防衛戦②
これから年末に入っていきます。
娯楽が少ない中で皆様は何を楽しみにしておられるでしょうか?
初日の防衛は、大戦果に終わった。
獣王軍も少しは溜飲が下がる思いもあったであろうが、戦線は膠着状態となった。
主戦のトールハンマーが、後方に下がって修繕・補修等の作業に追われ、前線に来れないために互いに弓や少ない火縄銃の撃ち合いで打ち合いと槍の叩き合いで、終わっていた。
「戦国時代の戦争だね。 効率が悪いよね。」
「指令の戦闘は、破壊力がありすぎるんですよ。 帝国でもあの程度ですよ。」
ジョアンナ副指令と双眼鏡で見ながら、戦況を見ている。
すると、使者と思われる集団が走り込んできた。
「傭兵団・トールハンマーに命ずる!すぐに戦仕度をして、我らに助力せよ!これは命令だ!」
当然、聞く必要はないので無視をしていると、剣を抜いて斬りつけようとしたために発砲。 乾いた音の後で倒れる騎士。
「この命令を出した上官に言え!我らに命令したければ、王の許可を貰ってからにしろと!次やったらそいつを殺す。 いけ!」
「覚えていろよ!」
騎士数騎が亡くなった騎士を乗せて、走り去った。
再び戦況を確認しているマサルに一言言われた。
「長引かなければ、良いけど?」
「あまりにも長引けば、去るのみだ。 馴れ合いはせん」
こうして、トールハンマーは独自路線で行くことが、なし崩し的に決まった。
いぜんとして、アバロンに良い印象を持たない貴族は、使い勝手の良い兵団と思っていた為に余計にイラついたらしい。 初戦で大きく手柄に差があり、ならばと利用することを考えたが、うまくいかなかった事で、手柄争いが過熱した。 それに巻き込まれないように動くことにしたトールハンマーは、まずは砲兵隊の装備に対する補修・修理を継続して行うことにした。
「アバロンの補給隊も到着し、物資補給をおこなった後、現場での修繕の困難な物を回収して負傷兵と共に進発しました。」
「うむ。 それで整備兵達が、テンションが高いのか。」
「もの作りは彼らの天職ですから」
補給担当の士官の前を様々な物資を持って歩き回っているドワーフ兵達は、故障兵器を集めた場所であちらこちらで弄繰り回して、兵器を外したり、取り付けたりしている喜々として。
「まあ、それでも全体の2割ほどしか復帰は出来ないと言ってました。」
「最悪は継接ぎで戦線復帰もやむなしか・・・。 まだまだだね。」
「しかし、それでも帝国軍の数倍の火力は保持できます。 補充兵も少数ですが来ましたし、これからですよ。 指令。」
「次は車両部隊が主戦かな。 砲兵は参加できる物だけ担いでいくか・・・。 ジョアンナに会うのが怖いよ」
溜息をつきながら歩いていくと、苦笑いをしながら敬礼して戻る士官に答礼して、自身も陣幕へ戻る。
陣幕の中で罫線能力の残っている部隊及び兵器の洗い出しをしている女性陣達の横を通り、自分の執務用の机にある書類に目を通し、サインをしていった。
「指令。 お戻りになられたんですね。 どうでした?」
「修理担当と補給担当の士官にそれぞれ報告を受けた。 兵器の復帰率は20%程度が限界で、継接ぎでもそれくらいの復帰率しか望めないそうだ。 修繕不可も1割ほどあり、現場修理が出来ない物もあって火力支援の5分の1が一回で消えた。 補給も継続して修理用の物も運んでくるように頼むそうだけれども工場から新品を運ぶことも同時に行うそうだ。 そちらも数が少ないらしい。 統合すると、砲門の補給は先細りになる。 食料と砲弾、弾薬は今の補給量は維持できると、報告を受けた。」
「しかし、残っている大砲もどうなるかわかりませんしね。 最悪は、火力支援なしの攻撃もあり得ますね。」
「しかし、貴族はそれをしろと、矢のように催促が来てます。」
「車両は?戦車等はどうなっている?」
「戦車はM4主体ですので、故障が少ないためにほぼ100%稼働してます。 装甲車は80%で、双輪式は戦車同様の数字が出てます。」
「砲門は?」
「榴弾砲はほぼ全滅に近い10%の稼働率。 野砲やロケット砲は50%。 迫撃砲はほぼ問題はありません。 最初からすれば、寂しくなりました。」
