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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第二章

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17 潜入は闇夜に紛れて

 先頭からエリオス、次にライド、オーカ、リースと並び、僕は殿(しんがり)を任された。

 僕以外の人は目的地がわかっているようで、暗い町を迷いなく進む。

 夜の街は静かで、騒ぐのは良くないっていう雰囲気だから、何も聞けない。


 やがて、大きな建物の前で立ち止まった。こちらは裏口のようだ。

 なんだか嫌な臭いがする。他の皆も顔を顰めている。

「最悪の事態が起きているようね」

 オーカがごく小さな声で呟く。

 全員が頷いた後、エリオスがそっと扉を開けた。


 噎せ返る血の臭いと、もっと酷い臭い。人が何人も倒れている。

「酷い……」

 リースが口を抑えて呻いた。

 冒険者がいつも相手にしているのは魔物で、魔物は死体が残らない。

 人は、死体が残る。

 ライドがその一つに駆け寄った。

「魔物にやられた痕だ」

 倒れている人は全員、傷口が荒い。武器を使う魔物もいるが、大抵は爪や牙だ。


 建物中を探したけど、生きている人はいなかった。


「怪しい場所は見当たらんな。どうする?」

 エリオスが声を潜めずに発言した。リースが魔法で創った灯りの元に、全員集まる。

「アルハ、どう?」

 オーカに見上げられた。

「どう、って」

 全員が僕を見ていた。

「アルハのことは、話してあるの。ここにいる皆、口は堅いわ。遠慮なく、力を発揮して頂戴」

 スキルとは言わず、僕が何か特別な力を持っている、みたいに話してあるのかな。

 エリオスの言から、不審な部屋を探しているようだし。


「地下に魔物がたくさんいる」

 建物に入る前から[気配察知]で気づいていた。けど、こんなこと言ってもオーカ以外に信じてもらえるかどうかわからなくて、言えなかった。


「地下か、それなら隠し階段でもあるんだろう」

 ライドがすぐに動き、足であちこちの床をトントンと叩く。

 反響音を確認していたんだろう、すぐに床の一点を重点的に調べ始めた。

「あった」

 板張りの床の、何の変哲もない場所に手を当てて、板をずらした。

 言われてよく見てもわからないほど微細な継ぎ目があったようだ。

「すごい、よく見つけたね」

 思わず口からそんな感想が漏れた。

「……大したことじゃねぇよ」

 ライドはそっぽを向いてしまった。しまった、気を悪くしたかな。


 板の下にはエリオスがギリギリ通れるくらいの縦穴が開いていて、はしごが付けられている。

 深さは10メートルくらいだろうか。

 ライドがさっと降りていった。

「照れた」

「照れたわね」

「照れてたわ」

 降りる順番あるんだろうな、どうするんだろ、と考えてたら、3人がそんなことを言い出した。

「え?」

 エリオスはニヤニヤ、リースはくすくすと笑っている。

「アルハ、先に降りて」

「う、うん」

 オーカに言われてはしごを降りると、当然だけどライドが待っていた。

 この先は細い通路が続いていて、魔物の気配はその奥だ。

 ライドは僕を見ると、また顔を背けてしまった。

「あの、気に障るようなことを言ったなら謝る」

 そう言うと、ライドはあっちを向いたまま、片手を振った。気にしてない、っていう意味でいいのかな。


 最後になったエリオスが、なんとか降り切る事ができた。身体のサイズも時と場合によって良し悪しがあるようだ。

 細い通路を建物に来た時の順番で進む。気配は奥にしか無いと伝えたら、全員走り出した。

「アルハ」

 オーカが隣に来て、声をかけてくる。

「最初は、見守ってて。危なく、なってから、お願い」

