帝国の思惑
少し短めになりました。
スイマセン。
帝国王宮にて
「我が国の復旧はどうか?」
「はっ、全行程の半分ほどです!ご安心を!」
「嘘つけ!儂の所には3割ほどしかなっていないと来ているぞ!」
玉座に座った皇帝と思われる男性は、持っていた杯を報告していた男に投げていた。 杯は金属音と共に床を転がり、部屋の隅の方へ転がっていった。
「獣王国はアバロンとかいう街で生産される物資で、立て直していると聞く・・・。 ならば、その街を潰してしまえばよい!戦じゃ!アバロンとかいう街を潰してこい!」
「陛下。 さすがに無理です。 軍も半分以上が、被害があり、兵員・物資共に足りずに再編成が、出来ておりません。 保証の問題もあり、今動かすのは危険です。」
「ならば、無事な部隊を集めてそこから編成すればよい!急がせよ!」
「そっ、それではさらなる防衛力が下がりますぞ!また敗れでもしたらどうなされる気ですか?!今は国力の回復を優先させるべきです!」
「五月蝿い!ならば、実験部隊も投入せよ! 敵の鉄車に対応できると、申しておったであろう?」
「それはあくまで性能の問題で、戦場では未知数です!ご再考を!」
「ならん!儂は命は伝えた!急ぎ取り掛かれ。 解散!」
皇帝と思われる男性は、それだけを伝えると退出してしまう。 宰相と思しき男性が、慌てて追いかけたが、振り返ることもせずに帰ってしまった。
皇帝たちが去った広間では、残された貴族たちが互いの意見を述べていた。
「また戦となれば、儂らも出ねばなるまい。」
「先の戦いで、儂は兄と二番目の息子を失ったのに保証もない・・・。 今度は下の息子達か儂かのう?」
「わしの家は従者の数家が、当主と跡取りが戦死した。 このままでは、従者の家人がいなくなってしまうのに・・・。 どうしたものか」
広間にいる貴族よりもその周りにいる兵士の方が、気が気でならなかった。
彼等は前線に配置をされれば、それだけ戦死の確率が増える。 そして願った。 自分の部隊が侵攻軍の再編成部隊の一つにならないようにと。
「しかし、アバロンには多くの物資を含め、守備隊の兵器もあるという。 一概に利益がないというわけでは無いようにも感じるが・・・。」
「お主はその前に立ちはだかる傭兵団を忘れておらんか?情報では先の簡易訓練受けた兵士3000名がそのまま、編入したと聞いている。 それにより4000名を数えていると聞く。 容易ではあるまい。」
「それは・・・。」
「しかし、あの秘密部隊が出るというし、太刀打ちできるやも・・・。」
「それはどういう意味ですかな?」
「!? スミス卿!いや、別に・・・。」
「我らの部隊が、太刀打ちできないとでも?失礼ですぞ?」
「いや、すまぬ。」
「分かって頂ければ、よろしいです。 では。」
「くそ、クソガキが」
貴族達の会話に割り込んだのは、30代という若さで貴族籍を手に入れた帝国の秘匿部隊の長。
スミス・フォン・ロンフォ伯爵。
帝国で早くから火薬兵器に手を出した軍人で、開発をしていたが従来兵器に固執した貴族からの横やりで何度もとん挫をした末にこれまでの敗戦の原因が、火薬兵器によるものであることを皇帝に説き、戦況打開の一手として、貴族籍と研究設備を手に入れた。 しかし、新兵器を手に入れながらも使用する貴族軍はなく、前線の国境警備隊や平民出身の部隊が持っているのみで、それも定数にギリギリ届くが、弾は貴族側の横槍で、調達・製造共に足りず、一丁辺り10発という制限を設けるしかない状況が続いていた。
「閣下。 あ奴ら消しますか?」
「するな。 まだいて貰わねばならない。 彼らがいなくなった時が、我らの兵器の真価が出た時だ。」
「ですが、それが出る頃には、我らがすり潰されている可能性もあります。 行動は早い方が・・・。」
「・・・。 確かに。 だが、こちらが仕掛けると、闇に我らが葬られる可能性がある。 向こうに付くにしても手土産を用意をせねばならんし、続けるにしても舵を気を付けて取らねばならん。」
「心労、労い申し上げます。」
「ありがとう。 さて、今日の課題に取り組むとしよう。」
「はい。」
退室後の通路を一人の副官を連れて進んでいくスミス卿。
帝国内で唯一の火薬兵器部隊が、出撃が下されたのはこの日より5日後だった。
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