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第一章  平凡な公主さま  ーーー別宮の侍女

あのお方に初めてお会いしたのは 

わたくしが侍女見習いとして王宮に上がって間もない頃のことでした。

まだ童着をお召になっている小さい公主さまでした。

美しい妃さまたちや麗しい公子さま公主さまが多い中

あの方だけはどうしたものか いたって平凡な平凡な公主さまでした。

王后さまのお子でしたが三番目の公主さまで平凡で

程なくして待望の嫡公子さまが誕生となれば自然と置かれるお立場が

決まってしまうものです。

広い王后宮の片隅のお部屋でお付きの者 数人とひっそりとお過ごしのご様子でした。

公主さまにお生まれになっても周りの者達に気にもとめられないなんて

憐れなお方 と同情の感を持ったものです。

そしてそんな不運な公主さまのことは

日々の慌ただしさに紛れ すっかり忘れておりました。

 

それからどれくらいの時が経ちましたでしょうか。

わたくしも無事に侍女となり

蓮妃という方の宮付きとなりました。

その日は珍しく王宮の西はずれまで使いで行っておりました。

帰り道を急いでおりますと どこからともなく

楽しげな笑い声が聞こえてまいりました。

王宮で毒のない笑い声など聞いたことがないので

同伴の侍女と顔を見合わせて怪訝に思ったものです。

王宮の端の こんな辺鄙なところで。

小さな門がありました。

笑い声はこちらから聞こえております。

近づくにつれて楽しげな空気すら感じられました。

怖いのもの見たさもあり 無作法ながら門から覗き込んで 

わたくしたちが見たものは

花畑でした。

侍女たちが花を摘みながら歌を歌い笑っておりました。

その花畑で誰よりも大輪の笑みを咲かせているのはあの平凡な公主さまでした。

初めてお会いした時よりもずっと大きくなられ

御髪も公主らしく結い上げられておりました。

萌葱色のお召し物がとてもお似合いでした。

でもやはり平凡な公主さまでした。

なのになぜか目が離せません。

公主様はこちらに気がつかれ一瞬目を見張られましたが

すぐに破顔されて お声をかけてくださいました。


「花陽舎へ ようこそ」


鈴を振ったような清らかなお声でした。

十を過ぎたお子様たちは 各々お部屋をいただく慣わしになっております。

平凡な公主さま 瑤公主も数年前にご自身のお部屋をいただいたようです。

相変わらずひっそりと

でも楽しげに過ごされているようです。

宮中の行事にはまだお出ましなっていらっしゃらなかったので

お会いする機会はそれからもございませんでしたが

わたくしにとって萌葱色の瑤公主はとても気になるお方になっておりました。


それから程なくして

年頃になりました公主さまたちのお披露目が行われることになりました。

今回は六人の公主さまたちのお披露目で

この中には瑤公主も含まれているようです。

公主さまたちが父王の御前で歌楽をご披露される

それはそれは華やかな宴だそうです。

お付きの侍女たちも主の晴れ舞台とあり大張り切りで華やいでいます。

王后からそれぞれの公主にお支度のお品物も下賜され

毎日たくさんのお品物があちらこちらのお部屋に運ばれて行っております。

宮中のお針子は新しいお召し物を作るのにてんてこ舞いしているようです。

お子がすでに成人した公子のみの わたくしの主 連妃は

華やかで楽しそうね と羨ましげに おっしゃっています。


瑤公主は どうなさっているのでしょうか。

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