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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第四章

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25 トラウマ

 ネシタさんに、行くとしたら十日ほど待ってもらいますがいいですかと聞くと、構いませんという返事だった。

「これまで幾度もアルハ殿にお会いしようとして、すれ違っておりましたから。今更十日くらい、なんともありません」

「それは、すみません」

 誰も来れない場所にいたり、同じ場所にひと月居なかったりしてたからね。申し訳ない。

 リオハイル王国に義理はなくても、ネシタさんの誠意と熱意には応えないといけない気がした。

「いえ。それでは、十日後に迎えが来るよう、手筈を」

「大丈夫です。えっと、リオハイル城下町の近くに転移魔法の印を持っていますので」

 行ったこと無いから印なんて付けていない。異界経由で行くつもりだ。

「それは僥倖。では、お待ち申し上げております」




 トイサーチ滞在三十日目の夜も、三十一日目の朝も呪術の痕跡は見つからなかった。

「本当に平気になったとして、原因は何だろう」

“解呪して回った旅の、成果ではないか”

「だといいな」


 メルノとマリノに行ってきますを言って、リオハイル王国へ旅立った。

 5分で着いたから、旅というほどのことはしてない。


 城門の前の兵士さんに名乗ってギルドカードを提示すると、まず客室へ通された。

 旅のホコリを落としてくださいと、お風呂セットと着替えが用意してある。

 とりあえずお風呂は一人で入らせてくれた! よかった!

 喜んだのも束の間、着替えが下着とガウンしか見当たらない。

 それだけ身につけて恐る恐る浴室から出れば、あっという間にメイドさんに寄ってたかられた。

 下だけ履いた、いわゆるパンイチ状態にさせられると、なぜかメイドさん達の動きが止まった。

「……すごい」

伝説(レジェンド)は身体も伝説(レジェンド)……」

「触りたい……」

 やっぱり怖い。謁見嫌い。

 冒険者になってから割れた腹筋とか、かろうじて筋肉のついた二の腕や肩甲骨のあたりをガン見されてる。

 このくらい、珍しくないでしょ。他の冒険者に比べたら貧相だし。

“替わるぞ”

「こうなる前にお願いすればよかった」

 次があったら絶対最初からヴェイグにやってもらおう。無理。



 羞恥プレイタイムを乗り越えて貴族みたいな服を着せられ、謁見に臨んだ。


 リオハイル国王は、僕の父親くらいの年齢に見える。

「試すわけではなく、ただ私が見たいだけなのだよ」

 そう言って、御前で手合わせを所望された。

 相手は、王国騎士団の副団長さんだ。騎士団の紋章が入った革鎧姿で、僕に向かって一礼し、刃の潰れた両手剣を渡してくれた。

 両手で持つ武器って、殆ど使ったことがない。槍は一度、空を飛ぶために出したきりだ。

 片手でも扱えそうだけど、あえて両手で構えて、副団長さんと対峙する。

「普段の武器は」

 構え方がおかしかったのだろうか。副団長さんに問いかけられた。

「短剣か、片手剣を」

 刀は通じにくいので、剣ということにしている。

「そうは見えないが……替えさせようか」

「いえ、このままで」

 せっかくだから、使ってみたいし。


 副団長さんの攻撃をすべて受けながら、短剣や刀ではできない動きを研究する。

 十回以上は打ち合っただろうか。副団長さんが距離をとった。

「そちらは攻撃しないのか」

 もう少し副団長さんの両手剣捌きを見たかったけど、あまり時間をかけるものでもない。

「では、いきます」

 両手剣は攻防一体ができて、使いこなせば強そうだ。でもやっぱり、片手が空かないのは僕の性に合わない。右手はヴェイグが使うものだし。

 両手剣を左手だけで握り直す。とっ、と軽い音を立てて跳躍し、副団長さんに詰め寄ると、そのまま切っ先を喉元へ突きつけた。

「まいりました」

 一瞬の間のあと、副団長さんは素直に負けを認めてくれた。


 副団長さんが下がった後、改めて王様に向き合う。

 短い銀髪に碧い瞳が、洋画の俳優さんみたいにかっこよくて、声も渋い。なのに、言動は好奇心旺盛で少年みたいな雰囲気を漂わせてくる。

 イーシオンがあのまま歳を重ねたら、こんな感じになるのかな。

「良いものを見せてもらった。この後、見学する時間がないのが残念だ」

「見学、ですか」

「騎士団の者たちに、稽古をつけてもらいたいのだ。頼めるか」

「……わかりました」

 ネシタさんが「冒険者の指導」とか言ってたから、そういうことをするんだろうとは予想していた。

 騎士団かぁ。あまり馴染みがないや。

「ディセルブに騎士団てあった?」

“いや、なかった。他の国でもあまり見かけぬ”

 ヴェイグにだけ聞こえる声で、ぼそぼそと話す。

「日本にいた頃は、王国には騎士団が付き物ってイメージがあったよ」

“必要がない、というのが大きな理由だな。戦える者を欲すなら、冒険者を集めればいい”

「確かに」



 リオハイルが騎士団を抱えているのは、昔からあるから、というのが大きな理由だそうだ。

 今は、戦う相手を魔物へ特化しようと路線変更を画策中で、騎士団員を指導できそうな腕の立つ冒険者を探していたのだとか。

「頭の固い連中が多くて、手こずっておるのです。そこへ、コイク大陸に渡り、あちらの討伐隊を冒険者へ導いたという、アルハ殿の話を王が耳にしまして」

 僕を案内してくれているのは、先程手合わせした副団長さんだ。

 謁見の間にいるときからずっと真面目な顔を崩さない。

 そんな副団長さんが、騎士団の現状についてあれこれ教えてくれた。

 要は、騎士団には腕っぷしだけではなく、身分階級やお金やしがらみ、そういうもので入った人も多く、今更魔物の相手をしろと言われても困る人たちの派閥が大きいのだそうだ。

 それ、僕がなんとかできる話なのかなぁ。


 話している間に、騎士団の訓練場に着いた。十人くらいが剣で打ち合ってて、二十人くらいがそれを眺めながら待機している。

 副団長さんが声をかけると、全員集まってきた。

 その内の一人が副団長さんに近寄ってきて、妙に馴れ馴れしい態度で話しかけた。

「どのくらいだったんだ?」

「手も足も出ませんでした」

 副団長さんが生真面目な声で返事をすると、馴れ馴れしい方はニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

「じゃあ、今回もお帰りいただくと」

「私が、です」

「は?」

 馴れ馴れしい方がばっとこっちを向いて、信じられない、という顔で僕を凝視する。副団長さんがそれを咎めるように、僕の前に割り込んできた。

「アルハ殿。いま、お疲れでなければ、ここに居る者たちとも手合わせをお願いできますか」

「大丈夫です」

 僕が返事をすると、副団長さんはぐるりと騎士団員たちを見渡した。


「こちらが、冒険者最高ランクの伝説(レジェンド)を持つアルハ殿だ。諸君らと手合わせしてくださる。一人ずつ、前に出ろ」



 結果は書くまでもないです。

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