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撃鉄の響く戦場にて  作者: KY


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新たなる敵

メリークリスマス!

なんとか投稿が間に合いました。

良いクリスマスを迎えている事をお祈りしております!

アバロン領の直接攻撃から数日、捕虜だった彼らはほぼ全員がそのまま残留を望んだ。

帝国領に戻っても職も住処もない者が殆どだからだ。


「姫騎士殿は戻らないのですか?」


「そう邪険にしないでほしい。 それに戻っても戦犯で幽閉が良い所で、悪ければ処刑だ。 ここに居れば、捕虜ではあるが、命の危険はないからな。」


「そうですか・・・。」


「そのまま領主殿の妻にしてもらえれば、いつまでもいるぞ?」


「なぜそのような条件を出してきたのかは不明ですが、捕虜という自覚あります?」


「うーん。 結構本気で言っているぞ。 私の体は悪くないと思うが?」


そこは正直言ってかなりストライクゾーンだった。

痩せすぎでないが、筋肉質な体でありながら女性らしい丸みのある体で出ている所は、はっきりと出ているのであるから仕方がない。 でも、捕虜でもある彼女を傷をつけるのは、まずいために手を出さない。


「流石に無言は辛いのだが・・・。 いつでも待っているからいつでも構わんぞ。」


「・・・。 ありがとうございます。」


「うむ。」


そんな会話をしていると、兵士の一人が近づき、マサルの耳元であることを伝えた。

その事にマサルは目を見開いて、兵士を見た。


「それは本当か?」


「はっ、詳しい事は執務室でとのことです。」


「・・・わかった・・・。」


兵士の案内で、執務室へ戻るとユリーダやユリ、ジョアンナが待っていた。

少し厳しい顔をしているのは、状況の変化から厳しい顔をしていた。


「またあの女にうつつを抜かしていたのですか?」


あれ?状況の変化でではない?怒りの方向は俺?


「・・・。 何か知らないけど、怒っている?」


「「「別に。」」」


完全に怒っているじゃん・・・。


「状況報告をしてもらえる?」


「・・・。 まずは帝国の状況です。 度重なる遠征の失敗と未帰還兵の増加で国境線の守りが薄く、狩りと遊牧を生業としている外部民族に国境沿いを侵攻されており、略奪と誘拐も発生しております。 当然の事ですが、これに中央が対応できず、地方に不満が高まっています。 中央の、正確には王宮サイドですが、姫騎士殿の血筋をエスケープゴートにしようと、画策をしている所です。」


