事件が起きたみたいです3
「まだ確定じゃないが、三年前の「聖人」に何らかの関わりがある可能性が高いようだ。
今回の犯人の身元を割り出して確認したところ、転移魔法を使えるほど魔力がある人間じゃなかった。
調べた警邏隊の話では、身に着けていた指輪を媒介して魔力増幅の魔法陣の力を利用して転移していたらしい」
「命を奪って魔力に変える魔法陣はあの事件後からは作れませんよ。その魔法陣の波動は魔導会の道具に見つかってしまうはずです」
「そう、ルカの言う通り、あれは作られたらすぐ装置が反応しなくてはおかしいのだ。
それと、ここからが厄介な問題なのだが、その魔法陣の側に死後一週間ほどたった魔族と妖精の子供達も見つかったそうだ。
そして魔法陣もその子供たちが殺された時と同時期に発動している」
「まさか、その子供達の命が奪われて魔力に変換されていたのですか?」
「当たりだ、ルカ。
殺された子供の親御さんの気持ちを思うと……。
その悲しみと怒りは如何ばかりかと思うよ。犯人を八つ裂きにしても許せない気持ちだろうな。
あと、困ったことにその発見された子供の身元なんだが、妖精族と魔族の誘拐事件で連れ去られた子だった」
「え?」
「魔法陣の魔力を使っていたことからみても、十中八九その子供たちを殺したのは自殺した犯人だ。しかも、犯人の身元を調べたところ帝都の住人だそうだ」
「なっ、このルードリアの住民が誘拐事件の犯人だったんですか?
この国の者がお母様を殺したあの狂人教団を信仰していたなんて、非国民もいいところではないですか!」
「ルカ、落ち着け。気持ちはわかる。
それよりも、大変なのは、その他国の子供をこの国の者が誘拐殺人を行った事実……となると、国際問題だ。
しかも、一週間以上、違法の魔法陣が発見できなかったということになる」
「父上の言う通りですね。
あの三年前のあのナーガ教の事件の後は魔法陣の管理は各種族、いや各国の魔導会がしていますよね。
それに違法の魔法陣が新たにできた時は、警報装置が反応するんですよね?
反応しなかったということは、この国の魔道具は故障していたんですか?
それとも魔道具自体が不良品だったんですか?」
おおっ、お兄様、子供ながら大人顔負けの鋭い突っ込み。今の言葉、開発者のベルトランが聞いたら泣いちゃうと思いますよ。
「装置に異常はなかったそうだ」
「じゃあなぜ?」
「魔法陣の反応を隠す魔法がかかっていたみたいだ」
「は?
転移魔法すら魔法陣の魔力を使う人間が、魔導会の装置から魔法陣を隠すほど高度な魔法が使えると思えません」
「そう、だから共犯者がいる可能性が非常に高い。
魔導会からは装置開発者のベルトランが昨日発見された魔法陣の解析に向かったし、ルードリアの軍を総動員してあの教団の信者の残党がルードリア帝国にいないか騎士達が調査を開始することが決まった。
また各国にあの教団を退会し、信仰を捨てた者で我が国に入国したものを早急に洗い出すようにしてもらうよう依頼し、魔導会には使われた魔法陣を詳しく解析依頼したと聞いたけれど、事件が祭りまでに解決するかはわからない」
「とにゃると、犯人の犯行動機や共犯者がいりゅかどうかわからないと、子供は街のお祭りに行けないでしゅか?」
「セシルまで大人みたいな言動だね」
「もう赤ちゃんじゃありましぇん。
それに早く解決してくれないと、遊びにいけましぇん。
もしかしてこのおとーしゃまの街も行けないでしゅか?
今度のおやしゅみはおにーしゃまとカイルしゃまと一緒にしょくぶちゅ園に行くおやくしょくでちた!」
「そうだった。城下の植物園に行く予定だったね。
私が治める領地は大丈夫と言いたいが、しばらくは難しいかもしれないな。
聖人の魔法陣は我々がまだ見落としている力があるかもしれないから、万が一、ルカもセシルも誘拐されたら・・・・・・」
「父上、ルードリアでは子供の誘拐、殺害は種族関係なく一族郎党皆死罪という話は子供でも知っていますよね。
その危険性を冒してまで、死んだ犯人は……力の弱い人間が何をやりたかったのでしょう。
このルードレーンの国々の中でも我が国は魔素が強い地域ですから、魔力がない他国の人間は魔素対策をしないと命とりですし、居住権を得ている者たちでも下手に魔力を使いすぎて命を失うような真似はしないと思います」
「ああ、だから、共犯者は疑いたくないが、この国の我々竜王族や……」
「そんなバカな!
この国の住民であの教団の信者がいるとは思えません。
黒の大公の妃であるお母様を殺したあの教団はこの国では許されざる存在です。
その残党が近所の目をごまかしてこの国にいることは難しいと思います。
もし、だったとしたら、狙いはまた冥界の神殺しでしょうか?
北のノーザンバランドならまだしも、このルードリアは冥界の神にゆかりの地はほとんどありませんよ?」
「確かに我が国は冥界の神にゆかりのものは少ない。
だが、起動した魔法陣の魔力を装置に感知させないような隠蔽魔法を使った者がいることは確かだ」
「でも、父上、先ほども申し上げましたが、ルードリアでは子供の誘拐、殺害は種族関係なく一族郎党死罪です。
その危険性を冒してまで、この国で子供の命を狙う理由は何でしょう?
三年前と同じように、人間の国の住民を狙ったほうが、リスクも少ないと思いますが、他種族の命を使うことで新たな何かを見つけたということですか?」
おお、お兄様探偵モードですか?
再度あごに片手を当ててうろうろ、一応食べ終わってはいますが、お食事中はお行儀が悪いと思うのですが、確かに我々子供にとっては三百年祭という記念の祭りにも、街にも繰り出せないのも超が付く痛手です!
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