第十四話 徒歩
「では、私めからお話させていただきますとね、単刀直入に言えば死んでほしいのですよ。あれに」
豪華ではない、落ち着いた部屋に彼女はいた。およそ千キロほど離れた場所を彼女は指す。
「…あれ……と申しますと?」
「まぁ、あれは、非常に厄介ですからね。放っておくと面倒でしょう?」
「…はぁ、そうですね。では、やってしまいますか?」
「…そう簡単に倒せる者でもないのだけれどねぇ…」
「…熾天使か…」
帝国から上空を見渡せば、そこには熾天使の群れがあった。
「ですがあなたが出てしまわれたら彼に気づかれてしまうのでは?」
「確かに、彼は今王都にいるのでしたね」
「はい。──聖女様……」
聖女ジェラー二・アクセル・ミズ・チン。
◇
「では、襲撃を開始する」
「おう」
ブラッドは、所定の位置に付き、女神に奇襲する。
とは言え──
「もうバレているだろうが…」
作戦は漏洩しているのに、何故女神を倒さねばならないのか。
理由としては、まずここで倒さなければ更に大きな驚異となって来るであろうことが予想される。
そして、単純に。
「女神がめんどい」
世界の構造的な話になるが、この世界の根幹を支えるのは神族である。
その神族の中で御三家…のようなものがあって、まぁ三柱と言えばいいのだろうか。
まず、創造神、の柱。
そして、破壊神、の柱。
最後に、女神、の柱。
の、以上なのだが、そのうちの女神の中で、さらに言えば、治癒の神はブラッドにとって非常ひ厄介であった。
面倒なのだ。
単純に相性が悪いので、敵に回したくない。
もし回すなら、敵数の少ない今が良い。
という、理由もブラッドには一応ある。
「さて、どうなるかな」
女神たちのいる、王城の前で待つ。
(ん……?なんだ、この感覚は?……時間の延長感覚?)
妙に間延びした感覚がブラッドを襲う。
「…あ、れは?」
王城から人が出てくる。それは、男女四人であった。それを見て、ブラッドは疑問を持つ。
(あれらは一体…?)
◇
四人組を組んで外に出ていいということになった。等級の上から順に。
SSランクの伊藤徹から、Sランクの橋口まで。
忍浅葱と佐々木真也の、計四人組であった。
まず、女神からの試練ということで、送り出されたのがその四人組だった。
まず第一に、冒険者登録をしろ、というもの。
というのも、この世界には冒険者という職業がある、のでそれに入れと慎吾達は言われていた。そうすることによって、身分証のようなものを保持できる。それにより、宿や、あるいは様々な生活が楽になると言う。
「典型的なやつか?」
Sランク組が全員出ていく。
そして、時間をたてて、Aランク組、Bランク組と送り出される。
「登録したら戻って来いってことだったんだけどな。ま、俺宮田と七条和也、それから田中、それから……」
「…はぁ、何故私が…」
天野朱雀。唯一、一人のAランク。
が、慎吾たちはランクが何を指標に決められたものか知らない。
そして慎吾達が追加で聞かされたのはランクはこの世界では力の基本指針に非常に役立つということだった。
「…なぜか俺らと一緒なのな」
「…」
無言かよっ!と心中突っ込む慎吾。
「ま、まぁよろしく」
気まずさだけが流れる。
「…てかさー」
和也が話し始める。
「俺らってこの世界で外出るの初めてじゃね?」
「たしかになー」
「…」
慎吾は王城が広すぎて碌に眠れなかったことを告げようとしたが、やめた。
「では、行くぞ」
そして、慎吾達は歩いて城の外へと出る。
明るい陽の光が現れた。
「うぉ」
そこには、美しい街並みがあった。
「ざ、異世界だなぁ」
「…確かにこいつぁ、世界のどこでも見られない光景かもしれないなぁ」
「…すごい」
(兎にも角にもこれは恐らく地球じゃ見られない光景だな。)
「…んー?」
慎吾達は黙々と歩いていく。
そして冒険者登録できる、冒険者会場みたいなのに行く予定なのだが──
「道覚えている人~…はいない、のか?」
「…はぁ、アンタたちって…ホントに使えない…」
「な、朱雀お前…」
「まーまー」
「いいわよ、私覚えてるから」
「…」
街を過ぎていく。料理屋なのであろう、店屋や、何らかの店を通過していく。
「…何か変じゃね?」
「ん?」
そこで異変に気づく。
「なんか、…人がいない?」
「…たしかに?」
人がいない違和感を、慎吾は今知覚した。
「…誰もいないのかしら?」
「みたいだが」
和也が勝手に近くの家に入る。
「ん?施錠してないのか」
「おい和也…」
「…ま、みんなも来いよ。この家…」
「?」
慎吾達は家の中へ入る。
若干の罪悪感はあったが、慎吾はそれなりの良心は捨てたつもりである。
「ちょ、宮田、田中」
慎吾に続き田中も部屋へと入る。
「この家…ものが全然ないぞ。てか、何もない…そう、なんかこれはまるで…」
「引っ越し?にしては…タンスとか置いてあるしな」
「まるで、何かから慌てて避難したような感じだぜ」
家を少し捜索した後、他の場所へ行こうという話になる。
「他の家にも行ってみようぜ」
外に出る。朱雀が待っていた。
「…常識知らず」
「常識に縛られないのも、またこれ一興あり、ってな」
そうして、慎吾達は家を物色しつつ、誰にも会わないまま冒険者会場へと足を進めた。




