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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
異界召喚編
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第一話 出生

我々の幸福は、あらゆる不幸の上に成り立っている。

人間の悪意は、多分、他の動物のそれを遥かに凌駕する。悪意とは知性の裏付けでもあり、同時に、人の真価を表す。

あらゆる幸福は、あらゆる不幸の上に立っている、というものがいる。

人間が腐っていると言う人がいる。人だけではない。腐っているのは人間だけではない。モンスターや、天使、悪魔だと言う人もいる……。本当の悪魔は人間だと言う人がいる。


犯罪など自慢したところで何も、自慢になどになりはしない、とも言う。


彼が言うには、悪とは意識的なものでなく、無意識的なものであるらしい。


「まぁ要は、この世にはあるんだよ。()()()が」


ブラッド・リ・ディアベルは足組みをしてそう語る──







朝日が王都を覆った。

明るい日は、大きな宮殿を照らし、下にある小さな街街を照らしていた。


恵みの日光である。


王都の名は、ラディア。


ラディア国。

ラディア国は過去二千年の歴史がある、由緒ある国だ。

その宮殿内にて。


「ふむ、して、姫騎士はどこにおるかの?」


国王、ラーディール・イリヴァ。国王の威厳らしい顔つき。


「さぁ、わたくしも見ていませんわ」


姫、ラーディール・アロヴァ。イリヴァの実の娘であり、当時十七歳。見た目は姫と言うにふさわしく、美麗な顔立ち。


「…ふむ、彼女がおらんとのう」


彼女、とは、この国随一の騎士のことである。

かの大戦で大活躍した、英雄的存在だ。


その戦力は、他国としばしば争うラディア国にとっては、非常に大きなものであった。


ラディア国では、過去最強。

騎士戦においては、常に優勝。


姫騎士、アラエル•リ•ディアベル。


その戦力は、他国からは化け物と称され、魔物間では人の魔王と呼ばれる程であった。


「彼女には、自由を与えておる。あの戦力じゃし、いつでもここに駆けつけられるということを思ってな…しかし…」


ここ最近、国王はアラエルの姿を見ていなかった。


それは、異様な事態であった。


何故なら、彼女は、どんな大戦の最中でも、必ず一月に一度は国王のもとへ戻ってきていたのだ。しかし。


「むむぅ…」


「…帰って、きませんわね…」


姫、アロヴァとも、姫騎士アラエルは仲が良かった。


女性同士だから気があったのだろうか。


兎にも角にも、アロヴァもアラエルのことが心配だった。


「とにかく、わしらの兵士を以てして…」


そこで、急ぎの兵士が、門扉を開けて、国王の部屋へ、入ってきた。


「…なんじゃ」


「あ、アラエル様が…!あの…アラエル様が…!」


「生気が…ない」


死んでいる訳ではない…が。


しかし、彼女は腹を大きくして戻ってきたのであった。


子を授かったのである。





「…子を身ごもった!?」


国王は驚きを隠すとか、隠さないとか、そういうことではなくて、純粋に、驚いた。不自然であり、違和感を感じもした。


しかし、国王は彼女について深くは問わなかった。それは何故か。


「……」


その威圧感が。アラエルの持つ瞳の強さが、まるで闘志を湛えた獅子の如く、国王に映ったからである。


そして、アラエルはそれにより、誰ともわからぬ者の子を授かった。


中絶という手もあっただろう。だがしかし、アラエル自身がそれを拒んだ。


「この子には…なんの罪もない…だから…せめて」


国王は、アラエルを退職させた。


それは、彼女を気遣ったからかもしれない。

これから一人で子を育てていかなければいけない。

彼女は隠居し、遥か遠くへ住むだろう。

それは茨の道だろうが、しかし。


「ラディア最強の騎士ならば…」


精神的ダメージは大きくても、大丈夫だろう、と。

そうして、子供は生まれた。

男の子だった。

名前を、つけた。


「…私の、苗字だと…名前は血筋がバレてしまうから…そうね…全く変えてしまいましょう…」


姫騎士アラエルは、その子に名前をつけた。


「ブラッド…ブラッドなんていいわね…」


そうして、ここに、赤子ブラッドが誕生した。




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