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撃鉄の響く戦場にて  作者: KY


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54/109

合流 そして・・・

今年度も数えるほどになりました。

皆様にとって、本年は良い年であったと思えることを願いたいです。

報告を受けてから数日たち、作戦を実行中だった部隊が帰還し始めた。

最初は軽装甲のジープを先頭にトラック群が続いた。 数にして30台。 そのそばを馬車や護衛も兼ねた騎士と兵士が歩いていた。

その日はさらに50台の車両が帰還したが、最後尾の部隊はまだ来ないとの事。


「今日は流石に来ないか・・・。」


「そうですね・・・。 航空隊の報告だと、次の部隊は明日の夕方に就く距離にいるそうです。」


「分かった。 今日は休もう・・・。 姫騎士殿?」


「我は・・・。 われはここにいる。 もしかしたら来るかの知れないから。」


「・・・。 分かりました。 あの車両をここに持ってきてくれ。」


「ん? あれですか?分かりました。 物資を積んで持ってきます。 少々お待ちを。」


ジョアンナがどこかに通信をして、一時間後に大型トラックがやってきた。 帝国育ちの姫騎士殿は驚いていたが、マサルは気にすることなく、一つの扉を開ける。


「領主様!ご要望通りのキャンピングトラックをお持ちしました!」


「うん。 ご苦労。」


「はっ!それでは失礼します!」


トレーラー内にいた若い兵士に答礼で答えると、彼はそのまま、去っていく。

彼女は恐る恐るトレーラーに乗り込んできた。


「何だここは?!家なのか?!」


「うーん。 正確には少し違うな。 これはキャンピングトラック。 私個人が欲しくて手に入れた物だよ。 車両でもあるから移動もできる。 当然、キッチンや寝室にトイレ、リビングに入浴設備もあるから数日程度ならストレスなく過ごせる。」


「これほど快適なら我は一月でも平気だぞ?しかし、ここに泊るのか?」


「そうだよ。 一人で木の下で野宿は辛いだろ?」


「えっ?我と一緒にいてくれないのか?」


「可笑しいだろ?君は女性で、俺は男性。 分かる?」


「我は捕虜だ。 何をされても文句は言えないし、言わない。 何をされても受け入れるぞ!」


「何、嬉しそうにしているかは予想付きますが、言いません。 が、説明しないとトイレも行けなくなりそうだから、説明しますよ。」


そのまま、姫騎士殿はトラックのベランダ部分で双眼鏡で避難してくる民を探した。 マサルもトラックのリビングで執務をして過ごした。

そのまま、数日が経ち、応援で再び出撃したトラック隊の大部分が帰還した頃に航空隊より待望の無電が来た。 


『最後尾の部隊を捉えました!増援を!敵の追撃隊が追いすがってます!』


『こちらホームベース了解。 先頭車両部隊を派遣する。 航空隊にも準備命令を出した。』


『了解いたしました。 部隊の現在地を報告し続けます!』


『よろしく頼む』


報告を受けたアバロン基地は、警報が鳴り響き、隊員や整備兵、警備兵とはずハチの巣を突っついた様に大騒ぎになった。 そして、兵員輸送車・軽戦車・装甲車を中心に機甲部隊が編成され、一路しんがり部隊の元へ急いで飛び出していった。 遠くからの爆音は、航空隊のスクランブル発進の音も響いた。


「英雄を死なすなよ。 頼むぞ、皆。」


「お任せください!行ってきます!」


ひとり愚痴っている横をユリーダの編成したと思われるジープとバイクのラットパトロール部隊までも出撃していった。 車両50台にバイクも20台は出撃していった。


<最後尾の部隊>


最後尾の部隊も装甲車や軽戦車を盾に撃ち返していたが、いくら弓矢であっても数があれば、やはり脅威であることは変わらない。


「畜生!あいつらどんだけ叩けば、下がんだよ!弾くれ!」


「はいどうぞ!これであと一個です!」


「くそ!あぶねぇ!」「ぎぁぁぁぁ!」


「衛生兵!どこだ!?」


「今、通信で航空隊がもう少しで上空に来るそうです!」


「なら言っとけ!俺らの前方を叩いてくれと!」


そういうと、通信兵が返事をしないうちにストロボとスモークを投げて、自軍と侵攻軍を分けた。

それを確認した航空隊から通信が来る。


『今、確認した。 頭、低くしておけよ?』


『アホな事を言う前に何とかしろよ!』


『任せておけ。』


そういうと、爆音と共に陸攻隊が侵入し、投弾した。 狙いはたがわずに侵攻軍を捉えた。

連続する爆発音で、多くの騎馬兵を馬ごとどころか、地面も纏めて吹き飛ばした。 陸攻隊の後に汎用機と戦闘機隊のピンポイント爆撃で、さらに被害を出した。 それでもなお、攻撃を行おうとした所で、機甲部隊が追いついた。 そこからは殿部隊を包む様に両脇から撃ちまくりながら回り込んだ部隊が、弓と単発銃しか持っていない侵攻軍を蹴散らした。 機銃の乾いた音の後に37や45ミリ砲が火を吹いた。 その他の各種兵器が火を吹く中で殿部隊に滑り込んだ衛生隊によって重傷者が運び出され、輸送トラックに乗り換えて、一路アバロンへ移送された。