「なんだって!どういう事なんだ!私の、母上や弟妹達が命を狙われているのか?!」


「正確にはあなたの母上様達を含めた領地の方たち全員です。」


「そんな・・・。 今回の遠征失敗の件か?」


「はい。 王宮はあなたの一族を消すことで怒りを逸らそうとしてます。」


「ううう・・・。 あんまりだぁ・・・。」


立ち聞きしてしまったが、内容がないようなだけに飛び込んでしまった姫騎士侍従。

そこで冷たく言い放たれる母たちの運命に姫騎士は崩れ落ち、さめざめと泣き始めてしまった。

ジョアンナは静かにマサルに近寄り、ささやいた。


「あの計画は伝えなくて良いのですか?実行中ですが。(小声で)」


「潜入部隊の作戦成功の報告もない状態では、変な期待はさせるのは彼女の精神保持にも関わる。 まだ伏せておく。(小声で)」


「かしこまりました。(小声で)」


そこまで聞くと、ジョアンナは立ち上がり、ユリーダやユリにアイコンタクトで伏せておくことを伝えると、二人も首肯定した。 

マサルは冷たく言い放つように姫騎士に伝えた。


「ここは我らの中枢決定を行う場です。 部外者は出て行ってください。」


「それは冷たくないか・・・?我らの血筋が・・・「それは我らに関係がありますか?」・・・えっ?」


「あなたの国がどうしようと、こちらは知りません。 ですが、降りかかる火の粉があるなら対応しなくてはなりません。 退室を。」


首肯定をすると、入り口に立っていた兵士の一人が、扉を開ける。

そこから数名の女性兵士が傍にやってきたが、姫騎士殿は立てなかった。 いや、立たなかった。

真相を知るために。

意を決した顔で、マサルの顔を見た。


「領主殿。 頼む・・・。 どんなことでも良いからここに居させてほしい・・・。」


「・・・。 心を深くえぐられる事を聞くかもしてませんよ?あまりいい物ではないと思いますが?」


「それでも・・・それでも聞く必要がある。 聞いておかないと、後悔をすると思うから・・・。」


「分かりました。 せめてそちらのソファーにお座りください。」


「すまない。 続けてくれ。」


状況を説明していたジョアンナに首肯定で伝えると、さらなる状況説明が伝えられた。

状況はかなり悪く、領地の防衛兵力と義勇兵を招集しても敵は数倍の兵力があり、防衛拠点に民のすべてを収容することは不可能で、全体の2割の民が最低でも犠牲になる事実と籠城しても食料が一月ほどしか持たない上に戦い方を工夫をしても3か月は持たない事、侵攻している民族は女性が足りない事もあり、多くの若い女性や少女は、誘拐対象であることと、本国からと近隣領主からの救援は、出されない事がすでに決まっている事も伝わった。

 そこまで伝わった所で姫騎士殿は、ほぼ泣き始めた。

いままで母に頼ったりしていた者たちが、侵攻した敵に救いの手を差し出さない事を知った事と、その絶望的な状況の中でも立ち向かわないといけない者たちの顔を思い出し、むせび泣いた。


「母上・・・。 ロイ、スザンナ・・・。 許してくれ・・・。 我は、我は・・・。」


「姫様・・・。」


「ロイとスザンナという方は、幼馴染の方ですか?」


「違う。 私の幼少の時の世話係の夫婦だ・・・。 私が5歳の時に17歳の夫婦だ。 私が育児の練習を兼ねて、世話係になった。 その一年後に生まれた娘が、母のおつきメイドになっている。」


「そうですか・・・。」


話が終わると、ソファーにもたれかかる様に寄り掛かった。

状況が知る限りで、生き残れる状況ではない。 世話係の夫婦は殺され、その娘は孕袋にされる可能性が

出ている事に絶望した。 状況をしるメンバーは教えては?と、言う顔で見る。 マサルもジョアンナを見ると、彼女も首を縦に振った。

意を決したマサルが、姫騎士に話しかけた。


「騎士殿、少し報告があるんだが。」


「身内が虐殺される未来しか見えない状況しかないのに、なんの報告だ?」


「・・・。 実は今回の件で大規模移送計画を立案・実行中だ。」


「へっ?何を言っているんだ?」


「ここまでいって分からないか?作戦実行地域はあなたの母君の領地だ。」


「本当なのか?助かるのか?」


「・・・。 そこは分からない。 作戦はみずものだ。 成功率は悪くない・・・と、だけ言っておく」


「本当なんだな?ありがとう・・・。」


「それは成功してから言ってくれ。」


「それでもありがとうと、言わせてくれ。 望みがあるだけでもうれしい」


先ほどからしても血色の戻った姫騎士殿が、今できる限りで笑顔で答えてくれた。

しかし、すべてがうまくいくはずもなく、潜入部隊本部から緊急電が入る。 この執務室は、通信内容を聞くことが出来るようになっていた為に執務室スピーカーから内容が判明した。


「潜入部隊本部よりホームベース!避難民誘導部隊の最後尾が、発見された!」


「状況は?兵力はわかるか?」


「兵力は歩兵と数騎の騎兵だ!全員、射殺したが、信号弾を上げられた!すぐに後続が来る。 車両部隊の投入の許可を!」


「了解。 車両部隊の投入を許可する。 避難民の迅速なる誘導を頼む。」


「了解!努力する!通信終了!」


乱暴に切られた通信を聞き、マサルが溜息をつきながらゴチる。


「やはりそううまくはいかんかったか・・・。 しかし、ここまでうまくいっていたんだから上出来か?それとも向こうがザルだったか・・・。 どちらにせよ。 前線の者達の奮闘に期待しよう。」


「彼等なら平気です・・・。 古株の連中を中心に編成しました。 やってくれます。」


「・・・。 そうだな。」


「母たちや民は平気か?最後尾が見つかったそうだが・・・。」


「彼らはやってくれる。 今は信じて待つしかない。」


「分かった。 期待しよう。」


そういった姫騎士殿は少し気丈にふるまってはいるが、手や体は少し震えていた。

やはり不安があるのは、分かっていた。 しかし、今は彼らに期待をするしかなかった・・・。


『お前たちならやり遂げてくれる・・・。 信じているぞ!』


マサルは心からそれを信じることにした。

隊員の奮戦を期待して。

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