不審者?
今日もまだせき込んでいる体に鞭打ちながら頑張りました。
でも、頑張りはひとまず実を結びました。
ゴブリンの巣討伐から一月がたったある日、久しぶりにポイントを確認する事した。
≪クレジット残高≫
129800000クレジット
「おう?結構というより相当溜まってる?」
深呼吸してから落ち着いて考える。
連合を追い出された後で基地の建設。 ここでほぼゼロになったはず・・・。
ゴブリンの巣討伐?それで溜まったら苦労はない。
人が増えたから?まあ、最初の6倍は人がいるらしい。 新たに来た狼獣人の役人から報告を貰った。
後は輸送任務と教練くらいだった。
とりあえず溜まっているので、少し使用することにした。
まずは『基地の現代化』1億クレジット
電子機器完全配備を行い、連絡のタイムラグをほぼゼロにする。 警備システムも現代装備となり、赤外線やサーモカメラ、触感センサーが配備される。 防衛兵器の自動給弾装備とIDカードが人数分に配備され、セキュリティーレベルも設定できる。
次が『基地の近代化』5000万クレジット
近代兵器を配備され、各種電探、各砲台や待機所などの人が集まる所に内線電話を完全配備され、タイムラグを少なくした。 ピアノ線の様な細いワイヤーを使用した警戒用品を使用できる。
「・・・。 ここにきて、基地のセキュリティーは重要だからな。 ここは前回諦めていた最新装備にしようか・・・?いや、しよう!」
決めたら吉日で、すぐに使用した。
現代化したが、あまり大きな変化はないが、よく見ると、部屋の入り口にパスをかざすものがあった。
職員や隊員達も普通に使用しているために自動で教育されたらしい。 親切設計ですね。
それから数日たった朝に街と基地との境界の場所で、不審者が逮捕されたらしい。
容疑者は、スタン弾を自動制御銃で食らって、行動できなくなっている所に当直の警備担当に捕まったらしい。 そして、事情を聴くために尋問室に行くと、先の掃討戦にいたタヌキ耳の女性士官がいた。 それも同じ顔がもう一つ。
「君、双子なの?」
「はいです。 開放してもらえませんか?」
「それはこっちの疑問が解決しないと無理かな。」
「さっきから正直に答えているのに変な音がすると、嘘をつくなと、怒られるです。」
「あー。 それはそうだよ。 本当の事を言わないと、多分拷問室もあるから素直に言ってね。」
「拷問室・・・。 嫌であります!」痛いのは嫌です!妹が傷つくのも嫌です!」
「あー。 やはり姉妹か。 道理で似ていると思った。」
「あっ。」「・・・お姉ちゃん」
「ごめんであります。」
隠しておかないといけない事をいくつかボロを出してしまった姉を冷たい目で見ている妹。
しかし、本当の事を聞くために拷問の様子を見ることの出来る部屋に連れて行った。
ちょうど、街の近郊で悪さをしていた連合の窃盗団がいたので、拷問をするところだったからだ。
「まずは石抱きな。 鋭い突起のある石の上に座らせて、その上から石を乗せていくやつな。 最後は石の重みで、足が砕けるやつな。」
彼女達の前で、石抱きをさせられている男はずっと叫んでいた。 痛みで気を失うと、水をかけて起こすそして、尋問を繰り返した。
「次が女性にはキツイかな?男でも辛いけどね。 三角木馬ね。 見て分かるように後ろ手に縛られてあの馬の上に座る。 座る面は鋭角になっているから食い込む。 自分の体重でね。 それだと足りないから背中や足に重りを付ける事で、余計に食い込む。 最悪、下半身がダメになる」
当然、そこに座らされているのは中年の女性で、ふくよかだったことで、余計に食い込んでいた。 よく見ると、少し血も出始めているようだ。 こちらも気をうしなうと、水がかけられた。
「最後は鉄の処女な。 こちらは拷問具というより処刑用だな。 あの棺みたいな中に人を入れて蓋を締めると、体の急所じゃない場所に鋭い槍の様な物が突き刺さる。 当然、叫び声も聞こえるが、大抵がその痛みのショックから死んでしまう。」