機甲部隊が殴り込んだことで、完全に形勢は逆転した。

ここまで来てとうとう侵攻部隊も無理と判断し、退却していった。


「ふう、やっと来たぜ。 助かったぁ~。」


「そうですね・・・。 人心地つけます。」

 

「助かって何よりだ。 平気だったか?」


「これは隊長・・・じゃなくて指令。 お出迎え感謝であります。」


雑談途中で声を掛けてきた女性に最年長である隊長が敬礼をしていた。

しかも指令だというと、兵士達は急いで敬礼した。 そんな彼らに答礼すると、気合が入った顔になったのだった。


「任務遂行ご苦労。 して、結果は?被害は?」


「はっ!結果は成功であります。 当該領主様ご一行を始め、そこに住まわれる住民の退去も完了し、希望者の冒険者や他領地出身者も退去しました。 また被害は最後尾の部隊のみで3名が落命し、怪我人は20名であります。」


「・・・。 そうか。 3名が犠牲になったか・・・。 遺体は?」


「それは・・・。 追撃を受けていたこともあり、回収は出来ませんでした・・・。 申し訳ありませんでした。 しかも彼らの戦死は確認が出来ておりませんが、彼らの脱落後に爆発音が聞こえました。 恐らく自決をしたものと・・・思われます・・・。」


「・・・。 そうか。 辛い事を思い出させて申し訳ない。 基地に着いたらメディカルチェックを受けたのち、休んでくれ。 ご苦労だった。」


「はっ!ありがとうございます!」


最後尾の部隊が使用していた車両は損傷している車両がないほどに損傷し、破損している個所も多く見られた。 その分、兵員の被害を抑える事が出来たようだった。

最後尾の部隊はほぼ全員が、包帯やボロ布で体の至る所を巻かれており、満身創痍の状態であったらしい。 幸いなことに先に撤退した部隊が、後方の部隊に弾薬・物資を置き土産をしたことで、後方部隊は回収・使用を繰り返すことが出来たようだ。 重傷者は衛生隊が全員連れてってくれたために車両内は、自立歩行ができるか、少し引きずるようになるが、歩けるものが残った。 

今は両サイドに砲門を後ろに向けた戦闘車や兵員輸送車が機銃を構えた状態で、攻撃に備えた。 その上で航空隊の足の長さを利用して上空監視をしている。 戦闘機や汎用機は基地に帰還して待機をして、追撃に備えた。


「やはり仲間が倒れる報告を受けるのは、良い物ではないな・・・。」


「はい。 やはり辛いです。 まして、遺体が回収できないとなると、さらにです・・・。」


「ひとまず領主様に報告だ。」


「はい。」


マサルに救出成功の通信をうつと、ユリと乗っているジープの後ろに座り、殿隊を含めて先導するように進むのであった。

 一方、通信を聞いたマサルは姫騎士殿にも教えると安心からか、座り込んでしまった。


「良かった・・・。 良かったよぉ・・・。」


「姫様・・・。 良かったですね・・・。」


「うむ。」


主従の互いに喜び合う光景は良いものだ。

ジョアンナと共にしばらくは好きにしてやることにした。

その間もやることはあるからだ。

避難民の衛生チェックや食事や寝る場所の確保などある。 それから落ち着いたのは数時間後だった。

落ち着いて数時間すると、最後尾の部隊が帰還した。

車両や兵士達はそのまま病院(ドッグ)行きとなり、避難民らは降ろされた。 が、領主らしき人はおらず、姫騎士主従も慌てた。 それ以上に慌てたのはトールハンマーの面々で、どこかに置き去りにしたのかと、捜索隊の編成も考えていた頃に一人の兵士が、一人の女性と10歳程度の子供を伴ってきた。


