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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第四章

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 ハインとラク、オーカとイーシオンは、全員がジュノ国に集まってから3日後に、ようやく顔を合わせた。

 オーカとイーシオンは完全に打ち解けていた。

 これまでハイン達に気を遣わなかったのは、イーシオンと二人でアルハの話をするのに夢中になっていたためである。

 イーシオンもまた、オーカを悪からず思うようになっていた。

 王族と言えば自分をいじめ抜いていたスキル使い達で、オーカのような王族はタルダ以外で初めてだったせいもある。

 恋仲と言うよりは、共通の憧れの人物を持つ盟友といった間柄である。


「申し訳ない。客人を放って……」

 オーカが恐縮すると、ラクがカカカと笑った。

「気にするでない。聞けばアルハの話をしていたとか。ならば仕方ない」

 隣でハインもうんうんと頷く。オーカは今も冒険者を休業中であったが、二人には「冒険者として接して欲しい」と言ってある。

「僕も冒険者やろうかな」

 ぽつりと発言したイーシオンに全員の視線が集まった。

「冒険者じゃなかったのか」

「いいのではないか?」

「問題ないと思うわ」

 全員からの肯定的な意見を背に、イーシオンは1時間後には冒険者カードを受け取ってきた。

新人(ルーキー)かぁ。アルハが新人だった頃ってどんなふうだったのかな」

「その日の内に一人前(シングル)、さらに翌日には上級者(ベテラン)へランクアップされていますね」

 イーシオンの疑問に、セネルがさっと答える。

「トイサーチって確か、魔物が少ないんだよね? まぁでもアルハだもんなぁ」

 早速ランクを上げに行こうとするイーシオンに、オーカが待ったをかけた。

「トイサーチへ行くのでしょう?」

「あ、そうか……」

 残念がるイーシオンに、ハインが口を出した。

「集まるのは女性ばかりと聞いた。ラクとオーカ、二人で行ってきてくれないか。俺はイーシオンに付き合う。アルハ以外のスキル使いというのを見たい」

 オーカがラクを見ると、ラクもオーカを見て、ニッと笑う。

「そうじゃな。では、女子会へ赴こうぞ」




 トイサーチで一番大きな宿屋の、一番豪華な部屋に、女性ばかりが集まっていた。

 中心にいるのはニコニコと笑顔を浮かべるフィオナと、フィオナが肩に手を置いて離さないため困惑気味のメルノである。

 マリノはメルノと同じ果実酒を飲みたがって咎められ、メルノの隣で不服そうにジュースの入ったグラスを傾けている。

「私も帰りはラクに頼んでいいかしら」

 ジュノ国から転移魔法と馬を駆使し、8日という短期間でトイサーチへたどり着いていたリースが、オーカをジト目で見ている。

「勿論じゃ」

「ごめん、リース。私だってラクがこんなことできるなんて知らなかったのよ」

 オーカは、ラクと共に異界経由でトイサーチに到着した。所要時間はおよそ10分。リースはかなり頑張った方なので褒めてあげて欲しい。


「アルハ様が旅先でご賞味されたという品を取り揃えました」

 フィオナの合図でテーブルに並べられたのは、8割が甘味だ。柑橘類やチョコレートの香りが漂い、マリノが目をキラキラさせてテーブルに身を乗り出した。

「食べていいの?」

「ええ、たくさんご用意しましたので、遠慮なさらず」

 マリノが早速、手近なケーキを取ろうとして危なっかしい体勢になり、メルノが慌てて世話を焼く。

「アルハは甘味を好むのか?」

「食事のたびに、というわけではないのですが、食べる時はこのようなものを好んでおられたようです。普通の食事は特に珍しいものはありませんでしたので、今回は外しました」