「2万近い兵を壊滅に追いやったから仕方がないな。 次の作戦は装甲車両を主体で。 火力支援はロケットと野砲で行う。 準備を。」
「了解しました」
それから二日後に、帝国への二回戦が、行われる予定の平原に移動を開始した。
戦闘の指揮用のトラックに乗ったままで、進んでいた。
指揮トラックを先頭に戦車、装甲車、ハーフトラック兵員輸送車の群れは、獣王軍にしたら異様な集団だった。 そして、獣王軍の陣地に行くと、それを待っていたかのようにやってきた。
「遅いぞ!何をしていた!さっさと我らの盾にならんか!」
「それより早く手柄を立てさせろ!本来は我らが立てるべきなのだ!」
もはや馬事雑言。
自分らが、中軍を相手に出来なかった事や手柄が立てられると思って、先軍に攻撃を仕掛けたが、遅滞戦術で、期待した手柄も立てられずじまいで、対峙するしかなかった貴族は、猛り狂った。
どの国も貴族は変わらないんだな・・・。
おくびにも出さずに貴族様に答えた。
「遅れて申し訳ありません。 準備に手間取りまして・・・。 では、我らが切り開きますので、皆様はそこを突破口に攻撃をお願いします。」
「うむ!良き心掛けだ!先陣を許そう!」
「はっ!ありがとうございます」
貴族との話し合いをした後で待機所に戻ってきたマサルを多くの兵士が、取り囲んだ。
「なんで、あのような言われ方をしたのに黙って従ったのですか!悔しくないのですか!?」
「そうだ!そうだ!」
「何だそんな事か・・・。 気にするな。 彼らも手柄が欲しいのなら立てさせてやろう。」
その後、兵士達との話し合いで兵もりかいをしたらしく、うなずいていた。
そして、悪い笑顔でそれぞれの車両に戻っていった。
そして、それから数日後の早朝にトールハンマーは配置についた。
「我々が敵の敵の中頃まで突破口を作ります。 そこから侵攻して、中から食い破ってください」
「分かった。 うまくやれよ!」
「はっ!」
そのまま、戦闘用の大型装甲車に乗り込んで、指示を出す。
「シャーマンは鏃陣形で。 装甲車はその隙間を埋めるように配置しろ。 兵員輸送車は車内から射撃をおこなえ!降車戦闘は行わない。」
「「「了解」」」
「進めぇ!」
徐々に矢のような形で、突撃を開始して進むシャーマンにその間を装甲車が隙間を埋めるように進んだ。 その後方を輸送車が、進む。 その輸送車の銃眼から銃をだし、攻撃を加えていく。 そして、トールハンマーが合図を送ると、トールハンマーが退いて、獣王国軍が入れ替わりで攻めていく。 彼らが待ちに待った手柄を立てるチャンスと、帝国国軍に噛みついた。 それこそ今こそという形で。
トールハンマーは支援のみの終始し、二回戦に間に合った陸攻10機も爆撃を行い、支援した。 これにより二回戦は獣王国側の勝利を勝ち取った様に映った。
先軍と後軍共に打撃を与えてることが出来た事で、獣人貴族も納得したらしく、追撃はしなかった。
終始、サポートに回った為に被害はなく、無事に撤退できた。
「とりあえずは勝利ですかね。 ですが、後方にまだ数万の帝国軍がいるとの報告もあります。」
「あちらは掴んでそう?」
「あの様子からして知らないと思われます。」
それぞれが宿営地へと退却し、警戒待機となる。
しかし、その後を知らない貴族側とトールハンマー側では姿勢が違った。
貴族側は宴会をしており、トールハンマー側は兵器の整備・点検をして次に備えていた。
「やはりあちら側は分かっていないようですね。 宴会しているような声も聞こえますし。」
「こういう場合は、偵察とか放っていないのかな?あっ、焦ったような騎馬が来た。 これは偵察かな?よかった。 定石をしている人がいた。」
この一報で、あちら側も大慌てとなり、陣幕内にいた幕僚や士官たちが、自身の部隊へ急いでいるのが見て取れた。 双眼鏡で。
これによって、もう一戦いや、2戦はすることが確定した。
「明日は何色の空になるかな?赤?黒?灰色かな?」
マサルの言葉が、闇に溶けていく。 そんな気がした。
これからもよろしくお願いいたします




