冒険者がやって来た
「ちゃんと真っ直ぐ振れっ!」
「「はいっ!」」
魔法を使うようになって三年が経った。
俺は兄と一緒に父であるライゼン=ブラッドフィールドに剣の使い方を教え込まれていた。
教えを乞うほど俺はよわっちくはないが、この世界では、剣を習い始めて間もない。そんな剣を握ったのも初めてな奴が、いきなり父を倒したら確実にめんどくさいことになる。
それに父を倒して家を出るにはまだ幼すぎるため、今はおとなしくしておこう。
「そこまで、今日はこれで終わりにしよう」
「「ありがとうございましたっ!」」
素振りしかしてないが、まあ最初はそんなもんか。
「父さん! 今日冒険者がこの町に来るって本当!?」
終わってすぐ、兄が父に駆け寄って聞く。
そう言えば、昨日町の友達らと遊んでた時そんなこと聞いたな。
「ああ、町の近くにある遺跡探索の拠点にするらしいぞ」
「会いに行っても平気かな?」
「会いに行かなくてもうちに挨拶に来ると言っていたから、その時に会えるだろ」
「わかった!」
うちに来るのか。
まあ、一応領主だし当たり前か。
俺が生まれたこの家、ブラッドフィールド家はこの町を領地として与えられている。
割と広い町だ。
この町には冒険者ギルドが無いので、今回のように冒険者が来ると子供らははしゃぎ散らすという。
まあ、町から出たことないガキどもにとって、外を知ってる冒険者の話しはわくわくがいっぱいだろうしな。
しばらくして、冒険者と思われる男女二人が来た。
一人は人間だが、もう一人はエルフっぽい。
この世界ではエルフと人間は仲がいいのか?
【場所によりますね。たまたまこの国がエルフを嫌ってないだけです】
なるほど。
「よう! ライゼン!」
「おひさー」
「冒険者が来ると聞いてまさかと思ったが、やっぱりお前らかガイア! ジーナ!」
どうやら、父とこの二人は知り合いのようだ。
「この子達がライゼンのおちびちゃんたち?」
「ああ、二人ともいい子だぜ?」
とりあえず挨拶しておこうか。
「はじめして、アルヴァと言います!」
「は、はじめまして! カイルと言います!」
兄であるカイルも俺に習って挨拶をした。
何を緊張してやがるんだ? この兄は。
「私はジーナって言うのー。よろしくねー」
「俺はガイアだ。よろしくな!」
綺麗な金髪を持つエルフっぽいジーナと、それなりにイケメンな赤い髪のガイア。
よし、覚えた。
「二人は部屋に戻っていてくれ、俺はこの二人と大事な話がある」
「「はーい!」」
俺と兄は返事をして、客間を後にする。
サーシャ、頼んだ。
【盗み聞きですか? 趣味が悪いですね】
いつものことだろ?
【ですね。繋ぎます】
サーシャの言葉の後、ザ……ザ…とノイズが聞こえ始め、客間の音声が頭の中に流れ始めた。
『―――んで、今更遺跡なんかを?』
『他の遺跡で魔物が暴走した事があって、その遺跡近くの町とかに多大な被害が出たんだ』
『もしかしたら、ここの遺跡でもその暴走が起こるかもしれないから調査に来たってわけなのー』
『原因はなんだったんだ?』
『原因は不明。その原因も含めて調査中なんだ』
『だから一応警戒はしといてー』
『了解だ』
雰囲気的に重要な話はこれで終わりかな?
【切断します】
サーシャの言葉の後、プツンッと切れた音が聞こえた。
遺跡で魔物が暴走かぁ。
テンプレだと伝説の魔物が復活するとかそんな感じだな。
【被害が出ないといいですね】
まず復活しないで欲しいよ。
さて、裏庭行くか。
◇◆◇◆◇◆◇
いつも通り魔法やら剣術やらの試し撃ちをしていると、こちらに歩いてくる気配を探知した。
放とうとしていた魔法を分散させる。
気配は庭の方からやってきた。
「あれ? アルヴァ君?」
来たのはジーナだった。
俺がいることを確認すると、不思議そうに当たりを見回す。
「どうしました?」
「こっちで魔力を感じたから来たんだけどー。もしかしてアルヴァ君?」
さすが魔法に長けた種族。
今日はやめとけばよかったな。
「あの……内緒にしてくれます?」
白を切ってもいいが、めんどくさいから教えてしまおう。
「内緒にしといてあげるよー」
「わかった。見ててくださいね‘ウォーターボール’」
俺は手のひらを上にし、そこに水の玉を出現させる。
「すごい! すごいよアルヴァ君ー!」
「これくらいならジーナさんでも出来ますよね?」
「出来るけど、アルヴァ君はまだ六歳だよねー?」
「はい」
「その歳で安定した魔法を使えるなんてすごいんだよー」
「そうなんですか?」
「うん! 内緒にしておくなんてもったいないよー!」
「いえ、父を驚かせたいので、まだ内緒にしておいてください」
「サプライズだね!」
「ええ、サプライズです」
冒険者として家を出るとき、親と戦うなんてテンプレだしな。
その時まで黙っておくつもりだ。
「いつもここで練習してるの?」
「はい、ここなら人来ませんしね」
「なるほどー。あ、そろそろ行く時間だー。アルヴァ君ばいばーい!」
ジーナは俺に手を振って戻っていった。
なんだったんだ、一体……。
【魔力を感じたから何かの異変だと思ったのでは?】
あーね。
さて再開しようか。
ジーナが俺のところに来て約二時間。
それは突然のことだった。
ドーンッ! とデカイ爆発音が響いたのだ。
俺は慌てて家に戻ると、玄関で父と会った。
「何があったんですか?」
「わからん! それよりカイルを見なかったか?」
「いえ」
「そうか…。アイツの事だから危険なところに行ってないと思うが……。俺は爆発音の調査に向かう。アルは家にいてくれ!」
「わかりました」
父は俺に告げたあと、走って町の方へ走っていった。
遺跡だな。
【遺跡ですね】
俺とサーシャの思考が被る。
サーシャ、兄の位置を検索。
【……見つけました。遺跡のある森です。町の子供たち数人と一緒のようです】
だと思った。
めんどくさいけど行きますか。
【了解です】
◇◆◇◆◇◆◇
遺跡方向にある、町の出入り口に向かうと、父達と数人の兵士が魔物と戦っていた。
「父さん!」
「アルヴァ!? 家にいろと言っただろ!」
「カイルは森にいるみたいなんだ!」
「森にっ!?」
「ライゼンさん!」
「ちっ…!」
父は兵士の声で襲い掛かってきた魔物に気づき、一刀両断。
「クソッ! これじゃ森に行けん…!」
「俺が行くっ!」
俺はその場から駆け出す。
「ダメだアル!」
父の制止の声が聞こえた。
「おいアルヴァ!」
【マスター、後ろから一匹来てます】
オーケー!
俺は急ブレーキをかけ、振り向く。
振り向きと同時に蹴りを放つと、丁度よく狼型の魔物が飛び込んできた。
俺の蹴りは魔物の頭にクリーンヒット。
吹き飛ばすことに成功した。
「アルヴァ……」
唖然とした表情で父がこちらを見ているが、今は森に急ごう。




