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西通り

 グラゼさんの工房を目指し西通りに来たもののそれらしき建物は見つからない。

 グラゼさんは西通りの奴に聞けば分かるって言ってたけど、西通りってそもそもちょっと怖い方々が多い地域で見渡す限り恐そうな兄ちゃんが沢山いる。

 ほら!あそこからこっち睨んでいる方なんて、傷の入った坊主頭でグラサン掛けてるよ?話し掛けたら指の1本持っていかれるんじゃない!?

 

 俺はさっきからこんな感じで今いる場所から一歩も動けずキョロキョロと周りを見渡していた。グ、グラゼさん、助けて~。

 

 不意に俺の肩に衝撃が走る。

 やばいやばいやばい!遂に地獄に落とそうとする奴が来たよ!俺なんかした?やっぱりヲブラス持ってるから恨み買っちゃった!?どうするよ?腕持っていかれたよ!?

 「どうした兄ちゃん?そんな周りに注意を向けて。待ち人かい?」

 あれ?肩痛くない?なんとなく肩を動かしてみる。うん、動く。よかったぁ、肩はあるよぉ。ただ手を乗せられただけみたいだ。俺どんだけ緊張してるの?腕もげた気持ちになる程の錯覚って相当よ?

 「おい、人の話聞いてんのか?」

 「サー、イェッサー!僕は!グラゼさんに呼ばれて来ました!」

 ドスの効いた低い声で聞かれ俺は即答した。

 最初は俺の反応に困惑した顔を見せた兄ちゃんだったが、グラゼという言葉を聞いて血の気が引いていくようだった。

 「お、お前、グラゼさんに呼ばれたってのは本当か?」

 なんだなんだ、血の気が引いたと思ったら急に慌て始めたぞ?グラゼさんって何者?

 「さっき、ギルド会館で知り合いまして、そしたら来てくれたら助かると言われたので」

 

 ザワッ…!!

 

 な、なんか、周りに居た恐そうな方々が一斉にこっち見てきたんだけど!?

 

 (あのグラゼさんが呼んだだって)

 (しかも、助かると言ったらしいな)

 (あいつ何者だ?)(グラゼさんが助けられる程の男だと)(丁重に案内しなくては!)

 

 怖い顔の兄ちゃん達が怖い顔してヒソヒソ話し合ってるけど、よく聞こえないなぁ。

 話し合いが終わったのか、1人がこちらに向かって歩いて来た。って、え!?近づいてくるのさっき睨んできたグラサンの兄ちゃん!?

 兄ちゃんは俺の目の前まで来ると目線が下の俺に目を合わせてくる。っていうかこの人でかっ!たとえ、他の人に比べて身長が150でちょっと、少しだけ周りより小さいからといってこの人はでかすぎる。

 そういえば、さっき睨んできていた時も目線同じだったな。…座っていた筈なのに。なのに。

 

 グラサンの兄ちゃんは俺を見下ろした形で俺の体をくまなく見てきた。

 そして

 「本当にグラゼに言われて来たんだな?」

 グラサンは俺と目を合わせたまま問いかけてきた。俺はグラサンの高圧的な態度に内心かなりイライラしていた。

 …っち、こんな背が高いのにグラサンなんて格好良すぎだろ。その身長10センチ俺に分けてくれよ。いや、5センチでいい!なんなら、1センチでも!!

 話が逸れた。まあ、そんな気持ちが表に出てしまった。具体的に言うと発言に…。

 「ああ、そうだぜ。だから、グラゼさんの所まで案内しろよ、グラサン」

 グラサンのこめかみの辺りがピクッと動いたのを見た時、体中の毛穴からブワーッと冷や汗が出た感じがした。やばい、終わった。死ぬしかないようだ。

 指何本で許してもらえるか考えていると、グラサンはふっと、不敵に笑った。え、カッコイイ。なにこのイケメン?歴戦の猛者感がバンバンでてるんだけど!絶対強いじゃん!うちに欲しいよ。こんな人がパーティーに居たら頼りになるよ!

 

 「いいね、気に入った。来い、案内してやる」

 そう言うとグラサンは俺に背を向け歩き始めた。周りの兄ちゃん達はグラサンの動きに心底驚いた顔をしていた。え?なに?俺の事ボコろうとしてたの?あっぶなー。選択間違えてたら終わってたじゃん!これから言動には気を付けよっと。ナメられたら殺られちゃう。

 

 色々考えているとちょっと前の方でグラサンが少し苛立ちながらこっちを見ていた。ど、どうしたんだろう?もう本性バレた?

 「置いていくぞ、早くしろ」

 なるほど、俺ってばさっきから全く動いてないもんね!すると、周りに居た兄ちゃん達がユラリと立ち上がり始めた。

 

 やばいやばいやばいやばい!

 

 グラサンを怒らせちゃったから周りが俺に攻撃を始める気だ!ナメられないようにかっこよく受け答えしないと!

 「オウ、んんっ。おう!」

 緊張で少し声が裏返りそうなのを抑え、俺はグラサンに足早に追いついた。

 グラサンは俺が距離を詰めると、裏返った事は気にする事もなくまた歩き始めた。

 た、助かった~。次からは気を付けよう。うん。口は災いの元ってね!

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