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魔物の暴走

 森へ入り、遺跡へ向かった。

 遺跡付近辺りで人の気配を察知。

 おそらくカイルたちだろう。


「く、くるなっ!」


 そちらへ向かうとカイルの声が聞こえた。

 カイル達は魔物に襲われているようだ。


「カイルっ!」


 カイルのところへたどり着くと、カイルが村の子供たちを庇っていた。

 その手には枝。


 枝を剣代わりにしていたのだろう。


「アルヴァっ!? なんでここに来た! 早く逃げろッ!」

「俺は助けに来たんだ!」

「何を言って……」


 俺はカイル達が対峙している熊型の魔物に一気に近づき、懐に入って顎に向けてアッパーをかます。

 俺の攻撃力ならばこれで倒せるはず。


 ドサ…。

 うん、倒せたな。


「アルヴァ…お前、強かったんだな」

「……隠れて訓練してたんだよ」


 隠れて訓練した程度で倒せるような魔物じゃないけどな。


「アルヴァ君ありがとー!」

「アルヴァ! お前すげぇな!」

「そんなに強かったんだね!」


 と、カイルの後ろに隠れていた村の子供たち。


 上から、ストレートで綺麗な白い髪の女の子がリィナ。

 短髪で赤髪の、割とイケメンな男の子がレンジ。

 レンジの姉で赤い髪をツインテールにしているライラ。

 皆カイル経由で知り合った子供たちだ。


「ガイアさんとジーナさんは?」

「遺跡だ。俺達は二人の後を追ってきたんだ」


 馬鹿なのか?


「そうか、お前らは村に帰れ」

「アルヴァは?」

「遺跡に行ってくる」

「そんなの危ないよ!」

「俺達も行く!」


 と、リィナとレンジ。


「お前らは村に戻って父さん達を連れてきてくれ」


 俺は二人の言葉を無視して言葉を続ける。


「俺はアルヴァについていくからな!」


 うるさいレンジだな。


「カイル、こいつらを頼むぞ」

「……ああ、俺達が行っても足手まといになりそうだしな。行くぞレンジ!」

「俺は付いていくんだーーーーーー!」


 暴れるレンジを引きずって行くカイル。

 ライラはその後をついていった。


「リィナ?」


 その場に留まるリィナに声を掛ける。


「気をつけてね?」

「あー、うん、気を付けるよ。だから早く行け」

「うん」


 リィナは頷くとカイル達に追いつくため走って行った。


「さて」


 サーシャ、冒険者二人の場所は?


【遺跡内部ですね。魔物に囲まれてます】


 ふむ、急いだ方がいいな。

 父の知り合いに死なれるのは困る。


【あと、遺跡周辺に魔物が溢れかえってます】


 めんどくさいな。

 武器があれば楽なんだが、父の訓練で使ってた木剣は家に置いてきちゃったしなぁ。


【マスターには拳があるじゃないですか】


 拳でも良いけど、多数相手には剣の方が楽なんだよな。

 まあ、今回は拳で頑張るしかないか。



◇◆◇◆◇◆◇



 入り口について粗方掃除をした後、遺跡に入った。

 

【ダンジョン化してますね】


 ああ、魔物の暴走もダンジョン化が関係してそうだな。


【あ、冒険者二人が危ないです! 危険です! デンジャーです!】


 急ぎますか。



 片っ端から魔物を片付けながら二人のいる所までダッシュ。

 着いたのはでっかい扉の前。


「ボス部屋っぽいな」

【ぽいですね】

「二人はこの中なのか?」

【ええ、何かと戦ってますね。負けそうですが…】


 ふむ…。


「行きますか」


 扉に手をかけ押し開く。


 中ではガキン! ガキン! と鉄同士がぶつかり合う音が響いている。


『また来訪者か』

「な!? アルヴァッ!?」

「なんでここにっ!?」


 デッカくて黒い鎧と鍔迫り合いになっているガイアと、後方支援してるジーナが驚きの表情でこちらを見た。


 どこが危険だよ。

 まだ余裕ありそうだぞ?


