8話 魔境
年末前には閉めたいと思います
~シック帝国玉座の間~
玉座の間には重い空気が流れていた。その出所は新皇帝として玉座にある男よりもたらされている。正確に言うならば男の形をしたものだろうか。
その男は、能面のような顔でただ瞑想していた。この部屋には今帝国の重鎮たちが集められている。重鎮たちは皆、息をのんでこの永遠とも感じられる刻を待っている。誰も声を出すことはできない。玉座に君臨する者の異質なまでの強さ、何人も寄せ付けぬ禍々しさを知っているからだ。独裁国家と言われる帝国だが、今集められている面々は皆皇帝の座を巡り時には暗殺、時には謀略、自らのなせるあらゆる手段を用いてきた。そんな者たちすらも牙を抜かれ、骨抜きとする圧倒的存在。
重鎮A:
「ロクブンダ皇帝陛下、我々はなぜ集められたのでしょうか……」
辛抱たまらずある重鎮が声をあげた。声をあげた重鎮も含めその場の皆が額や背中から冷や汗を流している。
ロクブンダ:
「……我を脅かす存在が生まれつつある。今は儚く、かよわき存在。しかし、そのものの居所は何者かの介入で把握できぬ。しかし、我の力がいずれ勝ろう。それでだ……我は動き出そうと思ってな。この椅子に座るのにも飽きた。我の破壊の業がもはやな待てぬといっている。この世界を蹂躙しつくし壊し尽くせとな。」
ロクブンダはゆっくりと目をあけてそう言った。深淵に染め上げられたような目は何を写しているのか男以外の誰にもわからない。
重鎮A:
「それでは、我々は兵を集めればよろしいのでございましょうか……」
そう言葉が聞こえていないようにロクブンダは語る。
ロクブンダ:
「もはや人など無用、我は我の忠実なる下僕足る従を呼び覚ますこととした。」
そういい終わると、重鎮たちの足元から黒いもやがわきでた。それは一瞬で皆を飲み込み黒い繭のようなものを作り出した。やがてその繭から2体の異形が現れた。1体は人の形をしているが、頭には角、口からは牙が生えており体躯は2mを超え巌のようだ。もう1体は虎のような形をしている。体躯は5mを超え尻尾は二股に別れており、ギラギラとした瞳を向けている。
ロクブンダ:
「よく現れた。我が従よ。」
異形:
「「主よ、我らにご命令を」」
ロクブンダ:
「この国の人間を食い殺しお主らの同胞を呼べ」
異形:
「「おおせのままに」」
恭しく礼をし、異形たちは下された命を実行するために城下へと降りていった。
その日シック帝国は、その歴史を終えた。その日を境にそこは異形の巣窟となった。その事は瞬く間に各国に伝わり魔境と呼ばれ、かの皇帝を人々は魔皇帝と呼ぶようになった。
次回より更にさくさく進みます




