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座敷童  作者: 二階堂
10/14

隣人能見 その6

胸の高鳴りが抑えられない。あの能見が死んだのだ。人の不幸は蜜の味という言葉をこれまでなんども体感してきたが、これほどの甘美さは今までなかった、これからもこれを超える甘さはないんじゃないか?あいつは死んだほうがいい人間だった。心得顔で他人の私情に潜り込み、自分だけが良ければそれでいいと思っていやがる。能見の腐った性格のせいで困った人は俺だけじゃないはずだ、俺の対称に住んでた能見の隣の田中ってやつも思い出せば能見とよくしゃべっていたが、あいつも迷惑していたに違いない。あいつは死ぬしかなかった。罪深かった能見はさぞかし呻吟して死んだだろう。堰を切ったように感情が流れ出てきた。あぁ、なんていい気分なんだ、今ならなにもかも信じられる。これは必要な報いであって、俺みたいなまっとうな人間が嫌な思いをするのはおかしいことだったんだ。あいつの憎らしい笑顔を今はかわいく思える。

自分が良ければ他人がいくら迷惑しようが構わない、その精神性が腐っていた。あぁ楽しいぞこれは!こうやってむかつくやつが死ぬことがこんなに心躍るとは思わなかった!頭の中で幾度となく殺したあれが今ようやく現実に!........まてよ、


「死んでもいい人間だった」そんなことを俺は考えたのか?俺はそんなことを考えたことは一度もないはずだ!俺は能見に死んでほしいと思っていた。でも俺はいままでもそう思ってきたじゃないか。そう思うだけ、思うだけなら何をやっても許されるからそんな考えたくないことを願えたっていうのに!今の俺はどうだ..おそらく俺が水に頼んだから能見は死んだ、つまり俺があいつを殺したということに変わりはないはず。なのに興奮しているっていうのか?それとも恨んでいる人を殺すってのはこんなものなのか。それとも物理的なことは何もしてないから、どこか現実離れしているようで実感がないだけか。きっとそうなのだろう。


Tは興奮と葛藤に身をゆだねてる間も口角を上げないようにと躍起になっていた。もしこの努力をTが怠けていたならば、口角は蒼穹に到達し天蓋を破っただろう。それほどにTの笑みは酷いものだった。


「水!能見の件はお前が..」気持ちを隠すのを忘れて、声を高くして聞くTに目をまったく合わせず、「うん」とだけ答えた。少女はいまにも涙が出そうな顔をしていた。


あぁ水、なんて素晴らしいんだ。殺すまでやる必要はなかったと思うけど、もだ!俺はあなたに敬服する。いままでちっぽけな自尊心であなたの上に立とうとしていたことを今は深く反省している。なんて過ちだ。俺にとっての神はあなたなんだ。あなたに俺を傀儡にされるのが怖かったんだ。あなたの見た目は子供だが、俺はあなたに内在する強大な力に気づいていた、だからこそ傀儡にされるかもだなんて懸念を少女に対して抱いたんだ。でもそんな考えは間違いでしかなかったとようやく気付いた。あなたは俺を傀儡にするべきであって、俺はあなたに操られるべきだったんだ。涙が出そうな気持だ!水!あなたなら心の底から信用できる!


『座敷童は幸運を運ぶ』これは嘘じゃなかった!


ここで額ずきたい、頭をさげて一生の誓いをここに示したい。けどここでそれをしたら間違いなく水との関係は崩れる。水がいつか居なくなると言ってたことを考えると、水のしたことに満足するというのがトリガーである可能性は十二分にある。


「殺すことまでしなくてよかったのに。でも俺のためにしてくれたんだろう?ありがとう。少し悲しいけどすっきりしたよ。」返事が来ない。よく見ると水の顔が真っ青になって今にも倒れそうだ。能力を使ったことで疲れたんだろう。Tは水をベッドに運ぼうとしたが、水はそれを振り払いベッドに入った。


水に煙たがられて非常にショックだったが、感情の高低が激しかったせいか眠くなってきていた。明日は休日だしゆっくり寝よう、と考え風呂も入らず布団に入りいつもより一時間ほど早い眠りについた。

  

水は横にはなっているが寝付けてはいないようだ。俺はもう寝よう。

Tは瞼を閉じ爛々と紫色の闇に身を投じた。

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