第2章 6話 戦う魔法使い
魔法を習得し次にパップから教わるのは格闘技だった。
パップにボコボコにされるアヤト。
自分の身を守ることはできるのか!?
それからの日々は地獄のようだった。ひたすら毎日パップに殴られ蹴られ時には投げられる日々だった。一切手加減をしていないのではないかという気さえする。
変化が訪れたのは2週間ほど殴られっぱなしの時だった。
「それ!」
可愛い女の子が右の拳を突き出す。その速さは一瞬腕が消えたのかとさえ思うくらいだった。俺はいつものように体を振って躱す努力をする。いつもならそのまま殴られるのだが、体にひねりを加えて左足を引いた。ビュンという音ともにパップの拳は空を切った。
「お!やった!パップ!初めて躱せた!!!」
嬉しさのあまり喜びの声を上げた。
「クッソ…」
パップは一言つぶやいて空を切った拳をそのまま左に振った。
「ウッグ・・・」
「一回躱したくらいで油断しない!って言っても躱されるとは悔しいなぁ。」
「クッソォせっかく躱したのに…」
「あぁちゃんと躱せたね。次からは一回躱しても喜ばないでしっかりあたしの攻撃全てを躱せるようになりなさい。躱せないなら腕で防御したりも出来るはずよ」
「わかりました。精進します。そういえば、なんで急にパップさんの拳が見えるようになったんでしょうか?」
「ん~そりゃ2週間も殴られていれば目も慣れてくるんじゃないかしら?普通は殴られるときなんて目をつぶるもんだけど、アナタずっとあたしの拳を見ていたじゃない。見えないほどの速さってわけじゃないけど目で追うのはやっぱり普通はしないわね」
「そうなんですか…」
そう。俺は殴られる瞬間までずっと拳を見ているように努めていた。何より殴られるときに目を閉じている方が怖かったのもあった。
「じゃあもう一度始めましょ。行くわよ!」
と言ってパップは構えをとり思い切り殴りかかってきた。一発目の左拳を躱す。次は…右!
ちゃんと自分の目がパップの動きをとらえられていた。だけど身体が付いて行かない。 くそ!また殴られる…
ドンという鈍い音とともに俺の体は立っていた場所から数メートル吹っ飛ぶ。
「ぐあぁ…」
情けないうめき声を上げながら治癒魔法を拳の当たった個所にかけるのだが、痛みのせいでうまくいかず時間がかかってしまう。
「ん~2発目の攻撃はまだ難しいかもねぇ。でも1発目が躱せたなら大丈夫!あとはアナタの努力次第よ!さぁ治したら次行くわよ!」
パップはとても笑顔だった。
「なんでそんなに嬉しそうなんですか…」
治癒魔法をなんとかかけ終わった俺はパップに聞いた。
「そりゃあなたが躱せたからよ!嬉しいじゃない。人の進歩を見れるのがこんなにうれしいなんて知らなかったわ。あなたを教え終わったらちゃんとした弟子でも取るかしらと思えるくらいよ!」
「そういうもんなんですか…」
「そうよ!さぁ次行きましょ!」
そうしてパップは笑顔で構えを取った。
それからまた数日するとパップの攻撃を何とかではあるが躱せるようになった。
「いいわね!いい感じよ!反撃しなさい!躱したら反撃!ちゃんと自分も攻撃する!」
パップは拳や足を俺に突き出しながら反撃を指示した。
「はい!わかりました!」
何とか躱せている状態で反撃が難しい。
「ほらどうしたの?ちゃんと躱せてるじゃない?あなたも反撃してきて!」
「む!難しい!!です!」
本当に躱すのに精一杯だった。
「いいわよ!じゃあ攻撃のスピードを上げるわね。ちゃんと躱すのよ!!」
と言った瞬間にパップは今までの攻撃の比じゃないスピードをもって俺を倒しに来た。必死に躱していたさっきとは違い攻撃の当たる瞬間を確認できたのは目ではなく当たった個所の衝撃だった。また情けなく壁まで吹っ飛びあまりの衝撃に気絶してしまった。
「ほれ!起きなさい。傷はもう癒えてるわよ」
「あ、ありがとうございます」
「あなた攻撃できないの?」
「まだうまくいかないですね…」
「そうなのね…まぁ今日はこれくらいにしてまた明日ちゃんとやろっか」
と言って今日はこれで休みになった。
ここからしばらくは本当に躱して反撃の訓練ばかりだった。と言ってもパップに攻撃が当たることはほとんどなかった。ただパップの攻撃の速さがどんどん早くなるにつれて俺も躱す速度は上がっていった。心なしか俺自身の動きも早くなっているみたいだった。
それから3週間くらいが経ちパップに攻撃が当たるようになる。パップも次第に自分に治癒魔法をかけることが多くなり始めた。それでも相変わらず俺が自分を治す割合のほうが多かったが。
「よし!今日はここまで!凄い進歩ね!!」
パップは笑顔だった。
「ありがとう…ございました…」
ちょうどパップの蹴りが左の脇腹に入り吹っ飛ばされた時だった。
「まぁ治癒魔法で治してちょうだい。あ!そういえば、アナタ気づいてないかもしれないけど、実はこの部屋の重力、もう6倍くらいになっているわよ?」
「え!?そうなんですか?全然感じないです…」
「そうでしょうね。魔法の練習が終わったあたりからジワジワと上げて行ってるから気づきにくかったかもね」
重力が6倍…元の世界でロケットのパイロットなどが訓練するときに掛ける負荷が5倍と昔に聞いたことがあったがもう普通にそれを過ごしている…俺自身バケモノになってしまったのかもしれない。
「重力を通常に戻すのもいいんだけど、このまましばらくはジワジワと上げていきたいのよね。そして明日からは武器と魔法を使った本当に実践に近いことをしていくわ!覚悟しておいてね」
パップはまたいたずらな笑顔を見せてくれた。その笑顔が俺には恐怖でしかなかった。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
のんびり書いてますのでのんびり読んでくれたら嬉しいです。
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