辺境伯領開発記⑤
徐々に日が昇るのが、早くなりました。
ですが、まだ寒い日が続いているので、体に気を付けてください。
妻たちの世話をする者が、各領地からやってきた。
来た世話役の人達にも面会した。
「領主様。 ここにいるのが、我らの世話係の者たちです。」
「「「「よろしくお願いします。」」」」
世話係の代表者と思われる人が、頭を下げた。
総勢20数名の人を前にすると、中々な迫力はある。
「皆さん、この度は妻たちの為に来て下さり、ありがとうございます。 無事に出産できるよう手助けの方をよろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。 誠心誠意、務めさせて頂きます。」
「ひとまず部屋は用意します。 そちらからの出仕という事になりますので、よろしく。」
「畏まりました。」
全体の代表と思われる人が頭を下げると、全員が下げた。
こうして、出産までの準備が始まった。
それぞれに合わせてどのように対応するかを対応していた。 彼らの参入で安産への道が広がった。
そうしているうちに数か月経ち、産気ずく妻が出始めた。
最初はジョアンナ。 一番最初に妊娠したので当然だが。 昼前から産気づき、苦しみだした。
すぐに助産師や医師、看護師が呼ばれて、世話係も呼ばれた。
「妊婦が産気付きました!出産後のケアの準備を急ぎなさい!」
「「「はい!」」」
「陣痛が5分間隔になりました!」
「急いで配置に着きなさい!」
ジョアンナの世話係の女性陣が、準備に奔走した。
ドクターも助産師も配置に着き、いつ出産しても良い状態になった。
それからジョアンナの痛みと苦しみの時間が、3時間ほどしたのちに一人目が生まれ、その20分後に二人目。 その30分後に3人目が生まれた。
屋敷内に3つの大きな声が響くと、館内に笑顔と歓声が沸いた。
「産まれたか!3人だったな!どっちだ?!」
「失礼します!ジョアンナ様が出産が終わりました!」
「どっちだ?!」
「男児がお二人。 女児がお一人です!ジョアンナ様もご無事です!」
「ジョアンナによくやったと、伝えてくれ。」
「畏まりました!失礼します!」
マサルは落ち着くまでは、女性たちの部屋に来ないように言われたために出産時も近くには、行かずに執務室で待った。 そして、母子ともに無事であることは大変喜ばしい事だ。
それからは怒涛だった。
その7日後にマリアが。 その10日後にユリが、さらに5日後にユリーダ。 3日後にエリザが出産したのだった。 マリアが3人を産み、ユリが二人。 ユリーダは3人を、エリザは4人も産んだ。 出産が終わった家の者は他の妻たちの手伝いに回った事で、人手は多くあった事が幸いして全員が、母子ともに無事に出産が出来た。
「無事に終えることが出来て良かった。 各家にはそれぞれ手紙を認めるので、届けて欲しい。 勿論、記念品もあるので、それも頼みたい。 良いかな?」
「勿論でございます。 喜んでお受けいたします。」
「よろしく頼む」
マサルは、記念品に子供一人ずつの写真と足型と手形の小さな色紙を一つの額に収めて、それを梱包してから割れないようにした。
「それでは行ってきます。」
旅支度をした4人が、それぞれの家に帰るために仕度をした。
その背中には、妻たちが産んだ子供達の写真が背負われていた。 今の彼らにとっては、命より大切なものだ。 しかし、帰り道はうちの者が、護衛をするので割らないようにだけ気を付けてください。
「家中の方々によろしくお願いします。」
「「「「はっ!」」」」
当たり前だが、全員が男性だ。 それぞれの家に向かう車両に乗り込み、去っていく彼らに手を振った。
彼らも手を振り返してくれた。
「ある意味での山場が落ち着いたな。 俺も親になれるとは・・・。 凄いね。」
「これからも頑張ろう・・・。」
こうして、それぞれの家の者を見送り終わり、また館に帰るのであった。
当然、世話係も数名は残るらしく、そのままうちとの繋がりを保つらしい。 当然だが、妻の世話に尽力してもらう。 妻の我儘にも対応してもらう。 でも、他の貴族では持てないパイプだからそれぞれの家は頑張るだろう・・・。 マゴマゴの為に、それぞれの祖父母には頑張ってもらう。
時期を置いて、里帰りも計画中だ。
「子供の事が落ち着いたから次を考えよう。 育児も執政も。」
「まずは子供の生活しやすい環境づくりかな?」
出産が落ち着いたが、執政は途切れない。
今の新辺境伯領の運営を続けた。 生産品も、運営も現状はうまく行っている。
安価な生産品も増えたことで、民生も活発になった。
「領地も落ち着き、領主様のお子も無事にお生まれになり、母子ともにお元気とくれば、民の気持ちも上がります。 良かったです。」
「何もないどころか、瓦礫だらけだったここをよくぞここまで・・・。 感謝しかない。」
「ですが、領主様のご苦労もありましたからな。 自明の理でございますな。」
「ありがとう」
「はっ!それよりお子様にお会いしないのですか?」
「実はまだ会いに行けないんだよ。 子供もそうなんだけど、母体である彼女達もまだ体力が回復していないらしくて、向こうが声を掛けるまでは、来ないでくれって言われてね。 仕方ないさ。」
「・・・。 お疲れ様です。」
マサルの会いたくても会えない悲哀を感じたらしく、労われた。
マサルの気持ちとは、別に領地は順調に進んでいくのだった。
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