さすがにこれをされている者はいないが、たった三つの説明でタヌキ耳姉妹は蒼白になり、小刻みに震えていた。 耳は下がり、尻尾も垂れていた。
追い打ちを仕掛ける。
「まあ、他にもあるけど、体験するならリアルがいいだろ?このどれかでもこちらは構わないけど、本当の事を言わないなら仕方がないよね?でも心配しなくていいよ。 二人同時でしてあげる。 優しいだろう?」
「「ひっ!」」
流石にここまでくると、互いに手をつなぎ震えていた。
いま、叫び声の聞こえるどれかが、自分と妹の声に変わるのだ。 恐怖しかない。 まだ、足りないようなので、止めを刺すことにした。
「あっ、この街は一度、無理難題を言った馬鹿が、処罰されたから。 当然、君らの身元も国に確認をとる。 当然家族構成も。 分かった時点で家族と一族は、こちらに勾留して、尋問する。 嘘があれば、当然ね?わかるでしょ?」
「「!!」」
ここまでくると、言葉も発せない程の恐怖からガチガチするだけで、話せない様子だったが、当然許さない。
「仕方ない。 国に確認をする書状をだそう。 他にスパイがいることを含めて連行しよう」
踵を返す俺をやっとの思いで、裾を掴んだ姉タヌキさん。
目は涙でいっぱいになっていた。
「まっ、待ってください・・・。 家族は・・・。 家族だけは・・・。」
「素直に言わないなら仕方がないでしょう。 家族を尋問し、裏を取るしかない。」
「そんな・・・。 年老いた祖父ややっと言葉を覚えた姪もいるんです・・・。 慈悲を・・・。」
「素直に言わないならこちらはやりたくなくても仕方がない。 甘んじて受けて貰う。」
「本当の事をいえば、助けてくれるでありますか?」
「そこを判断するのは、貴方ではない。 こちらだ。 当然嘘なら目の前でどちらかを拷問しながら尋問することも視野に入れている。」
「「!!!」」
とうとう声もなく、さめざめと泣きだす姉妹。
そして、絞り出すように言った。
「本当の事を話すです。 だからどうか、どうか家族にも一族にも手を出さないで・・・。」
「それはあなた次第だよ」
そこまで脅かすと、色々話してくれた。
国でアバロンについての規制をした事と、処罰を受けて一族追放でされた貴族の事も伝わっており、その轍を踏むことになることは、明白だったことで余計に話すしかない状況になった。
やはり、国の軍閥系の貴族が背後にいた事と国の中でもこの貴族の事は知られていたが、アバロンの実力を図る意味で、気づかないふりをされた。
「これはもう一回、アバロンの物資差し止めが必要かな?」
「ここは私に任せて頂けませんか?」
「副指令殿?何か案が?」
「はい。 司令の力が知りたいのでしたら良い方法があります。」
「ほう。 任せても?」
「いいですわ。 最高に胸のすく思いをさせてあげます。」
それから副指令殿は、様々な情報を仕入れた。 当然、タヌキ姉妹は馬車馬のように働かされた。
謝罪と贖罪のために、自身を尻尾きりにした連中に仕返しをするために。
そのまま、数か月の準備期間をおいて、最後通告書を王宮に突き付けた。
1.下記の事がすべて履行されない場合は、物資の輸送を完全にストップすることを決定する。
2.今回の偵察兵が来たことに対するしかるべき立場の担当者による説明と謝罪各種。
3.気づいていたのに、無視をした貴族家56家の謝罪と償いの要求(実名公開)
4.契約不履行に対する説明および謝罪と輸送差し止めに対する国の承認・国内公開。
5.今後の話し合いに対する対応。
これらの事を書き記して、王宮に送ると、今度こそ大変な騒ぎになった。 なにせ、説明に来なくてはいけない貴族家には、侯爵や公爵の家や高位の貴族家が名を連ねていた。 当然、気づかないとかは無理でどうして対応しなかったかを話さなければ、いけなくなった。 それどころか、本音を伝えれば、当然の事ではあるが、止められる。 嘘でも同様。 代わりの者を寄こすことは、嘘を認めたことになるから当主が行かなければならない。 しかも相手が指定した日・時間に。 遅れても出なくても同じ結果になるのだから大変だ。 その上で詫びをしないといけないのだから、余計に気を遣う。
