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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
幕間

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90/219

2-21-3 ゆかいな冒険者たち視点

 ギルドの牢から出て城へ行き、一通り話しが終わった後。

 案内された客室へ入ろうとするアルハに声をかけた。


「本当にもう怪我は大丈夫か?」

 アルハはついさっきまで、牢に繋がれ暴行を受けていた。本人は大丈夫と言い、確かに見た目も怪我は治っているようだが…。

「なんともないよ」

「そうか。いや、さっきはついバシバシやってしまってすまなかったな」

 自分を殴った相手には報復せず、オーカが殴られそうだったという理由で、あの性根の腐った統括を叩きのめしてくれた。

 嬉しくて思わず…俺の悪い癖だ。

「大丈夫、そんな(やわ)じゃない」

 いつもの穏やかな表情で、しかし、しっかりと答えてくれる。

 統括を睨んでいた時とは別人に思えるほどだ。

「それならいいんだが。俺はどうも、勢いだけで動いてしまうことがあってな」


 アルハは終始、俺が気を遣わないように受け答えしてくれた。

 本当に良いやつだ。




***




 アルハのいる客室の扉をノックする。

「どうぞ」

 すぐに(いら)えがあった。扉を開けて入れば、アルハは少し驚いた顔をしたが、直ぐにいつもの顔に戻った。


「いきなり悪い。少し聞きたいことがあってな」

 勧められた椅子に座り、すぐに切り出す。

「その……身体のことだから、気を悪くするかもしれん。嫌だったら、すぐにやめるから言ってくれ」

 初めて会った時から、ずっと気になっていたことだ。勿論、拒絶されたら引き下がるつもりだ。

「何のこと?」

「さっきの夕食、普通の量を食べてたよな」

「うん。あの、何か失礼なことしちゃったかな」

 どうやら食事のマナーについて論じられると勘違いされてしまったようだ。

 マナーについて、俺はなにか言えるような人間じゃない。

 それに、アルハの所作は貴族か王族だと言われても信じられるほど、洗練されている。


「いや、そうじゃないんだ。量が問題なんだ」

 やはり言いづらい。だが、目の前の男は、得難い仲間かもしれない。

 俺は勇気を振り絞った。


「身体、細いよな」


「まあ、その、うん」

 またその話か、という顔をされる。何度も言われているんだろうな。

 わかる。


「俺も、ご覧の通りなんだよ。もしかしてだけど…アルハも、食べても太らない体質か?」


 目と目が合う。それから、俺とアルハは同時に、しかしゆっくりと立ち上がった。


 差し出した右手は、がっしりと握り返された。




「量を食べても駄目か…」

「体を動かすのが仕事だもんね」

「それでもエリオスはアレだぜ」

「エリオスは普段何食べてるの?」

 同じ悩みを持つ者同士、有意義な会話が弾む。

 アルハは最近になって、かなりの量を食べるようになったが、それでも体格は俺と同じくらいだ。

 何故俺たちだけ、こんな体質になったのか。


「リースに『どうしてなの!?』って脈絡なく怒られたことがある」

「理不尽!」

 途中から愚痴になってしまった。

 リースは食べすぎると太るという。

 羨ましいと言ったら、頬を張られた。

 魔法使いとはいえ冒険者の平手打ちだ。頬は治癒魔法が必要なほど腫れた。


 結論としては、俺たちがこうなのは体質だから仕方ないということと、周囲の無理解はひたすら耐えるしかないことに落ち着いた。

「たまにこうやって、話をしにきてもいいか?」

「勿論」


頼もしい仲間ができた。




***




 夕食ができたからと食堂へ呼ばれて向かう途中、アルハと一緒になった。

「トイサーチにいる家族って、どんな構成?」

 アルハはエリオスほどじゃないけど、背が高い。話すときはいつも、見上げる形になる。

「メルノっていう女性と、その妹のマリノの二人だよ」

「血縁じゃないのよね?」

「うん」

 二人と住むことになった経緯を聞けた。

 宿屋の場所を尋ねたのが切っ掛けで、魔物から助けて、お礼として泊まって…。

 話の内容に、疑う余地はない。

 ただ、そのメルノという()のことを話す時、少しだけ目が泳ぐのよ。

「なるほど。それで、どこまでいったの?」

 踏み込んで訊いてみた。

「妹として接してるから、そういうのは」

 やっぱり目が泳ぐ。でも、嘘はついてなさそう。

「本当?」

「本当だよ」

「……じゃあ、オーカのことはどう思ってる?」

「どうって、オーカはオーカだよ」

 何故オーカの名前を? って顔になった。あ、これ、脈なしだわ…。

「私がどうかした?」

 いつのまにか食堂に着いていて、そこには当のオーカがいた。

「リースに聞かれて…」

「オーカ」

 アルハの話を遮って、オーカの両肩に手を置き、すすす、と廊下の脇に移動した。


「オーカ、彼のことは諦めたほうが良いわ」

「はっ!? な、何を」

「だって、……でしょう?」

 唇の動きだけで核心を突くと、オーカは顔を真赤にして慌てだした。

「え、ア……本人に、言ったの?」

「ううん。ただ、話を聞いてみたらどうもね」

「と、というか、私がその……そうだとは限らないでしょう!?」

「その反応で?」

「っっ!?」


 アルハは食堂の前で、こっちを見ながら首を傾げてた。

 ライドに何事かと問われて、分からないとこたえているみたい。

 こういうことには鈍感なのね。


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