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ダンジョンボス

 

【エルドラ】は、チュートリアルの村から比較的近い場所にあるシボラの街付近の地下ダンジョンである。


 ここには、初心者を卒業したような者が訪れる場所にしては強いモンスターが多く生息する。


 そして、このダンジョンの何よりもの特徴はモンスターを倒した際のドロップ金が、他の場所に生息する同じレベルのモンスターの3倍近く多いことである。


 そのため、総合能力値100位以内のプレイヤーを始めたとした上位ランカーが小遣い稼ぎ気分で訪れるようなことも少なくはない。


「イリスは、ここに来たことあるの?」


「はい。初めの頃はずっとここでモンスターを狩っていました。あ.........今でもたまに来たりはしてますけど」


【エルドラ】の入口を前に、シリアルとイリスはそんな話をしていた。


 私は今でもここでレベル上げをしている。私のレベルだと、ここのモンスターの経験値効率はあまりよくない。それでもここに来るのは、作業になりがちであるレベル上げが、ここだと気分よく長時間行えるからだ。


 シリアルとイリスは【エルドラ】に足を踏み入れる。


 そこには、所々に金鉱が溢れている洞窟が奥の方まで広がっていた。


 手を伸ばせる位置に金があるこの光景が、ちょっとお金持ちになったような気分になれて心地いいのである。


「えーっと、この辺のモンスターじゃ手応えが無さそうだし、奥の方まで行こうかなーって思うんだけどいいかな?」


「は、はい。大丈夫です!」


 そうして進むことおよそ一時間。


 2人いるというのは素晴らしいことで、気付いたらダンジョンの最深部まで来ていた。


 このダンジョンは中間ポイントでボスモンスターが出てこないから、そんなに手こずることはなく、一人でも最深部くらいまでは楽々と来ることができる。とは言ってもここまで早くに到達したのは初めてである。


「じゃあ行こっか。イリス」


「は、はい!」


 シリアルは目の前の壁に書かれた魔法陣に手をかざす。


 すると、2人の体が青い光を放ち、次の瞬間には2人は別空間へと転移されていた。


 天井の高い閉ざされた洞窟。壁にはこれまでと変わらず金鉱が点々と散らばっている。


 そして、その部屋の中心部には2人の体の何倍もの大きさの白い龍が、とぐろを巻いて居座っていた。


 この白龍こそ、このダンジョンで一番強いボスモンスター【エルガード・ドラゴン】である。


 白龍は部屋に転移されてきた2人を前に、大きな咆哮を上げ臨戦態勢に入った。


「.........どうしましょう?」


「うーん。本気でやったらお互いの力がよく分からないと思うから、なるべく手加減しつつ時間を伸ばしつつ.........かな?」


「分かりました。なら、私から行きます」


 イリスは自分の体よりも大きな銀の杖を構えた。


「【ホーリーエーナスト】」


 イリスがそう唱えると周りに数十の光の玉が現れる。


【ホーリーエーナスト】は確か、神聖属性魔法の中でもLv1で取れる最初の魔法だ。イリスにとってできる最大の手加減がこの魔法なんだろう。


 イリスは準備ができたことを確認すると、エルガード・ドラゴンの方へ真っ直ぐ突撃した。


 でも、そんな攻め方をしたら.........


 エルガード・ドラゴンは、突撃するイリスに向けて口から白い光を放った。


 一歩引いて戦っていたなら余裕を持って躱せていたであろう攻撃。しかし、突進したイリスがそれを躱すことは出来ず、もろに正面からそれをくらう。


「【ハイヒールオーラエーナスト】」


 攻撃を受けながらイリスは、魔法名を唱える。すると、イリスの体に緑の光が纏った。


 エルガード・ドラゴンのブレス攻撃は今も尚続いているものの、イリスは一切の怯みを見せず、杖を振り、先程作った光の玉のいくつかを目の前の相手にぶつけた。


 そして、攻撃途中にダメージを負ったエルガード・ドラゴンは大きくのけ反り、ブレスは途切れる。


「【セイクリッドエーナスト】」


 イリスの魔法詠唱と同時にエルガード・ドラゴンの頭上から白い光が降り注ぐ。


 そんな様子を離れた場所から見ていたシリアルは、メニューからパーティ一覧の画面を開いた。


 やっぱり、イリスのHPが全く減っていない。多分、途中でイリスがかけていた常時回復魔法の回復量が、相手のブレス攻撃のダメージ量を上回っているんだと思う。


 イリスが不滅なんて名前で呼ばれるのは、回復系に特化した職業とスキル構成で異常なまでの回復量を誇るからだということは知っていた。


 回復系職業(ヒーラー)は、パーティとかだと重宝されるらしいけど、レベル上げとかソロ攻略という面では効率が悪いと思う。そう思っていた。


 でも、実際にイリスのこの戦い方を見て、考えを改めさせられた。


 イリスは、防御と回避の一切を捨てて、常時回復でHPを維持しつつ攻撃をするといった戦い方をしている。


 これはもはやヒーラーじゃなくて、前線で戦う攻撃魔法使い(ウィザード)である。この戦い方でレベル上げをずっとしていたのなら、ヒーラーという職でありながら、ソロで上位ランカーになるほどのレベルまで上げたことにも納得できる。


 エルガード・ドラゴンが爪を立てイリスに振り下ろすも、イリスはその攻撃をノーガードで受けて、即座に杖を振り光の玉を相手にぶつける。


 もう、これは時間の問題かな?


「.........えーっと、シリアルさん。このままだと終わってしまいそうなんですけど.........どうすればいいでしょうか?」


 イリスは攻撃をしながら申し訳なさそうにシリアルに尋ねた。


「うん。あとは任せて」


 最初から最後までイリスに任せたら本末転倒だしね? 最後くらい働かなくちゃ。



「.........え?」


 イリスは、シリアルの声を聞いて交代(スイッチ)をするべく振り返ろうとしてそれをやめた。


 自分が戦っていた白龍.........その真後ろに今見ようとしていた張本人が姿を見せたからである。


 運良くイリスが気付いたその一瞬。当然それに背中を向けているものが気付くはずもなかった。


 その次の瞬間には、シリアルがダガーナイフを振り下ろし、それを受けた白龍は白い輝きを放ちながら消滅していた。


遅くなって申し訳ないです、、、


明日も投稿します。

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