。しかし、表示されたのはまたしても10ダメージだった。


「あれ? やっぱりおかしいですね。もう何度かやって貰ってよろしいでしょうか?」


僕はやけになって連続でパンチする。0ダメージ、0ダメージ、0ダメージ、10ダメージ、0ダメージ、0ダメージ・・・。


「これ、おかしいよ。たまに10ダメージが出るだけで、ほとんど0ダメージなんだけど」


それから、騎士団長がもう一度試すが、その時はきちんと正しい数値が表示される。ということは、つまり、僕の攻撃は本当に0ダメージか10ダメージって事。いや、最初に600って出たのは何だったのか。


それからしばらく試した結果、その原因が分かった。


「恐らく、勇者様のユニークスキルだと思われます。1分間で10ダメージを溜めることが出来るみたいですね。つまり、1分経たずに攻撃すれば0ダメージで、2分経てば20ダメージという感じで」


街へ到着したのは大体1時間ほどだから、最初に600ダメージが出た理由が分かった。そして、このスキルは明確に攻撃するという意思が無ければ発動しなかった。そして、いつからのカウントかは分からないけど、ドラゴンを殴った時はもしかしたら十数年分の累積だったのかもしれない。今までの人生で、明確に攻撃したいと思って殴った事なんて無いからね。


また、日常生活にも支障は無さそうだった。攻撃する意思が無ければ、扉をノックする事も出来るし、誰かの肩を叩くこともできる。ただ、攻撃するって意思表示した時、どれだけのダメージが出るのか分からないのが怖いけど。1日何にも攻撃しなければ、1440ダメージが加算される。それはつまり、騎士のパンチの14倍以上のダメージって事だ。恐らく、それだけで普通の人間は死ぬだろう。


また、この世界の重力は地球よりも小さいのか、僕がジャンプすれば数メートルは跳べたので、僕の身体能力が上がったわけでは無いようだ。


最後に、王城へ行き、王様からお礼の言葉をいただいた。本当は配下に欲しかったんだろうけど、僕のパンチが時限爆弾の様なものだと知ったのか、ものすごく苦い笑顔だったのが印象的だった。

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