第1章 1話 玄関を開けたら異世界でした
大学に通うようになって早1年。慣れるまでそんなに時間がかからなかったし、新しい友達もできた。専攻は歴史学だった。好きなことを学ぶのは楽しいけどこの学問で将来性があるのかはわからなかった。
春休みに一度地元に帰り実家のありがたみを知ってしまうと一人暮らしには戻りたくないように思うものだが、時間というのは待ってくれずまたいつもの日々に戻ってくる。
そんな愛しい普通の日々は何の前触れもなく壊れていってしまうことになる。
その日は、珍しく目覚まし時計よりも早く起きることができて気分がよく、これまた珍しく朝ごはんを自分で作ってみたし、いつもより充実した朝だった。
服を着て靴を履いて、軽くつま先をトントンと詰めてさぁ行こう。今日は寝ないで受講できる気がする。
扉を開けると朝日が目に染みる。あまりのまぶしさに目を閉じてしまう。慣れるまで細目で。
見慣れた景色がそこにはなかった。
そう。見たことのあるものがまるで何もなかったのだ。
家の玄関を開けるとそこには広大な草原が広がっていた。
「あれ?」
あまりにも訳の分からない状況にすっとんきょうな声を上げてしまった。ドアノブの感触はもうない。後ろを振り返ったら何もないんだろうなぁと思いながら振り返ると案の定何もなかった。悪い予想というのは当たるものとはよく言ったもんだ。
やっぱりか。なんだこれは?これはあれか?異世界転生とかそういうやつか?アニメとかラノベで流行っている奴…
死んでないから転移かな?
いやいや、のんびりそんなこと考えている場合じゃない!
ここはどこだ?転移とか異世界とかそういうやつ?本当に?
目を凝らして草原の奥を見てみる。草原の端には木々があった。林?いや、森かな?その奥には見たことも無いような大きな山々が連なっていた。間違いなく日本じゃないだろう。あんなに高い山を俺は知らない。やっぱりここは…知らない場所なんだろう…。むくむくと膨れ上がる不安に押しつぶされそうになる。
帰りたい。
どうやったら帰れるのだろう?と、とにかく!ここに居たんじゃラチが明かない。何か、何かここがどこだかわかる手がかりは無いか?
草原を見渡してみる。奥には林とも森ともわからない木々がうっそうと広がり…
広がり?一部だけ道のようになっている!何かある!
何かあるというのはほとんど直感だった。道のようになっているが人が通っているのかはわからなかった。
けもの道かもしれない。ただあの草原にいるよりは何かわかるかもしれなった。
少し速足で歩くとすぐに道とおぼしき場所まですぐについた。さて、これはどこに続いているのだろう。軽く冒険者気分だった。草が足にまとわりつかないこの道はさっきまでよりだいぶ歩きやすい。さっきまでの不安を置き去りにするように、俺は地面を踏みしめた。
けもの道なのか、本当に人が通る道なのかわからないような道をひたすら歩いていく。草原からどんどん離れ、木々の中まで続いていたその道はまだまだ先があるようだった。行くしかないな。
ひたすら歩いて森を抜けると石出てできた家があった。家には煙突もあり、煙突から煙も出ている。
人がいる!生活している!ほっとした。ずっと森を抜けられないかと思った。
「すみません!どなたかいらっしゃいませんか?」
家の扉をノックしながら言った。
日本語が通じるとは思えない。ただできるだけ丁寧にあいさつをしなければ。何をされるかわからない。
「は~い。」
おいおい日本語じゃねぇか!ここは日本だったのか!!扉が開いたらそこに立っていた小さなお婆さんは日本人の顔ではなかった。何人なんだろう?あ、ハーフとかかな?
「すみません。道に迷ってしまってあの森を抜けてきたのですが、ここはどこでしょう?」
怪しまれないように、ここはどこなのか聞いた。
「あの森を抜けてきたんかえ?無事でよかったなぁ…。あそこの森は魔物が出るんでよ、狩人の人以外誰も行かないんよ。ここはガラム王国のはずれのマサラ村じゃねぇ。」
ガラム王国?マサラ村?え?ポケモン・・・でもない・・・
ここはどこなんだ…
帰れるのか…。




