開戦②
戦闘は前線のみではない・・・。
どこかの指揮官が残した名言だったと思いますが、思い出しました。
しかし、前線が知らないうちに後方が崩れるのは、やはり怖いです。 下がるためにいる部隊がなく、前線を支えながら下がるのは、後ろ向きのままで全力疾走をするより怖いですしね。
不意打ちの開戦が始まり、総司令部の忙しさは増した。
当然のように他の事務方から人員を引き抜き、司令部要員にして廻した。
「前線部隊が獣王国内にて、敵小部隊と衝突!これを撃破セリとのことです!」
「航空隊より通信!我、敵第二陣を確認セリ!前線より100キロほどの距離があるそうです!」
「補給部隊は前線へ!弾が不足しています!」
様々な指令や報告が飛び交い、司令部入り口には多くの伝令兵やバギーが、司令部入り口で報告書や伝令を係りに渡していく。 その後で待機所で少し休むと、追加命令書を渡されたり等の連絡を受けて、再び外へと向かっていった。
「始まったな・・・。」
「はい。 あの二人の遺体は家族に引き渡しが完了したとの報告を受けています・・・。」
「ジョアンナ・・・。 祖国が。 今まで尽くした祖国とこのような形になった事を怒っているか?」
「・・・。 怒っていないと言えばうそになります・・・。 ですが、それは祖国にです。 貴方は祖国の為に尽くしていたのに祖国は貴方を裏切り、貴方のすべてを奪おうとした・・・。 その事に怒っております。」
「・・・。 私も・・・憤りはある。 信じた国は裏切りの片棒を担ぎ、妻達の国はあっけなく切り捨てられた・・・。 彼らにとっても身内がいるやもしれん国と戦争をしてしまった事に・・・悲しみがあるんだよ・・・。」
「そこは気にせずとも。 我が国は元々は弱肉強食。 弱ければ、食われてしまうのは必定。 そこは気にせずに・・・。 ですが、もし王家の姫様が保護を求めた際は、寛大な処置をして頂く様にお願いします。」
「姫君?そのような方がいたのかい?」
「正確には、王が匿っていた北方の蛮族の一部族長の娘が、王との間に生まれた御子です。 母親の女性は産んだのちに産後の肥立ちが悪く、三月後にお亡くなりに・・・。 残されたお子は同じ時期に生まれた妾の子として、育てられているそうです。」
「そうか・・・。 ほかに御子はいないのか?」
「正妻や側室の方々がお産みになったお子は、男児は戦や政権抗争時に。 女児は人質に出されたり、誘拐後に殺された形で見つかるなどの目にあい、ほぼ直系のお子はいません。 ですが、彼女は存在が生まれた時から隠された為にご無事です。」
「分かった・・・。 その際はそうしよう。」
「お目こぼし感謝いたします・・・。 今日の夜伽、励ませて頂きます・・・。」
「よろしく。」
彼女は黙礼した。
窓の外を見れば、今も車両がひっきりなしに出入りし、各部隊や場所に脱兎のように飛び出していく。
その光景の先に第一次の拠点破壊の作戦が進んでいた・・・。
「あの兵器は、私の暴挙の一つだ・・・。 彼らはあれを放つボタンを押させることをした・・・。 私の怒りを彼らに伝えよう・・・。」
「民は・・・民は助けてください・・・。」
「まずは軍事拠点だ。 それでガードを下げれば、ありがたいな・・・。」
「・・・・。」
司令部の廊下を歩きながら外を見る。
彼の暴挙と言っていた黒い飛翔体らしきもの・・・V2ロケット。
旧ドイツ軍の使用した大型ロケット兵器が雁首を並べて空を睨んでいた。
<V2ロケット発射基地>
マサルが召喚した長距離兵器の一つ、それがこの基地だ。
開戦の号令が始まってすぐに燃料の搬入と装填や弾頭の装着などの命令が、矢継ぎ早に出された。
「おい!俺らは開戦前の会議では、俺らは出番がないはずじゃないか?」
「知るか!だが、あいつらが総指令を怒らせて、うちの指令を直に呼び出して、発射準備命令をだしたらしいだよ!指令が基地に帰ってきた際に顔面蒼白な顔をしていたらしい。」
「それでこの騒ぎか・・・。 これを叩きこまれる相手に同情するよ・・・。 これはヤバいからな。」
そういって見あげるその巨体は思いのほか、迫力がある。
かつてのV2より長い射程を誇り、赤外線誘導やジャイロコンパスを初期だが、有しているために精密攻撃が出来た。 かつての兵器では出来ない事だ。
それが少なくとも50発が、それを睨んだ。
弾頭も様々で、焼夷弾や榴弾、滑走路破壊弾や通常弾もあるが、目的に応じて装着された。
基地の端には、次弾が車両に積載されて少しずつ近づいていた。
「あと数分もすれば、燃料の積み込みと目的地の入力も終わる・・・。 総司令の怒りが、あの温厚な司令官の怒りを灯したあの目は・・・。 恐ろしい・・・そして、歓喜しそうなこの思い・・・私も活躍の場があることが嬉しいのか? まあ、良い。 我も命に服すのみ・・・。 わが部隊の地獄の業火に焼かれるがいい・・・。」
「指令!燃料の注入及び要員の避難、完了しました!」
