【番外編】祭りのあとは 4
最近、自分がおかしい。
前世の記憶自体があること自体おかしいんだけど、三百年記念祭でお父様達との寿命の差を実感したら、すごく哀しくて怖くなってしまった。
人生五十年、いや失礼、百年と言われるようになった世界から、寿命数千年?数万年と言われる種族がいる世界に来たら、私なんてほんと羽虫の存在だ。
そんな私がお父様達の生涯の中で一緒にいる期間は本当に短い。
泣いてしまった夜は、何とか「感動した」の一点張りで誤魔化したけれど、そのあと「種族が違うから仕方がないと」自分に言い聞かせて、いつものように過ごしてみようとしてはいるものの、気分が浮上する気配は見せず、知らないうちに顔が俯いてしまっている。
「セシル様、何も描いていないじゃないか。
どうしたんだ?」
そう負のスパイラルに入ってしまって、最近お絵描きも白い紙に色鉛筆を持ったまま何も描けない。
お父様達が三百年記念祭の初日に飛んだ姿を描いた絵も描きかけだ。
そして、今もお部屋に飾ってある秋咲きの綺麗なオレンジ色の薔薇を描こうと色鉛筆を握ってみたものの、鉛筆の先を動かすことが出来ず、いつの間にかボーっとしてしまっていた。
「上手にかけましぇん」
「……セシル様、最近元気がないな?」
「しょんなことないでしゅよ。
ちょっとシュランプになっているだけでしゅ」
「スランプって……、子供が使う言葉かよ。
セシル様、俺が知らないところで王宮かどっかで何かあったんですか?
どうも祭りのあとから元気がないですよ?
王宮にいる間に俺達が知らないところで誰かに陰でいじめられたんだったら、俺がそいつに「セシル様を怒らせると、後でひどい目にあう」って教えてきますけど」
「……グレイ、いじめられてにゃいですし、もしいじめられても、グレイが教えに行くなら自分でやり返しましゅよ」
「自分でやり返すって……。
さすがあのベルトランじゃねえ、ウラジミールと戦っただけありますわ。
じゃあ、本当にスランプなのか?
最近隠れて孔雀にトライもしてないし、ヴァルハランドの城下町にも行きたがらないし。
ほれ、エーミール様達に言えない何か隠し事があるならこのグレイお兄さんが聞いてあげますよ。
おねしょでもしたんですか?」
「違いましゅっ!
グレイ、しちゅれいな!」
なんて失礼な奴だ!
外見は子供でも中身は大人な私に向かって、おねしょとは!
「しょれに、グレイは私から見たらおじしゃんでしゅよっ!」
シリンさんといい、グレイといい、ここはちゃんと幼児から見たら年が離れすぎているという認識をびしーっと分からせなくては!
「ましゃか、グレイまでシリンしゃんみたいに私のような小しゃい子に結婚を……」
「おーい!
俺をあいつと一緒にするな!
あー、エーミール様が心配して王宮でセシル様は最近元気がないっていうものだから、カイル様だけじゃなくて今日はついにロジオン様がネティ様を連れて顔見にいらっしゃたようだぞ。
……ほら、あそこ」
ずっと白紙を睨んでいた私の頭をやれやれといった風情でグレイがポンポンと頭に手を置いて抱っこして連れて行ってくれた窓から外を見ると、夕日になりかかる時刻のどこか柔らかなオレンジ色の陽光の下、玄関に向かって歩いてくる黒髪の背の高い美男美女とお父様がいた。
「ロジオンしゃまとネティしゃま!
ほんとでしゅ。
玄関へお迎えに行きましゅ!」
「そうだな」
ひょいっとグレイが私を抱きあげて玄関に向かった。
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