2話 追い出された先は…
成人の儀から1週間が経過した。
あのあとすぐに勘当され、僕は馬車に乗せられた。
行き先も告げられずただひたすら移動している。
1週間という時間は僕を落ち着かせるには十分だった。
乗っているのは僕と御者のみ。
静けさは思考を研ぎ澄ませる。
…馬車はどこまで走るのだろうか。
父さんは僕を遠ざけたいはずだ。
だとしたら、セイズ家と反対方向に進んでいるのではないだろうか。
セイズ家はノルド王国の中心に位置する王都ガイアの南側に居を構えていた。
なら…北?
王都から北に1週間だとすれば…まさか魔の森!?
魔物が数多く存在し、鬱蒼と茂る木々は日の光を遮り、何人もの犠牲を出しながら調査をしてもその半分も到達できなかった危険地帯。
それが魔の森。
そんな嫌な想像をしていると、突然馬車が止まった。
御者が振り返り淡々と告げる。
「ここで降りて下さい」
「…いったいどこに着いたんだ?」
「………」
御者は何も答えない。
…嫌な予感がする。
外れてくれと祈り、馬車を降りると目の前には鬱蒼とした森があった。
「最悪だ…」
案の定、そこは魔の森のだった。
正確には魔の森に入って少ししたところに降ろされた。
辺りを見渡すと近くに魔物はいないようだ。
「こんなところでいったい何を…」
振り返ると御者はすでに馬車を走らせていた。
遠くなっていく馬車の背中をただ眺めていた。
完全に見えなくなり、辺りは静寂に包まれた。
「…じっとしていてもしょうがない。今は生き延びる方法を考えよう」
自分自身を鼓舞し、気持ちを奮い立たせる。
馬車の方に行けば街には着くだろうが、<笛吹き>のことを知られてしまえばまた追い出されるかもしれない。
となれば…魔の森の奥へ進むしかない。
手元にはなにもない。
僕にできることは…魔法だ。
水は生成できるし、火も起こせる、動物がいれば狩ることもできるだろう。
魔法には属性があり、火、水、風、土、雷と<僧侶>系統のみ使える回復魔法の6つだ。
属性は得手不得手はあるものの、魔法を嗜む者は全属性使うことができる。
ちなみに、僕は苦手な属性はなく満遍なく使える。
体内に存在するマナを変換させることで魔法になる。
また、マナは魔法として使う以外にも体を強化させることもできる。
そして魔法は初級、中級、上級、特級の4つの等級がある。
等級が上がるほど必要な魔力量が増え、制御が難しくなっていく。
「…よし、行くか」
目指すのは雨風を凌げる洞窟。
食べれるものを探しつつマナの消費は最小限に抑えていこう。
僕は絶対諦めない。
そう心の中で決意し森の奥へ進み始めた。
「はぁ……はぁ……」
あれから5時間ほど経っただろうか。
僕は歩き続けている。
幸い魔物とは遭遇することなく進めている。
ただ、お腹が減った。
成人の儀から何も食べていない。
道中何度か動物を見つけたもののすぐに気づかれ、魔法を撃つ隙もなく逃げられた。
狩りぐらいできるだろうと思っていたが現実は甘くなかった。
「はぁ……さすがにもう…お腹が…」
グゥ~グゥ~鳴るお腹を押さえながら一歩づつ進んでいく。
「……うわぁっ」
木の根に足を引っ掛け倒れ込んでしまった。
顔に痛みが走る。
「くっ…諦めないぞ…絶対生き延びて…セイズ家を…父さんを…見返してやる…」
強く拳を握りしめ、立ち上がる。
前を向き、また一歩づつ進んでいく。
すると突然見慣れない物が視界に映る。
「これは…いったい…」
石造の建物が森の中にポツンと建っている。
若干古ぼけているものの結構な大きさだ。
「建物?魔の森に?誰が、何のために?」
いくつもの疑問が浮かび上がる。
明らかに怪しいが、背に腹は代えられない。
「ここで休もう、もしかしたら何か食べられるものがあるかもしれない」
自分に言い聞かせ、恐る恐る中に入る。
入るとすぐに広間に着いた。
辺りを見渡すと、壁には11体の石像があり、広間の中央に祭壇が置かれていた。
石像はそれぞれ、槍、両手剣、首飾り、片手剣と盾、短剣、竪琴、籠手、斧、靴、弓を携えていた。
「11種の武具…何か引っかかるな…何だろう?」
…頭がうまく回らない。
お腹が減っていて集中できない。
とりあえず、中央の祭壇に近づいてみる。
すると、祭壇に何がが置かれていることに気づいた。
「これは…角笛?」
手に取ってみると特段凝った装飾がされていないものの何故か惹かれる。
…どこか安心感を覚える。
「…吹いてみよう」
なぜそんなことを思ったのか分からない。
あまりの空腹に頭がおかしくなったのか、初めて見る角笛への興味なのか、<笛吹き>の本能がそうさせるのか。
息を吸い込み思いっきり角笛を吹く。
ぶぉーーーと派手な音を響かせる。
「…す、すげぇ!角笛ってこんな音でるんだ!ちょっと、もう1回!」
再び息を吸い込み角笛を吹こうとしたとき、持っている角笛が光だした。
「えっ…な、なに!?」
激しい光が僕を包む。




