表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/44

40話 愛しい人




どれほどこの時を待ち望んだ事だろう。

自分の腕の中にはミオが居る。


家出をしたと聞いて落胆し、攫われたと知って憎悪で体が震えた。

しかし、その原因が自分のした事だと知った時は、やり場の無い怒りに落胆した。

それでも気を持ち直し、此方に戻った時にはきちんと釈明し謝ろうと決めていたが、実際会ってみるとまるで他人にする挨拶をされて胸が痛んだ。


「あなたの事だけ忘れているの」


アプリの所為だと知らされても納得は行かなかったが、あの無邪気な笑顔を向けられると何も言えなかった。


思い出して欲しいと願いながら、そのまま忘れて欲しいと願う。


今までの事を無かった事にして始めるのは自分自身無理がある。

ならば今までとは違う接し方をするのが一番妥当だと思い、アシエル国へ足を運ぶ度にミオに会う事を決めたのだが。


会う度にこの腕に抱き締めたくなる。



「ミオ、俺の側にいてくれ」

今まで何も言わずに黙っていた腕の中の女性が、顎を上に向け顔を上げる。

「・・・どうして?」

そう問う黒い瞳には涙が浮かんでいるのか、きらきらと輝いて見える。

「思い出したのだろう?」

大きな瞳が更に大きく開いた。

「・・・なんで、そう思うの?」

顎が下がり、顔が少しずつ前を向く。

「・・・デューと、そう呼ぶのはお前だけだ」

ミオの片手が口元に伸びる。

「・・・・・さい・・・ごめんなさい・・・」

小さな肩が震え出し、俯くうなじが月の光に白く浮かび上がる。

そのうなじに唇を寄せ、抱きしめる腕に力がこもる。

「謝るな。お前は何も悪くない。俺の方が謝らねばならない。済まなかった」

腕の中で嫌々をするように頭を左右に揺らす。

「俺を許してくれるか?」

頭を左右に揺らすのを止めた後、腕の中から抜け出し、正面を向いてこう言った。


「いっぱい謝って。 いっぱい謝って、 それから、  好きって言って!」


ぽろぽろと大粒の涙を流しながら見上げる顔は、憎らしい程愛らしかった。




「すまなかった」


「上から目線で謝られても困るんだけど」


「申し訳無かった」


「会社じゃ無いし」


「・・・悪かった」


「本当に謝る気があるの?」


「こうやって謝っているでは無いか」


「あのね、謝る時は心を込めてごめんなさいって言うの!」


「ごめんなさい」


「・・・ぷっ・・・デューのごめんなさい、変っ!?」


「・・・ミオ、遊んでいるのはお前では無いか?」


「ご、ごめん、だ、だめ、ツボった・・・」


クスクスと笑い続けるミオを抱き上げ、ベッドの上にそっと降ろす。

それでも笑い続けるミオを抱きしめれば、漸く状況を把握したのか笑い声が引き攣り始めた。


「えっ、デュー?」

今まで笑っていたからか、頬は染まり目尻には涙が残っている。

その涙を指で拭えば透明な線となり、瞬く間に消えて無くなる。

唇を寄せれば僅かに身じろぎ、瞬きを忘れた瞳は開かれたままだ。


その瞳が閉じられる様に瞼に口づけを落とす。

目尻に

頬に

首筋に

「・・・あっ、やっ」

堪り兼ねた様に色を含んだ声が発せられる。

「・・・嫌、か」

隙間の無い唇と唇。

「・・・ま、まだ聞いて、無い」

言葉と共に流れる息は甘い香りがする。

「愛している」

乾いた筈の瞳から、溢れる様に涙が流れ出した。

「・・・すき、だいす・・・んっ」

最後まで聞きたかった言葉だが、我慢も限界に近かった。



華奢な体に隠されていた曲線は美しく、陶器の様に白く艶やかな肌は吸いつくように滑らかで、時折発する煽る様な声色に我を忘れた。



バチッ 

胸に小さな痛みを感じて目が覚めた。

目を開けると、ミオの小さな手が胸元に乗っている。

(寝返りを打ったのか)

此方を向いた格好で横になり、片方の腕が自分の上に乗っている。

寝息は規則的で、何か夢を見ているのか瞼の下が時折動いて居る。

大きな瞳の所為で気が付かなかったが、髪と同じ色の睫は長く、閉じていても上を向いて弧を描いている。

(愛しいな)


昨夜脱ぎ捨てた衣服のポケットから在る物を取り出し、掌で温める。

十分温まり冷たさを感じなくなった頃、そっとそれを愛しい人の首元に飾った。



「・・・デュー、デュー」

あの後寝てしまったのだろう、名前を呼ばれて目を開けると、紫色の石を翳すミオの顔が目の前にあった。

「これ、何の石?」

「それは『マリアの涙』と呼ばれる石だ」

「えっ??」


『マリアの涙』と言うのは通称名で、大切な人の居場所を知らせる魔宝石だ。

その昔、戦場に赴いた恋人を思って泣いた涙が魔宝石となり、その石の光に導かれて再び再会したと言い伝えられている。


「その石を身に着けていてはくれぬか」

「・・・心配、した?」

「嗚呼、アシエルに兵を攻め込ませるつもりだった」

「マジ!?そんな大仰な話になってたの!?」


表情をくるくると変えて話すミオが愛おしい。

ミオの承諾を得て、鎖の継ぎ目が切れないように呪文を掛けた。


「デュー、お腹空いた。ご飯食べに行こう」

もう陽は高くまで昇っている様だ。

「そうだな、食事にするか」

自分の胸の上にミオの上半身が乗った状態だったのを、彼女の背中に手を当てて反転させる。

「えっ?」

きょとんとした丸い目が見上げている。

「まだ足りん」

漸く意味を理解したのか頬から耳、首筋まで赤みが浮き出して来た。

「ちょっ・・・まっ・・・ん・・」

唇を何度重ねても飽きる事なき果実の芳醇さに溺れてしまう。

「デュー・・・」

「ミオ・・・」

俺の腕の中でクスリと笑うこの女性を、生涯離さぬと心に誓った。



明るい陽射しの中で微睡むミオも美しかった。



(腹が減ったと言っていたな)

簡単に着替えを済ませて、食料品の調達をしに厨房へと転移した。






やっと意志の疎通が図れましたね~

ついでに体の方も(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