位が高いものが大したものを持ってこれなければ、恥になる。 その上、マサルを納得させるものが必要だから大変。
次の担当部署の説明と謝罪も本来は不可能だが、それを望んでいると、言う事で諜報部の責任者と担当の責任者が呼ばれることになった。 一番、国が認めたくないのは最後の方の二項だ。 国として『もういりませんよ』と、言わなければいけない。 まだまだ必要なのに。
それを認めれば、各貴族や王族や国が、自身の手で物資を調達しないといけない状況にある。 待っているのは、確実な弱体化。
そこで最後の検討する機会を設ける話し合いにすべてを掛けることでなった。
とはいえ、名指しされた貴族達は当然行くとこは確定している。
いまは国も自国の貴族の事を気にしている場合ではなくなった。
最後の審判を受けるような顔で来る者、論破して優位に立とうとしている者など、様々だがアバロンの力が大いに振るわれる事なった。
貴族家のほぼすべてが、取引が出来なくなり、出来るとこでも大幅に少なくした。
その上、国が輸送停止を命令する書面に宰相名前でサインをしたために、ほぼ物資がないほどまでに下がった事で、貴族は自身の財産を売り払い、物資を買い与えた。
国も直轄地に配った。 しかし、物資はアバロン以外の所から調達したために割高になる。 ここにきて、本当の意味で敵にしてはいけない事を思い知らせた。
中には、家具がほぼない家や調度品がなくなったいえもある。 広い領土を持つ高位貴族は、多くの金銭を放出した。
余計に街の危険性を思い知らされて国サイドは、多くの貴族や市民たちより突き上げを食らい、復興に際しての不満が噴出した。 セルフで警備をしてくれる傭兵隊の面々は同じ道のりだと、共に行ってくれる上に同乗警備もしていたことで、余計に突き上げに行商人からも来た。 彼らは傭兵隊のトラックに同乗してきたこともあるからだ。 途中で命を救われた者も参加したことで混乱が凄かった。 これにより軽く見ていた貴族達は、アバロンを軽く見なくなり、王族も下手な手も打たなくなった。
一月後・・・・。
「お頼み申す・・・。 機嫌を直しては下さらんか?詫びは何でもする・・・。」
相当な突き上げを食らったらしく、宰相さんの耳も尻尾も垂れていた。
その顔も疲れ切っている上に寝ていないらしく、青かった。
「私はあなた方、貴族や王族という方々に『なんでも聞いてくれる者達』とか、『金次第のクズ』とかいうものでは、ありません。 その態度が気に入らなくて、ストライキをしました。」
「・・・。 ストライキが何かは分からないが、意味は今回ので理解した。 機嫌を治して下されるかなのう?正直、限界に近い。 流石に今回の事で、貴族共も嫌という程にわかった。 貴殿らの邪魔はしないから本当に、本当に勘弁してくだされ・・・。」
一国の宰相が、一つの街の長に頭を下げる。
これは途方もない事だ。 隣にいた副指令の方を向くと、さすがに悲しそうに訴えてきたので、許すことにした。
「分かりました。 今後は変な突き上げや押し売りをしなければ、良しとしましょう。」
「すまぬ・・・。 恥を忍んで頼みがある。 早急に物資を運んで頂きたい。 餓死者を出してしまうかもしれん状況だ。 急いでほしい。」
「分かりました。 動かせる車両を一回、全部出しましょう。」
「忝い」
マサルは所有するトラックとハーフトラックその他にトレーラーまでを使用して、詰めるだけ詰め込んだ状態で、出発させた。 トラック総数だけで80台は出した。 いつもは20台程度なので、4倍も量を一度で運ぶ。 護衛も200名出して、万全を期した。
こうして、アバロンの街が中心となった危機は『アバロン危機』と、名付けられたこの騒動が終息した瞬間であった。
この騒動以降は変な偵察などをせずに普通に見学するようになり、技術を盗もうとする輩はいなくなったのである。
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