アバロン領移転 昇爵・・・。 おいしいの?
少し題名がふざけたようになりましたが、ふざけてはいませんよ?
真面目にしてます。
戦争後、アバロン領は整備隊と補給隊以外は療養と体を適度に動かすくらいに留めた。
それはマサルも同様で、書類仕事はしているが、休むことを主眼を置いた。
「こうして、ゆったりと書類仕事をしている事は何気になかったなぁ・・・。」
「そうですね。 私もそう思いますわ。」(領主様との二人きりの仕事が、とても愛おしいです。)
ジョアンナは領主舘の執務室で、マサルと領内の陳情の書類の処理とトールハンマーの被害と消耗品の報告書を読んでいた。 しかし、今回のようにゆっくりとしている事は今までにはなった事を幸せになってしまう。 やはり二人きりは、独占している気分になれるから。
「もうしばらくはこのままでいたいよ・・・。」
「そうは出来ない様だぞ。」
「えっ?」
執務室に手紙を持ったユリーダが入ってきた。
顔は残念そうであったが、多分いい事だろうと思っているらしく、少し笑っていた。
「・・・。 領主様?見ないのですか?」
「なぜか、嫌な予感しかしない・・・。」
「でも、見ないと先に進まないですよ?」
「ですよね・・・。」
仕方ないが、執務机にあるペーパーナイフで封を切り、開封して読む。
そこには王宮に来るようにという招聘命令と爵位を上げるから取りに来いという話だった。
そこまでしか書いていなかった事が逆に不安を感じた。 その旨は話さずに手紙に書かれた事を二人に伝えた。 ふたりはとても喜んでいた。
「そうか!おめでとう!これで上級貴族の仲間入りだ!」
「そうですね。 上位貴族でないと、出来ない事もあります。 まずは良かったです。」
「そうだね。 ありがとう・・・。」
「何か気になることでも?」
「なんとなく、呼び水しか書かれていないように感じたからさ。」
「・・・。 なるほど・・・。 確かに打ちそうな手ですよね。」
「しかし、ここで疑ってもどうにもならないし、きりがない。 やはり行くしかないか・・・。」
「そうですね・・・。 宰相閣下が何か企んでいそうですが・・・。 仕方がありません。」
結論はやはり向かうしかなく、謁見開催日が5日後に王宮で行われると、書かれているためにそれに合わせて、マリアとジョアンナを伴って向かう事になった。
「やはり行かないといけないか・・・。」
「そうですね。 ですが、我らもいますので一人ではありませんよ。」
「そうだぞ!旦那様!出世することは良い事だ!大変な所は皆でやればよい!」
「・・・。 そうだよな。 うちらはそうしてきたものな・・・。」
「?そうだぞ。」
そうなのだ。 今までも大変な事はあった・・・。 でも、それを乗り越えてきたのだ。
今回もきっと乗り越えられる・・・。 マリアの言葉にそう強く感じた。
すると、気持ちが晴れ、顔を上にあげられた。
「よし!行こう。 新たな門出に。」
「「はい!」」
こうして、待機室で新たな決意を示していると、ドアをノックする音がした。
応対はマリアの侍女のメイドであるダリアさんに対応してもらった。
「旦那様。 用意が出来たそうです。 御案内して頂けるとのことです。 ご準備を。」
「ああ、ありがとう。 行こうか。」
「「はい。」」
謁見の間に向けて、案内をされる。
すれ違う人達は、皆マサルに頭を下げた。 感謝をするように。
「なんかみんなが頭を下げているんですが・・・。」
「それはそうですよ。 帝国と蛮族連合を二つとも叩きのめした功労者で、帝国の姫君を妻に迎え、我が国の貴族の御息女様方を側室に向かえた元公国の士官様。 これだけでも大きな功績です。 それどころか、部屋住みの方々も登用して下さり、我が国の経済再建にも寄与して下さっているのです。 感謝をするのは当たり前です。 私の兄も貴方様の領地で、奉職しております。」
「そうですか・・・。 して、何の仕事を?」
「補給に関する部署ときいております。 忙しそうですが、楽しそうな兄の手紙は私も嬉しかったです。 本当に家にいた時の兄は可哀そうでしたから・・・。」
「そうでしたか・・・。 貴重な話をありがとう。」
「いえ、それではここからは私はご案内が出来ないので、失礼します。」
「ありがとう」
お礼を伝えると、メイドさんは一礼をしてきた道を戻っていった。
その後ろ姿を見送ったのちに入り口の衛兵さんが声を掛けてきた。
「マサル様。 よろしいですか?」
「ああ。 ありがとう。 頼みます。」
「かしこまりました。」
衛兵さんが、うちらに一礼したのちに扉をノックをすると、向こうからもノック音が聞こえた。
どうやら応答の合図の様だ。 それを確認すると、衛兵さんがこちらを見た。 私が頷くと、衛兵さんが2人でその大きな扉を開けた。
「アバロン領領主!マサル・アバロン様!ご正室!マリア・アバロン様、ご側室、ジョアンナ・アバロン様御入来されます!」
呼び出しの声にすでに待機をしていた貴族や軍人たちが、拍手で出迎えられた。
一様にマサルの事を歓迎をしてくれるようだ。
マサル達も広間の中心付近まで進んだところで、頭をさげ、名乗った。
「アバロン領領主、マサル・アバロン。 仰せによりまかり越しました。」
「マサルが妻でマリア、御前に。」
「同じくマサルが妻、ジョアンナ、御前に。」
3人が傅くと、王が手を上がると、全員が王の方を向く。
式が始まる合図だ。
「この度の活躍、嬉しく思う。 不可能共、思われた事を達成・貢献してくれた事はこの上ない程の誉れじゃ。 褒めて遣わす。」
「ありがとうございます。 戦中・戦後の処置に協力して頂けた際、とても心強く感じました。 ありがとうございます。」
「うむ。 役に立てて、良かった。 さて、今回は貴殿に報償を与えようと思う。 良いか?」
「はっ!ありがたき幸せ!」
「では、宰相。 任せた。」
「はっ。」
王より引き継いだ宰相は、おもむろに懐から一枚の封をした書状をだして読むためにマサルを一瞥した。
マサル達は傅いているために見ていない。 それで書面の文言を読みだした。
「マサル・アバロン。 貴殿は今戦いに対し、今まで以上の国への貢献・努力をしてきた!国は貴殿の活躍と功績に対して、二つの褒美を与えるものとする!
