作戦実行前にミイラが来ます。 でも、地獄の窯が開かれる・・・
開戦前までを投稿してみました。
大規模作戦前のアバロン中央指令室では、作戦準備で大わらわだ。
戦闘準備で移動したり、物資の輸送や攻撃個所を設定したりしていた。
「第56戦車隊は前線予定地から20キロ地点で待機してください!」
「第34爆撃隊は即応態勢で!」
「独立歩兵団は前線陣地で待機を!」
「戦略爆撃戦闘団は、対地戦闘装備で出撃待機!護衛戦闘機隊は増槽装備で同じく待機して下さい!」
「歩兵司令部に通達です!全歩兵隊、出撃待機!」
「航空隊司令部、物資確認をして下さい!」
総司令部内通信部隊は、10名以上の女性が様々な部隊や部署に通信をしている。
その周りにも様々なファイルを持って走り回る訓練生や司令部要員が走り回っていた。 すでに相手サイドが移動をほぼ完了していた事で、前線・後方問わず多忙を極めた。
伝令用のバイク部隊は数十台の単位で、入場退場を繰り返した。
その前線も歩兵隊は元より補給隊も馬車馬のように動き回っていた。 伝令部隊のバイク隊以外にもバイクを配備された部隊は、臨時でバイク兵を伝令兵に仕立てた。
アバロン国内では、バイク隊が帝国軍にも多く報告に来た。
そのやり取りもうまく行った。
そして、その司令部の上座に現れた人物に司令部全員が、目をむいた。
「アバロン総司令官マサル・アバロン様、御入室!」
「ぜっ、全員、敬礼!」
ざざっ!かっ!
司令部内には、明らかに40名以上いる司令部要員たちが、全員上座にいる車いすに座った男性に敬礼をした。
司令部に入ったマサルは、マリアに車いすを押してもらいながらエリザベルが、様子観察しながら薬を用意をしていた。 他の妻たちは各自の持ち場で頑張っていた。
「諸君、職務ご苦労。 そのまま職務を遂行してくれ。」
「「「「「「はっ!」」」」」」
マサルの発言で先ほどの忙しい状態が続いた。 ただ、最高司令官がそこにいる事で、どことなく気合が入っているように思えた。
そうしているうちに長距離偵察部隊の一機が、報告が入った。
「先行偵察航空隊より通信!獣王国軍と思われる大部隊がわが軍前線に向け、進撃を開始したとの報告が入りました!」
「来たか・・・。」
「はい。 貴方、どうされますか?」
彼らの行動はほぼ筒抜けではあるが、獣王国の大部隊ではなく、金で雇われた傭兵団や義勇軍、民兵の集団だった。 しかし、戦火次第で追加報酬があることを餌に彼らは進んだ。
しかし、獣王国部隊も彼らを餌に少しでも有利な位置につこうと、動いていた。
<獣王国サイド>
「彼らを囮にアバロンの馬鹿どもに鉄槌をくれてやらんといかん!」
「はっ!進撃を開始します!」
指令を受けた獣人兵士は、遂行するために走っていく。
指令を受けた傭兵団たちを先頭にアバロン軍の前線陣地へと、進んだ。
しかし、前線に行くのが欲に目が眩んだ傭兵団であることが獣王国を主体にした連合軍に悲劇をもたらしたのだった。
<アバロン軍・前線>
前線にいた独立歩兵団のうちの一隊・第4中隊は、戦闘前の前口上の準備をしていた。
この世界は通信が発達しているわけでは無いので、決戦時はこれが行われる。 マサルは非現実的だと思いながらも行う事になった。
使者は歩兵隊の小隊の一つである小隊長の女性エルフ。
女性でありながら隊長の任につく女傑だ。
「貴様に前口上に向かってもらう。 大変な役目だが、よろしく頼む。」
「はっ!行ってきます!」
小隊長は、上官である中隊長に敬礼して出て行く。
前口上をするために塹壕群を進み、用意されたジープに乗り、前線へ。
向こうからも馬に乗った者が数騎現れた。 相手側の使者だ。
「アバロン使者のエルバロール・ヘレンだ!これより我らとの決戦が始まる!準備は良いか!」
彼女が口上を述べたが、相手側は何も言わない。
そうしているうちに一騎の騎馬が近づいた。
「すまない。 うちの使者役が上がってしまって・・・。 近くに来てもらえないかと。」
「分かった。 近くに行こう。 車両を前に。」
「はっ!」
ジープを前に出した。
そして、彼らの近くに来たところで状況が一変した。
「近くに来たぞ!聞こう!」
「あっ、あの、ここまで来てくれて感謝致します・・・死ねぇ!」
「なっ!ぐはっ!」
騎兵数騎がジープに襲い掛かった。
そして、使者の女性と運転手を手に持った剣で突き刺した。
運転手の首も横凪に切り伏せた。
使者であるために護身用の武器を持っていなかった二人は、あっけなく殺された。
死体が二つ入ったジープも彼らが持っていた油で火がつけられ、轟々と燃え上がった。
「小隊長!」
「あの野郎!ぶっ殺す!」
「ヘレン・・・。 口上は述べたよな?」
「へっ?はっ、はい!こちらまで聞こえましたので、述べられました!」
「よし!ならば、攻撃準備を。 後方の砲兵部隊に砲撃準備命令を、そして、前線の迫撃砲陣地と機銃陣地と歩兵砲陣地にも攻撃待機を下命しろ。」
「はっ!はい!」
「車両部隊に下命し、彼女らの亡骸も回収をしてくれ」
駆けだそうとする兵に付け加えで命令を下命する。
彼も敬礼して飛び出していく。
「無法したのであれば、手加減はせん・・・。 彼女らの恨み、身をもって知るがいい!」
中隊長自体も内たるものは煮えくり返っていた。
彼女も優秀な士官である事と自身の手塩にかけた生徒でもあったからだ。
彼から報告を受けた団本部は、さらに上に報告された。
こうして、紛いながらも宣戦布告がされた。
彼女らの遺体も装甲車両が盾になり、回収された。
意図していない所ではあるが、開戦の狼煙は上がった。 二人のアバロン兵の死と共に。
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