「領主様!領主様にお会いしたいという女性をお連れしました!」


「今はそれどころではない!急ぎ、捜索隊を編成せねばならん!領主殿をさがs・・・「私はここにいますよ。」・・・へっ?」


「母上様!」「領主様!」


いち早く気づいた姫騎士主従が、姫騎士が抱き着いた。

気付けば、さっきまでトラックに乗っていた人々も跪き、彼女の方を向いていた。


「えっ?いつ、こちらに来ておられたのですか?最後尾の方々は?」


「それについては、私が直接話します。」


女性領主でもある彼女によると、最後尾の避難民さんは領主舘の使用人の方々で、領内の避難を確認していた為に最後になった。 最後の便で領主様も退去すると、言い張ったようだが民を安心させて欲しいと、中ほどの便に護衛の女性騎士達と共に姫騎士の弟妹達と送り出されたらしい。 使用人さんは各村の避難を確認したのちに同じ任務をこなしていた者と屋敷の整理をした者とで、最終便に飛び乗ったらしいかった。 領主様はあえて身分を明かさずに幼子を連れた母親として、チェック等を受けたらしい。

そこでマサル達の手厚い医療処置や食事、入浴等の世話をうけ、トールハンマー側の対応を見ていたそうだ。 


「それでどうでした?我らの対応は?」


「これ以上ないほどの対応でした。 怪我人どころか、病人まで医療を頂き、我らに糧と服、寝る場所も用意をしてくれた。 命が助かっただけでもありがたいのに・・・。」


「ですが、貴方の領地はなくなりますよ?」


「土地は逃げません。 いつかは取り返せばいい。 ですが、命は違う。 消えたら戻せません。」


「ごもっともです。 ひとまず皆さんが生活できる場所は時間がかかりますが、用意をします。 暫しの辛抱をお願いします。」


「分かりました。 皆に伝えます。」


「よろしくお願いします。」


こうして、姫騎士殿の関係者の救出作戦が終了し、今後についての話し合いと住み分けの段階へと、進んでいくのだった。

しかし、それはうまくはいかなかった。

彼等の元祖国である帝国が、獣王国に対して姫騎士共々の全員の引き渡しを要求したからだ。 当然、作戦の立案から実行まで行ったマサルも犯罪者として引き渡すようにと、要求をされた事が獣王国側の使者から伝えられた。


「そうか。 俺もとうとう来たか・・・。」


「はい。 中々の情報収集ですね。 ですが、殆どが帝国側だそうですが。」


「では、行きますか。 引き渡しは決まったのですね?」


「何を言っておられるのですか?貴方を引き渡す訳ないでしょう。 恩人なのに。」


使者の意図していなかった答えに面を食らっていると、使者の男性が言葉を続けてきた。 さらにその言葉に呆然としたのは、マサルだった。


「王宮は貴方どころか、姫騎士様方すら引き渡すことを拒否しました。 まあ、恫喝はありましたが。 ですが、恩人を売り渡すほど我らも薄情ではありませんし、あ奴らも嫌いです。 だから意表返しに貴方様にお願いがあります。」


「なんでしょう?」


「王よりの要請です。 マサル殿に姫騎士殿を妻に、正室に迎えて頂きたい。 無論、今まで支えてきたジョアンナ嬢、ユリーダ嬢、ユリ嬢にエリザベル嬢も側室として娶って頂きたい。とのことです。」


「はあぁぁぁぁ!?何言ってんの?!いや、何を言っているんですか?!今それをしたら、全面戦争になりますよ!!良いんですか?」


使者から伝えられたのは、いま付き合いのある女性全員を自分の妻に迎えろという命令。

意味が分からないどころか、それこそ全面戦争になりかねない判断を要請してきた王宮に気が触れたかとも思ってしまった。 それを使者は切り返してきた。


「確かにそうです。 ですが、救出作戦ではなく、お披露目に対しての招待ならどうですか?」


「えっ?なんで知って・・・。 偵察部隊か。 しかし、それは・・・。」


「無理はありますが、不可能ではないはずだ。 姫騎士殿をはじめ、女性陣の結婚の為に母親の領地の民も無礼講で呼んだ。 だが、家が侵略されたためにアバロン領に留まっている。と、これでわかります?マサル様。」


「流石にそこまでの暴論は出せませんでしたよ。 すごいな。 王宮は。」


「実は別室で全員を呼んでおり、説得しています。」


「へっ?えぇぇぇぇぇぇ!どうして?いや、手廻しが良すぎでしょう・・・。」


「善は急げです。 決断を」


「マジか・・・。 ここまで急に流れが変わるとは・・・。」


マサルは手で顔を覆い、空を仰いだ。

彼女らに好意がないと言えば、嘘だが彼女らがそれを承服する自信はなかった。

別室では少し違う事が起きていたが、この部屋でも一人の男が、身の振り方を考えていたのであった。

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