【いえ、エルフの女性は魔力が枯渇寸前で、人族の男性は体力が限界近いです】

「ガハッ!?」

【ね?】


 ね? じゃねーよ。

 ガイアが吹っ飛んで来たじゃねーか。


「きゃああっ!」


 あ、ジーナも吹っ飛んで来た。


「に……げろ…」


 ガイアが声を振り絞り、俺に言った。


「これ借りるぞ」


 倒れたガイアと共に転がる大剣を拾う。


「やめ……お前じゃ……かてない」


 片言やめーや。

 聞き取りずらい。


【そんな殺生な】


『次は貴様が相手か?』

「そうなるな」

『ふむ…』


 黒鎧は顎に手をあて俺を見た後、手に持つ大斧を振り下ろしてきた。


「おおう!?」


 いきなりの事でびっくりしたが、右に避ける。

 俺がいた場所は大斧でタイルが砕かれていた。


「いきなりはびびるだろうが」


 大剣を黒鎧の横腹に叩きつける。

 だが、ガキンッ! と弾かれてしまった。


 さすがに大剣は重いな。

 身体に合った武器が欲しいぜ。


「おっと」


 横からの薙ぎ払いに対し、俺は大剣の腹でガードする。

 間髪入れずに大剣を蹴り上げ大斧を打ち上げる。


『ぬっ!』


 体勢崩すまでは行かなかったが、驚かせる事には成功した。

 

『アースブレイカアアアアアアアアッ!!』


 黒鎧は打ち上げられた大斧を振り下ろしながらそう言う。

 大斧が淡く光っていたので戦技かなんかだろう。

 

 振り下ろされた所を中心に地面が割れ、衝撃波が瓦礫と共に俺を襲う。


「ぬわっ!?」


 俺は範囲外へ緊急回避し、瓦礫を大剣で弾く。

 黒鎧は技を使ってクールタイムに入ったのか動かない。

 デッカイチャンスですな。


「サーシャ、弱点はどこだ?」

【胸にあるクリスタルです。ゴーレムと一緒ですね】

「オーケー」


 動かない黒鎧に近づきクリスタルを破壊する。

 すると、黒鎧の目の部分から光が消えた。


 あっけないな。

 こんな奴に手こずってたのかよ。


【大技を使わせないように戦っていたのでは?】


 まあ、あの技食らったらアウトだし、使わせないのが普通なのか、な?


「そんな、私のゴーレムがこんな子供に負けるなんて…!」


 倒れた二人をどう運ぶか考えてると、部屋の奥から声が聞こえた。

 そちらに目をやると白衣を着た黒髪黒目で、日本人の様な顔立ちをした男がいた。

 と言うか見た感じ日本人だ。


「お前っ! 一体どんなチートを使った!?」


 あ、こいつ日本人だ。

 チートなんて言葉知ってるのは地球人の可能性が大きいし、転生したと考えていいのかな?


「ちーと?」

「転生者じゃないのか。クソッ!」


 男は悪態をつくと、光に包まれて消えた。

 転移したと見ていいだろう。


【遺跡のダンジョン化は転生者絡みですね】


 だな。

 あいつから仕事が来そうだ。

 めんどくせぇ。


「さてと…」


 この二人どうするかなぁ。

 一人ならどうにか運べるけど二人だとキツい。


 そう考えてると、入り口だった扉がバンッ! と開かれた。


「アルヴァ!? 無事か!?」


 入って来たのは父だった。

 父は開けて俺を確認すると真っ先に俺の所へやって来た。


「うん、俺は大丈夫。でも二人が気絶しちゃった」

「ああ、これは…お前が倒したの…か?」


 父は俺の言葉に頷いた後、俺の後ろで機能停止している黒鎧を見て俺に聞く。


「あ、うん。胸元にあるクリスタル壊したらなんか倒せた」

「そ、そうか」


 父は何か考えているのか、眉間にシワを寄せる。


「まあいい。こう言う事はもう二度とするなよ? 母さんも心配してたぞ」

「うん、ごめんなさい」

「父さんもお前くらいの頃はやんちゃしてたから強く言えないが、母さんの説教は免れないと思え」

「えぇー…」

「当たり前だろう。帰るぞ」

「…はーい」


 あのおっとり全開の母が怒るのだろうか?


【おっとりな人は怒ると怖いって聞きますよ】


 うへぇ、マジか……。



 家に帰ると、母が玄関前で待っていた。

 その顔はとても良い笑顔を浮かべていた。


「あー…、あれは怒ってるな」


 俺の横を歩く父が呟く。

 えぇ…。


「ただいま、ほどほどに……な?」

「ええ…」


 父は母の横を通り抜け家に入って行った。

 待ってお父上!


「アルヴァ?」

「た、ただいま母さん」

「どこに行っていたの?」

「い、遺跡です」

「そう…。心配したのよ?」

「ごめんなさい」

「なんで命を無駄にするような事をしたの?」

「ごめんなさい」

「私は謝ってほしいんじゃないの」

「…はい」

「ホントに心配したんだからね」


 母は屈み俺を抱きしめる。

 その声は震えているのがわかった。


「心配させて、ごめんなさい」


 なんか久々に人の暖かみを感じた。




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