第六十話 人の領域を超えたもの達よ 前編
「……」
ラリシアはネーストレスとイザーグ、ディナンシアと共にロズヴィアの邸宅に入った。
「大きいですね……思ったよりも…」
ラリシアが見る限り、豪華絢爛な部屋という印象が強かった。他三人はそうでは無かったようだが。
「…大きい、確かに、そう、かもな…」
イザーグが若干震えて言った。
その紅い瞳をラリシアに移す。
「本当に、大丈夫なんだよな?」
「ん?ここの主を殺せばよい、ということですよね?」
「あ、あぁ」
「はい、容易だと思いますよ」
ラリシアははっきりと言った。
「──ほぅ、よくそう言えるものですね」
「……!?貴方は!」
「……透明化で隠れていたのですか…」
四人の前に突如現れたのは、白髭を携えた初老の男。
腰に刀を持ち、黒いスーツを着ている。
「私は、リ・シャオン。これから、ロズヴィア様のところへ案内致しましょう」
「この家に入ったことが、バレていたの?」
四人は事前に、ロズヴィアに気づかれないようにこの家に侵入していた。
しかし、実際はそうでは無かった。
「現実はそう都合よく進まないものです…」
シャオンという老人は語り出す。
「往々にして、かような事態は発生しますが、皆様はどのようにしてそれらの問題を解決されますか?」
「都合よく進まない時という事ですか?」
「ええ」
「ん〜、頑張る、ですかね」
ラリシアは答えた。
「なるほど、なるほど。単純で明快ですね……」
「……」
「……貴方は一体何者だ?私たちも知らないなんて…」
イザーグ、ネーストレス、ディナンシアの三人は、このシャオンと名乗る老人に会ったことが一度も無かった。
しかし、それは奇異な話である。何故ならば、彼女たちは最初からロズヴィアに着いてきた者達。
ロズヴィアの側近はいない、ということは十二分に理解しているはずだった。
「……私ですか?私のことなどどうでもよいですよ…さ、もうそろそろ着きますよ…」
「あの──」
「あら、どうやらお出迎えのようですわ…」
ディナンシアが警戒する。
「ふむ…なるほど、お前たちか、うむ。それで?その女は何者だ?」
ラリシア達の目の前に突如現れたのは、一見貧相に見える衣装を纏う男だ。
──ロズヴィア。この階層の実質的な主である。
その衣装は見た目とは裏腹に、破格の性能を誇る。
火炎耐性、氷耐性、雷耐性、闇耐性…etc。
「あ、ぇ、あ」
イザーグは──
「あ、うあ」
ロズヴィアを見ると恐怖で身体が動かなくなる。
◇
イザーグが産まれたのはそこまで大きくはないまでも、一介の都市であった。
生まれつき、紅い髪の毛に、紅い瞳をもつ八重歯の天真爛漫な子であった。
そんな彼女は成長し、その町のシンボルであった聖騎士団へと入った。
そこでは過酷なことはあったものの、なんとか上手くやっていた。
そこでは彼女も正義の少女だった。
しかし、ある日転機が訪れる。
「な」
イザーグの両親は殺されていた。
それは、聖騎士として成績をあげるイザーグに嫉妬したものの仕業だと後で分かった。
「……最低な職業だな…」
聖騎士に失望したイザーグは、影で活動していたある組織へと加入する。
それは、そういった聖職者を謳う職業の闇を暴く、一種の違法職業であった。
そこで、イザーグは南国へと指示される。
「君は、──南国で迷宮の闇について調べてくれ」
「はい!」
そして、イザーグは迷宮へと侵入する。
が、一人では流石に危険だと思い、仲間を集った。
「ディナンシアです」
「ネーストレスだ」
「イザーグ」
三人集った。イザーグはそこで迷宮に入ろうとし、──
「すまないが、そのチーム、俺も入れてくれないか?」
妙な笑顔を携える男と、イザーグは出会った。
「俺は、ロズヴィアと言う」
──。
第十層の攻略時、であった。
その時、イザーグ、ロズヴィアと、ネーストレス、ディナンシアとで別れてしまう場面が出来た。
その時だった。
「んぶっ!?」
イザーグは突然口を押さえられる。
「?」
モンスターか?と思ったが──
「ふふふ、ははは」
微笑む男。
「お前、可愛いなぁ?」
ロズヴィアは、イザーグをそこで犯した。
抵抗できず、一方的な破壊。
首を絞められ、身体中を鞭打され、嘔吐して尚、イザーグは一方的に犯された。
「っはぁ、気持ちいいなぁ、おい」
力量差は圧倒的だった。
そして、そこで、イザーグはロズヴィアに対して、拭いされない恐怖を抱いてしまった。
そして、
「ん?おい、イザーグか?」
「あ、え、あ…」
犯され、放心状態となった全裸のイザーグを見て、ディナンシアとネーストレスは驚愕する。
「!?なんて酷い…!大丈夫ですか?」
ディナンシアが駆け寄る。
「あぁ、本当に酷いよな、誰がこんな事したんだ?」
ロズヴィアが、ディナンシアとネーストレスの後ろにたった。
「──!?」
「身体捕縛」
ディナンシアとネーストレスも捕まる。
「よし、決めたぞ…」
ロズヴィアは嬉しそうに手を広げた。
「お前たちは俺の奴隷第一号だ!」




