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41話 其々のマーキング方法




約一年振りに袖を通したメイド服は何だか窮屈に感じる。

「太ったのかな~」

あちこち摘まんでは紙に何かを書いている舞がニヤリと笑って胸を掴む。

「女性らしい身体つきになっただけよ?窮屈なのは胸だけで、ウエストは細くなってるわ」

「あぅ・・・」

最近皆から苛められていると言うか、遊ばれていると言うか。

「それと、見える所にマーキングしないでって、彼氏に言っておいてね」

舞の手が髪の毛で隠したうなじを触る。

「・・・言ってるんだよ」

言っても隙を狙ってキスマークを付けられるのだからしょうがない。

「そう。分かったわ」

舞の顔が楽しそうに笑っていた。(何か怖い気もするけど?)



『かふぇ』の準備は順調に進み、三日後には開店を迎える事になった。

日本でのメイドかふぇとは大幅に違い、女性専用で要予約制である。

一日のお客様は三名までで、メイドは指名制となっている。



のんびりと寛いで頂く為に庭に点在していた東屋を改装し、ゆったりとしたソファとふわふわのラグを足元に置き、靴を脱いで滞在して頂く事になっている。

東屋の周りは草花で囲み、それぞれ違う雰囲気で演出している。



全体が黄緑色で統一された東屋は森林の寛ぎ。

東屋を囲むのはミントやカモミール等のハーブが主で、所々にたんぽぽやシロツメクサ等の背の低い植物が多く配されている。


青い色で統一された東屋は海の寛ぎ。

ヤシの木やモンステラ、ハイビスカスにプルメリア等どちらかといえばハワイをイメージさせる雰囲気が有る。


そしてピンク色で統一された東屋は花の寛ぎ。

東屋の直ぐ脇に置かれた大木は桜の木で、年中桃色の花を咲かせている。

それから東屋を囲む様に植えられたのはしゃくやくの花で、それは姉ちゃんが日本から持って来た球根を植えた物だった。(まだ咲いてないけどね)




庭の散歩をしていたら、海の東屋に美千瑠が居るのが見えた。

覗いて見ると珍しい事に美千瑠は眠っており、その手には小さな花(?)が乗っている。

覗いて見て驚いたのは、それは花では無く四葉のクローバーで色がピンク色だった。

(おー!リアル桃色クローバー!めっちゃ嬉しい!)



美千瑠の足元にそっと腰を下ろして庭を眺める。

プルメリアの白い花がさわさわと風に揺れている。

(とうとうハワイには行けず仕舞いだったな)

ハワイより随分遠い所に来てしまったけど、多分ハワイ以上に居心地の良い国になるんだろうと思っている。


沢山の人と知り合って、沢山の事を学んで、そして沢山笑いたいと心から思うんだ。


この世界に来てもう一年。

嫌、まだ一年しか経って居ないと言うべきか。


色々な事を思い出してぼーっとしていたら、誰かが呼ぶ声で現実に引き戻された。

それは寝むっていた美千瑠も同じで、足元に座っていた私を見つけて少し笑った。


「美桜―、お、美千瑠も居た!」

そう言ってやって来たのは綾香だった。

「舞がね、今日は此処に泊まりなさい。だって」

「良いけど。何で急に?」

「んー、少しね、怒ってるみたい」

「はい?」


綾香が指差すのは私のうなじ、美千瑠の鎖骨、そして自分の耳の後ろ、である。

それぞれを見ると、其処には似た様な赤い痣が浮いている。

「げっ!?マーキング?」

「美千瑠はまだ洋服で隠れる場所だから良いらしいんだけど、私と美桜のは見える場所だから、消えるまで駄犬の元へ返さないわよっ!だそうだ」

「駄犬と来たか」

「舞には叶わないよ」

「私も今日は泊まる」

「偶には、良いかもね!」

「厨房のライアンにふわふわのオムレツ頼んじゃおうよ!」

「みたらし団子が食べたい」


三者三様にしゃべりながら、家へと向かって帰って行った。




その日の夜の女子会にて。

ミ「姉ちゃんが紫色のネックレスをアルから貰ったのは知ってたけど、皆も持ってたなんて知らなかったよ」

マ「『マリアの涙』ね」

ミ「そんな名前が付いてる事も知らなかったけど、皆、私より先に彼氏作るなんてずるいし」

ア「後も先も無いのよ、こういう事はね」

ミ「なーんか納得できないし。私の方が先に来て大変だったのにさぁー」

ル「美桜も貰った」

ミ「・・・うん」


舞に作って貰ったパジャマの首元から鎖を引き上げると、半透明な紫色の涙の形をしたネックレスが顔を出した。

それに倣うように皆もネックレスを手に取り見比べている。

大体が1センチ程の長さで色も形も似ている。


ミ「あ、留め具が違う」

三人共俯き加減でネックレスを見ているからうなじが丸見えで、ネックレスの留め具が丁度見えている。

ミ「舞はミシンで、綾香は二本の剣が交差してる形で、美千瑠はネコちゃんだよ」

ル「美桜は・・・翼だ。二枚の翼」

皆がそれぞれネックレスを手に暫く黙りこんでしまった。


マ「翼と言えば、最近城内は魔女のミミの噂で持ちきりよ」

ミ「魔女のミミ?」

ア「知ってる!黒い服に黒い翼の少女が空を舞っていたって話でしょ」

マ「それを見たのがどうやら先日の夜会の時なのよね~」

ミ「夜会・・・あっ!」

ア「やっぱり美桜だったの?」

マ「萌は私じゃ無いって断言してたからね」

ル「猫を抱いてた」

ミ「美千瑠?見てたんなら教えてよー」

マ「そのお蔭で最近消灯時間が過ぎても明かりを付けず、空を見上げる人達が増えたんだって。お酒を飲んで騒ぐ人が減って、夜間の苦情が無くなったらしいわよ」

ア「そうなんだよ。騎士隊も喧嘩とかが減ったお蔭で夜の巡回が大分楽になったもん」

ミ「え・・・偶には飛べって、事?」

マ・ア「お願いします」

ミ「えーっ!」



後日談だが、この件に関しては姉ちゃんと相談の上、収穫祭の時と、春の祝い事の時の年二回だけ飛ぶ事に決まった。

「魔女のミミ」は今や全国的に有名になっていて、ミミを見たら幸せになれるとまで言われるようになっていた。

これは偶々美桜が飛んだ所を見たお城の侍女が、憧れていた騎士に思いを告げて幸せになった事が起因している。(なんてこったい)




ミ「所でさ、舞はそのネックレス、誰に貰ったの?」

ア「聞いても教えてくれないんだよ」

ル「想像は付く」

マ「うふふふ」


のらりくらりと躱しながら、ぽろりと出た名前に皆が驚いた。

ミ「マジですかぁー」

ア「以外過ぎる」

ル「やっぱり」

マ「うふふふふ」


女子会は尚も続く。









舞、綾香、美千瑠の恋愛模様も載せられたら良いな~ なんて思ってます。


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