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デュラハン?

「右側のいくほど難易度の高いクエストがあって、左側に行くほど難易度は下がるの。だから、駆け出しは左端から見ていくの」


「なるほど。じゃあ、早速見てみるか」


 レイジはクエストボードの右端へと向かっていく。


「レイジ、右じゃなくて左だよ」


「ん? 難易度の高いのは右だろ?」


「うん……? だから左の方を見ないと」


 レイジはやれやれと肩をすくめてため息を吐く。


「え? 私なんか変なこと言った?」


「そんなんだから、いつまで経っても底辺冒険者なんだよ。下ばかり見ていてはいつまで経っても上にはいけないぞ」


「別に私は底辺じゃないけど、レイジはまだ冒険者になったばかりだからさ……」


「ふぅー、まあいい。見ていくぞ」


 まずはクエストボードの右端にあるクエストから見ていく。


 <虐殺人形の討伐>、<邪龍アジ・ダカーハの討伐>、<狂楽の魔王ルストの討伐>

 見るからにヤバそうなクエストしかないな。というか、あの魔王の討伐依頼もあるんだな。報酬の桁がすごい。一生遊んで暮らせるじゃないか。


 この依頼長い間誰も受けてないんだろうな。明らかに紙がボロい。この依頼が貼られてから何年経っているんだろう。

 まあ、さすがにできないクエストを受けるつもりはない。大雑把に見ながら左へと移動していく。そして真ん中辺りで、


「おっ、これは……」


 一枚の紙の前で立ち止まる。


 <謎の魔物の調査>

 ダンジョン<樹海>浅層でデュラハンと思われる魔物の目撃報告が数件あり、詳細の調査を求む。

 報酬:五万イリス

 デュラハンを見つけて、報告するだけで五万イリスとは結構良いんじゃないか?


「なあ、デュラハンって強いのか?」


 近くでいいクエストがないか探していたミラに聞いてみる。


「デュラハン!? ダンジョンの深層にいる魔物じゃない! 私達じゃ絶対に勝てないから!」


 首と手をを左右に振られて全力で拒否されてしまった。

 そこまで言うなら、本当に危険な魔物なのだろう。だが、調査クエストだから戦う必要はない。デュラハンの調査の紙を取る。


「じゃ、これにするか」


「話聞いてた!?」


「大丈夫だって。あくまで調査だ」


「ええ……」なんとも微妙な表情のミラだが、このクエストを受けることになった。

 受付でクエスト内容を聞いた。


 目撃した冒険者達はすぐに逃げてきたので、しっかり確認したわけではないが、そのデュラハンは女性らしい。そもそもデュラハンに性別はなく、鎧姿の首なし騎士で、頭を小脇に抱えている魔物だ。

 今回の目標のデュラハンは長い白髪の頭を持ち、女性的な姿形をしていたらしい。あと、聞いたことのない言葉らしきものを発していたらしい。

 なんか……、想像よりヤバそうだ。通常の個体より強力なユニーク個体か……。

 まあ、元より見つけたら逃げる予定だったし、やることに変わりはない。


 というわけで、このケイオスの街にある八つのダンジョンの一つ<樹海>にレイジとミラは来ていた。

街中にある入口からひたすら階段を下りてくると、視界いっぱいに森が広がっていた。地下になるのだが天井が光っているので、昼間のように明るい。


おおよその目撃地点は聞いたので、レイジを先頭にそこを目指して森の中を歩いている。

普通なら、何度か来たことのあるミラに案内させるべきなのだろうが、<樹海>に着く前も何度か道を見違え、入った後も見当違いの方向に歩き出したので、こいつに任せたら駄目だと判断した結果だ。

調査クエストだからといっても、他の魔物に会わないわけでない。しかし、駆け出し向けの<樹海>浅層で出てくるのは最弱のゴブリンが三、四体くらいで、簡単に倒すことができた。その分報酬も大したことなく、倒したところでほぼお金にならない。


「見て、きれいな花が咲いているよ」「あっ、七曜蝶だ。珍しい」

だから、少し緊張感に欠けるのか、ミラはあっちにふらふら、こっちにふらふらとしている。放っておいたら迷子になっているだろう。もう少しで着くのだから俺を一人にしないでほしい。いざという時、ミラを囮にして逃げることができなくなる。どうせ、死んでも生き返れるのだ。なら、俺が生き残って後で回収に来ればいい。


「ねぇ、あっちに木の実がなっているよ」


「おいっ! だからふらふらすんじゃねぇよ! 首輪付けてやろうか!?」


 止めるのが遅く、ミラは走っていってしまった。


「こんな外で首輪を付けてどんなプレイをするつもりですか。変態ですか」


「いや、しないから! ……って、誰だ?」


 声がしたほうを見ると、木の幹に隠れて頭だけを出した黒髪の少女がいる。

 ダンジョンにいるのだから、冒険者しかないんだろうけど。


「人に名を聞く時は、まずは自分から名乗るべきですよ、変態。例え名乗られても変態に教える名などありませんが」


 なんで初対面のやつに変態扱いされなきゃいけないんだ。まあ変なやつとはいえ、仕事を早く終わらせるためにデュラハンを見ていないか聞いておくか。


「ふむ、役に立たないようで申し訳なくないですが、見たことはありません。……私からも変態に聞くのは無駄だとは思いつつ一応聞きたいことがあるのですが、人が住んでいる都市へはどう行けばよいのですか?」


 なにこいつ本当は喧嘩売ってんの? 


「……むこうに出口がある。上がっていけば街に着く」


「意外ですが、本当の事を言っているようですね。それでは、失礼します。……おっと」


 去ろうとした黒髪の少女が何かを落とした。

 レイジの足元に転がってきたそれを目で追うと、琥珀色の目と視線があった。


「…………」


「私の美貌に見惚れるのも無理はありませんが、穢れるので目を閉じるか、潰すかしてください」



 ……黒髪の少女の生首がしゃべっている。


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