 走りながらだから、途切れ途切れだ。

 言い切って、僕が了解したという意味で頷くと、そのまま並走した。



 通路は五百メートルくらいあった。大きいとはいえ、普通の建物の下に作るような規模じゃない。

 こちらの気配に気づいた魔物が、奥から出てきて立ちはだかる。

 ゴブリンやオーク、コボルトといった、二足歩行の魔物ばかりだ。

 エリオスはこの狭い場所では大剣が扱いづらいと判断し、腰に下げていた手斧で迎え撃った。ライドも剣を1本のみ構える。

 リースは前衛二人に強化魔法を使いつつ、攻撃魔法も唱える。

 戦闘に割り込めるスペースが無いので、僕とオーカは後ろで、いつでも出られるよう待機。

 皆、強い。魔物の方が圧倒的に数は多いけど、エリオスとライドは冷静に、確実に魔物を仕留めていった。


「おかしい。どんどん増えてる」

 僕が呟くと、オーカも異常に気づき始めた。

 いくら倒しても、気配が殆ど減らない。

 死体は消えているから、復活しているわけでもない。


 戦っている3人の体力はまだ十分ある。でも、きりがない。

「手を出すよ」

 一応オーカに確認する。

「ええ」

 許可を得られたので、早速動く。


 スキルで創る刀じゃなくて、アビスイーターの短剣を使う。

 リースの前に出て、エリオスとライドの間に向かって短剣を振る。斬撃が魔物を数体薙ぎ倒した。

「下がって! アルハがやるわ!」

 オーカの声に、エリオス達が脇に避ける。

 魔物はどんどん数を増やしていて、のんびりしていられない。前に出て、魔物を斬りながら進む。


 通路の行き止まりは少し広いスペースになっていた。

 その真ん中の床に、何か図が描かれている。

 円の中に、文字のようなものが書いてあって……所謂魔法陣だ。絶対、これが元凶でしょ。

 魔物を殆ど減らしてから、その図を短剣で床から石材ごと剥ぎ取る。何かの証拠なら、図をぐちゃぐちゃに壊すのは良くないよね。

 図の真ん中をなるべく綺麗に両断すると、魔物の増加が止まった。


 残りの魔物は、オーカとエリオス達も討伐を手伝ってくれた。


「アルハ、他に気配はある?」

「ない」

 町の中にも魔物の気配はない。それを伝えると、オーカはようやく顔を緩めた。

「結局アルハに頼っちゃったわね。お疲れ様」

 オーカのねぎらいを切っ掛けに、他の三人が堰を切ったように話しかけてきた。


「本当に恐ろしく強いんだな」

「さっきのは何の魔法?」

「どうなってるんだその短剣」

「えっと……その前に、僕も聞きたいことが」


 オーカが道中話してくれるということだったのに、結局何一つ聞けてない。

「ここ、どこ?」


 僕以外の四人が、顔を見合わせた。



 ここは教会……ではなく、教会の北にある建物だ。先日、呪術つきの魔物が現れた時、狼煙が上がっていた場所でもある。

 前から持ち主が転々としていて、現在の所有者が誰なのかは不明。それなのに素性の知れない人の出入りは頻繁で、近所の人たちからは不気味に思われていたそうだ。

 ここへ踏み込んだのは、コワディスがここで呪術を教わったことに加え、「放っておけばまた魔物が出る」と証言したからだった。

 乗り込むのが僕一人じゃなく五人になったのは、状況を知るのは複数人いたほうがいいのと、万が一失敗しても誰かが報告できればいいという、こういう調査では定石の理由だった。


「具体的にどうやって魔物を出していたかは、コワディスも知らないと言ってたそうよ」

 オーカは「説明する暇がなかったのよ」と言い訳をしつつ、詳しい話を聞かせてくれた。

「予想以上に大事になっていたものね」

 リースが胸のあたりを押さえる。上の惨状を思い出してしまったようだ。

「ああ。早く報告に戻ろう」

 魔法陣の描かれていた石材を布で包んで持ち、僕らはその場を後にした。


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