一つ、爵位を昇爵して、辺境伯とする!
一つ、我が国が占領した帝国南部の土地を領地として、引き渡す。 なお、旧領地は国に返還するものと する。
以上。 受け取られよ。」
「はっ!ありがたく頂きます!」
再び、封が施された書状を渡され、受け取ると再び大きな拍手が沸いた。
新たな爵位の誕生とその就任を祝して・・・。
その後は、功績のある方々の報償の引き渡しが行われた。
式が終わるまでは、表彰される側のいる場所にいた。
全員が終わるころに一人の貴族が大きな声で異論を述べた。
「異議あり!マサル殿の報償が高すぎるのだが!」
「貴様はあれほどの手柄をどう報いるつもりだ?」
「私なら領地は直轄地にして、爵位は永世爵位にすればよろしいかと。」
「その程度ではどうにもならんぞ?貴様が支払うのか?」
「それは・・・。」
「それではお主が支払うがよい。 但し、マサルの言い値を支払う事を厳命する。 分かったな?」
「それは・・・「分かったな。」・・・はっ。」
こうして異議を唱えた侯爵は、王命で自腹を使ってアバロン領の報償を支払う事が決定した。
しかし、アバロン領の経費は他領地よりも膨大な資金がかかる。 それを知っている王はその支払いを侯爵に擦り付け、厳命した。 多くの貴族や大臣がいる前で誓わされた事で、支払いは免れない状態になった事。 多分、侯爵の資産全ての譲渡をしても無理であるから裸一貫で追い出されることも決定し、家族全てを質に入れても払えない程の負債を抱えて倒れる事をほくそ笑んいた。
「では、マサルは彼に請求しなさい。」
「分かりました。 よろしくお願いします。 侯爵殿。」
「うっ、うむ。 任されよ。」
こうして、アバロン領の戦闘に掛かった経費(車両修理代・怪我の治療費・諸経費)を請求した。
しかも経費だけでも他領地の2.5倍の経費が掛かる。 その為、支払えることもなく、まず領地を返上することで、まずは全体の八割を支払った。 その後、屋敷や別宅、自宅の美術品や宝飾品は元より家の金銭も払いだしたが、それでも9割五分程度でしかなく、自分の傍流の娘をマサルに半分奴隷の様な扱いで引き渡した。 これで経費が支払えたが、報償となると、出せず。 とうとう他家に自分の幼い息子や娘を売り渡したりして作ろうとしたが、王宮にばれてしまい、爵位を没収。 幼い子息たちは絶縁した上で王家預かりとなった。 これにより侯爵家は消滅。 その親派も大きく力を落とす形で終わった。
「侯爵家の娘はどうする?確か14歳と言っておったが。」
「ひとまずは官僚として働けるように教育をして、独立させますよ。」
「まあ、妾にしてもよいぞ。 そうなれば、侯爵派を取り込めるかもな。
「さすがにそれはありません。 ただ、頑張っているので教えがいがあると、教育係が言ってました。 彼女の両親はどうなりました?」
「奴らか・・・。 すべてを奪われた事で、仲が良かった者の所へ行ったが、王宮での行動が響いてすぐに追い出されたらしい。 その後は知らんの。」
「そうですか。 まあ、良いですがね。 彼らが接触しないようにします。」
侯爵家が経費しか支払えない事により、侯爵領の権利全てを引き渡す代わりに最初の報償を受け取ることになった。 権利や地券等のものは失ったが、財貨は手にいれた。
それが報償の一部で受け取ることになった。
マサカツは辺境伯として元帝国南部に着任する事となった。
結果として、侯爵家のお金をそのまま頂けたので、おいしいだろうと思う。
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