「ふむ……。なるほど、そうか」

 ラクは1人でなにか腑に落ちたように頷くと、オレンジタルトを一つ皿に取り、フォークで食べ始めた。

「美味しい……」

 先程までの不機嫌はどこへやら、リースは一口食べては幸せそうな顔でつぶやいていた。

「こちらもどうぞ。甘いものは得意ではなさそうですね」

 この場で唯一の男性であるヘラルドは、給仕に徹している。

 リースが無理矢理皿に乗せたチョコムースをどうにか平らげたオーカを見つけて、サンドイッチを差し出した。

「ありがとう。そうなんだ、少しなら食べるのだけど」

 オーカはヘラルドに礼を言い、ハムやチーズの挟まったサンドイッチをいくつか取った。


 一通り食べ終えたラクは、メルノに近づいて自己紹介をした。竜であることを話しても、メルノは「そうなのですか」と薄い反応だ。

「やはりアルハに慣れておると、儂程度では動じぬか」

 ラクが楽しそうに笑うと、メルノは首を傾げた。

「私の目には、ラクさんは人にしか見えませんので。この場で竜になられたら、流石に驚きますし、ラクさんと知らなければ逃げています」

 メルノは平然と言ってのけるが、ラクにしてみれば驚き以外の何物でもなかった。

「ふむ。竜は逃げ出すほど恐れておるのに、人の姿の儂は怖くないと?」

「今は、ラクさんが竜の姿になっても怖くはないです。アルハさんのお知り合いに、怖い人や悪い人はいませんから」

「余程アルハを信じておるのじゃな。アルハのどこに惚……いや、アルハの良いところはどこじゃと思う?」

 惚れている? と口にしかけたらメルノがカッと目を見開き今にも逃げ出すぞという気配を放ってきたので、慌てて別の言葉に言い換えた。

 メルノは気を遣われたことを察し、なんとかその場に踏みとどまった。

「優しいところです」

 一つだけを即答したメルノに、ラクはいささか拍子抜ける。

「他にないのかの? 力だとか魔力だとか……」

「顔とか身長とか」

「黒髪とか黒目とか」

「アルハ兄は食べ物を好き嫌いしないよ」

「手が大きい」

「冒険者らしからぬ細さが良いって言う人もいますね」

「他人を気遣えるところ」

「声」

「包容力」

「あのう……?」

 いつの間にか二人の周囲に全員集合していて、口々にアルハの長所、というより特徴を挙げていく。ヘラルドも参戦していた。

 囲まれている事自体にオロオロするメルノに、リースが焦れた。

「ほら、もう一箇所ぐらいあるでしょ?」

「え、えっと……その、アルハさんは……」

「うんうん!」

 マリノ以外が前のめりになる。

「確かにお強いですし、その、見た目も素敵ですけど……やっぱり、優しさがいちばん人として好ましいです」

 静まり返る室内で、最初に声を出したのはリースだ。

「そっかー!」

 納得、というよりは諦めに近かった。

 これ以上問い詰めても、メルノからアルハに対する他の感想は聞き出せないだろう。

 自然と解散したが、ラクはまだメルノの側にいた。


「強さは、二の次か」

 ぼそりと問うと、メルノは再び首を傾げる。

「アルハさんが弱くても、私はアルハさんが好きですよ」

 ラクは天井を仰ぎ、ふうっと息を吐いた。

「なるほどのう。これはアルハも惚れるわ」

 後半の言葉は声が小さすぎて、メルノには聞こえていなかった。




●●●




 フィオナさんに連れられて、一番大きな宿屋さんの一番大きなお部屋で、美味しいものをお腹いっぱいいただきました。

 アルハさんのお知り合いの方が何人もいて、皆さんからアルハさんの話を聞くことができました。

「アルハは言うまでもなく強いし、ヴェイグもおる。あの二人が成し得ぬことなど、なにもない」

 ラクさんには、こんなことを言われました。

「分かっては、いるのですが……」

 頭に手をぽん、と置かれました。竜であるというラクさんの手は、見た目と違ってざらりとした感触で、ひんやりしています。

 大きさや体温は、アルハさんの手に、少し似ているかもしれません。

「ならば信じておれ。何、あの二人で手が足りねば、儂や……他にもたくさん、アルハを慕うものがいる」

 先程、アルハさんのどこが好きかという話をしている時とは少し違う、温かい視線を部屋中から感じました。

 皆さんと目が合うと、頷き返してくれます。

 食べすぎて、別の部屋のベッドで寝ていたはずのマリノが、私の右手を握っていました。

「おねえちゃん、美味しかった?」

「ええ、とても」

 久しぶりに、心から笑えた気がします。

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