「目的地入力は?」
「終わっております!」
「分かった・・・。」
基地司令官は射撃準備が終わった事を確認すると、近くある赤い受話器を取り、ある所に連絡する。
『私だ。』
「ロケット基地司令であります。 射撃準備は完了いたしました。 ご指示を。」
『よろしい・・・。 各目的地に向け、放ちなさい。 わが怒りを叩き込みなさい。』
「畏まりました。 失礼いたします。」
『報告を待つ』
「はっ!」
指令は静かに受話器を置く。
一息吐いたのちに司令部内の要員を見渡す。
ロケット基地司令部要員全員が、指令の指示を待った。 指令は自分を落ち着かせたのちに口を開く。
「・・・。 総司令より命令を伝える・・・。 ロケット弾、全弾発射!偵察部隊にも連絡。 安全距離まで退避命令を出せ!戦火次第で次弾を叩き込む!発射後に次弾装填!燃料及び弾頭の装着を急げ!」
「「「「「了解!!」」」」」
静まり返った司令部は、ハチの巣を突っついたような状態になり、あわただしくなる。
それでいて、粛々と発射体制へ。
「第1~第20番まで発射!続いて、21番から35番まで発射する!消火班は即応体制!発射活動中に活動することもある!準備を!」
「第1から20番!発射します!」
「続いて21番から35番まで発射します!」
大きな飛翔音を響かせながら飛んでいく35発の死神が飛んでいく。
そして、残った15発も射角が確保できたために雁首をもたげる。
「第2弾!35番から50番!発射します!」
「第23番発射台に出火!消火班、出動要請!」
さらなる飛翔音を響かせた15発も先に飛んでいった35発を追いかける様に飛んでいく。
彼らが飛び立った発射台には、次の飛翔体が装填されていく。
煙が少し立ち込める中で50発の死神が、発射台に鎮座していく。
基地から延びて行く白い雲が、今は綺麗に感じた司令官だった。
<アバロン潜入偵察隊サイド>
戦争前より潜入偵察活動をしていた彼らが、戦果確認の任を帯びていた。
そして、件のロケット兵器が発射された事を暗号で知った彼らも俄かに忙しくなる。
「いま、ロケットが発射された。 あと10分くらいでここに来る。 退避だ。」
「了解。 第二陣地へいこう。」
彼らは普段は市民の様に過ごし、潜入していた。
そうして、敵の拠点を調べて報告していたのだが、当初は今回の兵器が投入される事はなかったために普段と変わらない活動をしていた。 しかし、土壇場に総司令官の指示で投入が決定し、候補になった場所にいる潜入員が招集された。 確認のために。
「しかし、総司令の秘匿部隊でもあるあの部隊が、攻撃命令とは・・・。 なにしたんだ?」
「どうやら戦場で不義を働いた上に、兵士を殺害したらしい。 それがきっかけだ。」
「それはまた・・・。」
雑談をしているうちに獣人の彼らの耳にロケット兵器の接近が感じられた。 一人が空を見ると、空に三条の飛翔体が接近していた。
「騎士団屯所に司令部、兵器庫。 これはヤバいな・・・。 吹き飛ぶぞ。」
「綺麗に目的地に向かってる。 これは終わったな・・・。」
凄まじい爆発音と共に目的の施設が、吹き飛んだ。
彼らが近づいて、確認した所で兵器庫は壊滅で、兵器は武器・防具は使い物にならず、司令部はほぼ全壊で火災も発生していたが、炎が強くて消火が出来ず。 騎士団屯所はさらに大きな被害があり、宿舎は炎に飲まれており、施設もほぼ全壊で近隣の建物にも被害が出ており、負傷者の収容も出来ておらず。
攻撃は成功と第二次攻撃の要なしと、暗号電を打った後で、有志で消火や救助活動に参加した。
他の攻撃目標も同様で、中間集積地や前線司令部、連合軍物資生産拠点等を破壊した。 その殆どが再攻撃の要なしの連絡を受ける。
<ロケット基地サイド>
「戦果報告来ました!」
「うむ!読め!」
「発射した50か所のうち目標を違えた場所はなし!再攻が必要な箇所は4つ!」
「そうか!報告ご苦労!」
司令官はまた赤い受話器を取り、連絡をする。
『私だ。』
「戦果報告をさせて頂きます。」
『うむ。 頼む。』
「目標50か所は全弾命中しました。 再攻撃の要は4か所であります。」
『分かった。 では、再攻撃要請の4つには再攻撃を。 あとは第2目標に。』
「畏まりました。」
『期待する。』
司令官は受話器を置く。
司令官は第二目標の指示を出し、発射台に装填されていく。
燃料と弾頭の装填が行われていき、再攻撃の準備が進む。
第二目標は、政治機関を狙ったものだ。 どちらかといえば、軍事に明るい貴族や私兵団屯所、進撃の妨げになる渓谷や谷の破壊だ。 中には国の出先機関のある建物も目標となる。
彼らの前線へ救援が送れる場所をピンポイントで潰していく。
ロケット部隊は、粛々と任務をこなした。
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