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職業無職の俺が冒険者を目指してみた。【書籍版:職業無職の俺が冒険者を目指すワケ。】  作者: スフレ
第一章――冒険者育成機関 『王立ユーピテル学院』
112/201

クラス訓練⑤

「旗の位置ですが――」


 ラフィの話によると。

 まず死旗は門を挟むように、両側に一本ずつ差さっているそうだ。


「つまり、中央の旗以外は気にせず抜いて構わないのだな」

「そういうことになります。

 ただ、旗の周囲にトラップが仕掛けられている箇所がいくつかあるそうです」

「罠? どんな?」


 チームメイトの犬人が首を傾げると。


「旗の手前に深い穴があるそうです。

 その穴にも幻惑の魔術が掛けられているそうなので、何も考えずに突っ走るとズドンと落ちてしまうと」

 

 ラフィは疑問に答え、俺たち一人一人に注意を促した。

 ちなみにそのあなの仕掛けられている位置は、校庭の右隅と左隅ということだ。

「運が悪ければ、左に展開している班はその罠に引っかかっている可能性がありますね」

「うむ……」


 考えを巡らすように、腕組みしながら黙り込むツェルミン。

 そんなツェルミンの様子を気にしながらも、ラフィは旗の位置ポイントを俺たちに伝えた。


○右方面

 校舎の右隅に一本。

 右隅から門に向かい、百メートルほどの位置に一本。

 図書館の玄関前に一本。


 現在持っている旗も含め、右方面の旗はこれで全てということだ。


○左方面

 ルーシィやルーフィが向かった左方面の旗は四本。

 校舎の左隅に一本。

 左隅から門に向かい、百メートルほどの位置に一本。(ただし旗と旗の間に大穴有り) 左隅から真っ直ぐ女子宿舎方面に百メートルほどの位置に一本。

 そこからさらに百メートルほどの位置に一本。


 向こうの班が旗をどれだけ手にしているかわからないが、これで旗十本の場所は把握できた。


「以上が、白旗チームが差した位置ポイントです」


 ラフィが説明を終えた後。

 ツェルミンは眉間に皺を寄せ、厳しい双眸でラフィを見た。


「一応確認だが、その情報は正確なのだな?」

「はい。間違いありません」


 一切の迷いなく自信に満ち溢れた様子のラフィ。

 そんな白兎の言葉に、ツェルミンは「どうやって聞き出した」と聞かない辺り、ラフィの誘惑ちからに心当たりがあるのかもしれない。

 彼女の技能スキルまでは知らないのだろうけど。


「わかった。

 彼女の提案が間違いないとするなら、大人数で手当たり次第に捜索する必要はなくなった。

 まず、この中から一人が中央の死旗デスフラッグの回収に行ってくれ。 

 ノノノが場所を突き止めているだろうが、死旗が二本では回収は不可能だからな」


 指揮官が指示を出していく。

 死旗の回収には、犬人の少年が行くことになった。


「それと左に展開したチームに旗の位置ポイントと、罠のことを知らせる者が必要なのだが」


 そう言って少し逡巡した後。


「それは僕が行ってこよう」


 指揮官リーダー自ら行動することにしたようだ。


「待ちなさいツェルミン。

 あなたの足では遅すぎます。

 ここはマルスさんに行ってもらうべきです」


 ここで再びラフィが噛み付いた。

 だが、他のチームメイトもうんうんと頷いている。


「だが、指揮官リーダーである僕が正確な情報を伝える必要はあるだろう?」


 指揮官としての務め。というわけか。

 一理あるとは思うが。


「勝率が高いのはマルスに動いてもらうことじゃないか?

 旗の位置もわかったんだ。

 後は全部引き抜くだけなんだぜ?

 ここでゆっくり話してるのもおしいくらいだろ?」


 狼人が口を開いた。

 他の生徒たちもそれに賛同のようだ。


 そんなチームメイトたちの様子に。


「……わかった。

 ならばマルス、頼んでもいいか?」


 ツェルミンは重々しく口を開いた。

 まだ納得はしていないようだったが、勝率の高いほうと言われ渋々了解したようだ。


(……常に我を押し通すわけではないんだな)


「わかった。

 直ぐに動いていいか?」

「うむ、頼むぞ。

 僕たちはこちら側のフラッグを全て回収しておく」


 そうして俺たちは再び散開した。

 元々あった班は、かなりバラバラになっているが、状況に応じて動いた結果だろう。


 そうして俺は全力で疾駆した。

 直ぐに左に展開した班が見えた。

 だが――。


「うおおおおっ――」

「なっ、なんだっ!?」


 罠に引っかかったチームメイトの絶叫が聞こえた。

 急ぎ駆けつけると。


「い、いてーにゃ……」

「……ありえにゃいにゃ……」


 猫人の男と女が、顔を歪めて尻を抑えていた。

 穴はそこそこ深いが、この程度なら直ぐに脱出はできるだろう。


「おい、大丈夫か?」

「お、おれらのことはいいから、旗を回収しろにゃ」

「この辺りにあるはずだにゃ」


 その言葉に俺は首肯した。

 穴の傍に魔力の気配がある。

 左隅から百メートルと言っていたから、だいたいこの辺りで間違いない。

 俺はしゃがみ、地面に向けて手を伸ばした。

 すると――。


(……あった)


 柔らかい布のような感触が手に伝わってきた。

 そのまま引き抜く。


「まず一本だな」


 次は左隅のフラッグだ。

 そちらに向かい目を向けると。


「ご主人様」

「こっちに来たの」


 ルーシィとルーフィの二人が俺の元にやってきた。

 そして。


「旗を取ってきた」

「一本ずつ」


 双子の闇森人ダークエルフは、二人同時に旗を俺に差し出した。

 一本ずつ手に持っている。


「流石だな、二人とも」

「魔力を探るのは得意」

「このくらいはできる」


 二人はほんの少しだけ頬を緩めた。

 だが、これでこちら側の旗は残り一本。


「二人は、旗をどの位置で回収した?」


 俺が尋ねると、二人はここから数百メートル先の位置ポイントを指さした。

 つまり、まだ隅の旗を回収した者はいないということだ。

 そうして俺が、もう一本の旗を回収しようとした時――。


 カーン! カーン! カーン!


 一時間目終了の合図。

 試合終了を知らせる教会のベルが響くのだった。

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