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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第三十六話 迷宮手前

『え!ブラッド様、もしかして、本当にご自身のお力全てを語るんですか!?』


『馬鹿。流石にそこまではしないさ。だがまぁ、魔法使いであることくらいはカミングアウトしないとな』


「…あの〜、ブラッドさん、ですよね?」


「あぁ、ブラッドだ」


「僕、ラリって言います。よろしくお願いします。僕は体術をやっています。主に戦闘重視です」


小柄な少年がブラッドへ告げる。


『体術……か』


『ぷ〜くすくす。ブラッド様、コイツたいした事ありませんよ〜』


『使い道は幾らでもあるさ』


「……次は私かしら?私はヨーネ。術使いよ。攻撃が基本ね」


『術使いか。珍しいな』


『そうですね。どの程度か、私にもわかりませんが』


「じゃあ、俺だな。俺は、魔法使いだ。後衛として基本はお前たちに強化(バフ)をかけて行くつもりだ」


「最後は俺ですね。俺は剣士です。ですが荷物持ちやアイテムも持つ役を兼ねてます」


『んー、なるほど。このチームが少しわかってきた気がする』


『私も分かりましたよ〜。このチーム、アレですよね、ブラッド様、なんというか』


盾役(タンク)がいない』


『そう、それそれ。それですね』


『お前本当に分かってたのか?』


『…いや、まぁ、分かってましたよ…』


ブラッドにはツァリが半目で顔を逸らしている様子が容易に想像できた。


「じゃあ、このチームでの構成をどうするか、だが…術使いの、えー、ヨーネ。アンタは何の術が使えるんだ?」



「なるほど」


ヨーネの使用出来る術は殆どが幻影など、幻系統の術ばかりであった。


「陣形は、ディアが正面、左右にヨーネとラリ、一番後ろに俺でいいな」


「はい」


代表としてディアが言う。


「用意する持ち物は、松明、食料、水、調理道具、ポーション…それから応急手当の用具、くらいか?」


「いいと思います」


「よし、じゃあ、行くか」


ブラッド達の目の前に立ちはだかるのは、巨大な塔。

否、巨大などと陳腐な表現では表せない。

それは、天を貫いていた。

どこまでも上へ続くような、塔。


それこそ、迷宮(ダンジョン)



「でかいな」


「なにせ、迷宮(ダンジョン)だけで一生を終える人がいるくらいですからね」


そんなに手間は掛けられない。

と、ブラッドは思いつつ、しかし同時に疑問、違和感を覚える。


「しかし、これが天然物とはとてもじゃないが、思えないな」


「神の産物ですね」


「神か」


かような存在は、いること自体は確定しているが、しかし──


「物凄いものだ」


天を貫く塔を見せられてはブラッドも驚く。


「アンタたち、早く行くわよ」


「あぁ、そうだったな」


ヨーネは黒いローブを羽織っている。

ラリは金属のメリケンサックを付ける。

ディアは腰に長い剣を提げている。


「……」


スタスタと歩く。そして、迷宮(ダンジョン)の前へたどり着く。


「何か受け付けていますよ?」


「大方、迷宮(ダンジョン)に入る許可証とかを発行するんだろう。俺達も行くぞ」


迷宮(ダンジョン)の、つまりは塔へ入る最初の部分、その門の前方だけは整理されており、そこに受付などがあるようだ。

少し奥には転移門のようなものが見える。


「だがお前たち、ここフィリア国の者だろう?水汲みとかに来たことはないのか」


「えぇ、それが無くて」


「…へぇ」


「っと、皆さん着きましたよ」


ラリが注意して、ブラッドたちは姿勢を直す。


「すみません、迷宮(ダンジョン)へ入りたいのですが──」


「!?もしかして、新人さんですか?」


「え、まぁはい」


「珍しいですね。では、こちらで迷宮(ダンジョン)侵入許可証を発行致しますので、こちらの書類にサイン下さい」


『おい、ツァリ』


『多分大丈夫ですよー。言語化の魔法はあらゆる場面に対応しますから』


なんとかブラッドも書くことが出来た。


「ということで、改めまして、わたくし迷宮(ダンジョン)の受付嬢をしてます、ラリーちゃんです、よろしく」


「はぁ、よろしく、お願いいたします」


「えぇ。で、本日のご要望は何でしょうか。水汲みですか?それとも一から五層の観光でしょうか?それとも──」


空気感が、少し変わった。


「──新しい層の、攻略でしょうか?」


「えぇ」


ディアははっきりそう答えた。


『……この女』


『…はい。ブラッド様…!………強い…!』



糸目を引くその女は自分のことをラリーちゃんと呼ぶ。


「なるほど、迷宮(ダンジョン)攻略ですか。わたくしは今まで数多くの挑戦者を見てきました。そして挑戦する度に帰ってこない者たちを呆れるほど見ました。貴方たちも例外ではありません。とてもじゃないが、全員無事に生きて帰れるとは思えない。だいたい、なぜ迷宮(ダンジョン)攻略を?」


「ギルドの依頼だ」


「あぁ、あの弱小ギルドの…!」


「…!」


「そんなに怒らないで下さいよ、ははっ。しかし、何層まで攻略するおつもりですか?まさか最後までなんて言いませんよね」


「あぁ。俺たちは俺たちが丁度生き残れるくらいの層にいるとするよ」


「じゃあ六層からは無理じゃないですか?」


「え?」


「ここ南国フィリアの迷宮(ダンジョン)の最も強調されるべきは、その攻略難易度に依存します」


「……攻略、難易度?」


「ギルドでの難度指数、SS!貴方達は、死地に送られたのですよ」


ニコリとした笑顔で、マリーは言った。

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