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撃鉄の響く戦場にて  作者: KY
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お宅訪問

少し体調が整っていないので、やはりきついです。

私も一回体調が悪くなってしまうと、どうしても長くなってしまうのですが、いまそれです。

『獣王国要塞都市指令様が来訪する』


通信でこのことを知った基地は、上へ下への大騒ぎになった。

特に商業ギルドは、この街では一番彼らと対面をしてきたメンバーであったがために、大いに驚いた。 片や1万人もいない町に、すでに数十万はいようかという街の代表がくるという事は異常だった。 


「出来たばかりのここにくる?ありえないだろう・・・。」


「とはいえ、来ることは確定しているようです。 受け入れ準備をしませんと」


「わかっている。 多分、こちらの工場を見学に来られるのであろう。 食糧難の獣王国に大量の食料を運んでいるこの街。 やはりそこは異常ではあるが、そこはこちらの管轄外だが、街ではこちらだ。 まずは清掃を徹底させよう。 宿や食料、酒等の準備を始めよう。 あちらから伝令も来るだろうからそこから対応しよう。」


「はい。 わかりました。」


商業ギルドを通して、清掃や物資輸送の依頼が発布され、そのほかの業種からも依頼が多く、発布されていた。 力に自信のある者は物資輸送に。 ない者や市民たちは、小遣い稼ぎで、清掃業務へと、散ってく。 基地待機組も基地内の清掃と整頓を行い、受け入れの準備をした。

こうして基地司令をエスコートしての帰還となった。


「さて、私はどんな歓迎を受けるのかしら?」


「詳しくはわからない。 詳しくは。 ただ、歓迎はしてやれると思うぞ。」


街が近づくにつれて少し不安そうに頭の耳を倒した彼女を慰めると、倒れていた耳は立ち、尻尾も少し元気そうになった。 


「そうか・・・。 期待しよう。」


彼女自身は不安はある。 自分達軍人は要塞に籠り、民を助けずに、助けられずにいた事実。 結果的には勝てたが、住む家も失い、一時は路頭を迷った。 原因は帝国の侵攻ではあるが、守れなかった事実は消えない。 そこが彼女の中に影を落としていた。


「何を気にしているかは分からないが、詫びのつもりで来たのなら帰るぞ?彼らは自分のため、家族のために奮起し、今を築いた。 彼らの今を見てくれるなら連れていくが、彼らの”過去”を振り返させるのであれば、街には入らずに引き返す。 どうだ?」


「そんなつもりは・・・。」


口では、違うと言いたいが、心は違った。 本当は断罪された方が良かった。 そうすれば、自身の苦しみからは解放されるから、区切りがつけられるから。

しかし、マサルはそれではなく、今の彼らを見て、自身の区切りをつけろと、言っていた。

断罪をされるかもしてないが、黙って受け入れろと、伝えた。


「彼らは過去ではなく、今を生きている。 傭兵団の中でも身内が帝国に殺された者などはゴマンといるのが、現実だ。 彼等はなぜ傭兵団に志願をしたか? それはこれからそのような人を出さないようにするために志願した。 彼らは今を生きている。 そこを忘れてはいけない。」


「・・・。 君もそうだったのかね?」


「ああ。 過去にな・・・。」


彼女もここで彼も影を持ち、そしてそれを抱えて生きてきたことを知った。

そして、影を持ちながらも進もうとしている事に共感にも似た感情を抱いたのであった。


彼が獣人で、我が国の士官であったのであれば、良かったのに・・・


そこまで考えたとこで、自身が暴走していた事に気付き、首を振った。


何を考えている!惚れてるみたいではないか!


考えがループを始めた頃に自信の顔が、赤面になっていることに気付けなかった時にふとマサルが近づいた。


「大丈夫か?顔が赤いようだが?」


「!!!・・・何でもない!離れろ!私は平気だ!」


「そっ、そうか・・・。 わかった」


そういって、反対の窓際に戻ってしまう。 あまりにも突然の急速接近で、驚いてしまったが、胸のドキドキは自分の中で、隠しきれなかった。 


「マサルをオスとして、番の伴侶として、意識してしまったのであろうか・・・。」


「ん?なんか言ったか?」


「いや、何でもない。 行こう!彼らの今を。」


「分かった。」


彼女の呟きは、人族のマサルには聞こえなかったが、運転席に座っていた運転手の獣人には聞こえていたのであった。 その証拠にピクピクと、運転手の犬耳が動いていた。 その笑顔も嬉しそうだった。

こうして、街へと車はひた走る。 今を見に。


   --------------------------------------

<基地入り口・街入り口門見張り台>

隊長が来てもおかしくない時間になり、周囲を監視がてらに隊長たちのトラック群を探していた兵士が、地平線の向こうに砂埃を発見した。


「ん?」


再度、それをみると、隊長たちのトラック群であることを見つけた兵士は下に向かって叫んだ。


「隊長のお帰りだ!開門!開門!」


下にいた兵士達は俄かに忙しくなった。 開門の準備は出来ていたが、再度の確認と安全確認開門作業をしていく。 重苦しい音と共に開く門とどんどん近づく車両。

そして、待ち構えたように出迎える住民たち。 危ないからと止めに入る隊員達。

また、忙しくなる。


「最低限だけ残し、応援に行くぞ!」「はっ!」


2名を残して、3名で雑踏整理に向かった。

今日もここは忙しい。 班長の心はこれから始まる事に期待をした目で、階段を降りていった。


     --------------------------------------

<基地入り口・正門>


「これはまた・・・。 予想外だな。」


「すごい・・・。 ここまでしてくれるの? 本当に・・・。」


彼女は断罪されることを予想し、武装して襲ってくることを予想していたが、門の向こうにはたくさんの人が、笑顔で出迎えている。 手に獣王国の旗を振っている人たち。

彼女は溢れる涙が止まらない。 そこへマサルの声がかかる。


「そろそろ進んで良いか?手を振る準備は良いか?」


「ええ、待たせたわね。 進んで頂戴。」


「はっ!」


彼女の号令で運転手がジープを進める。 彼女は後部座席に立ち、片手をあげて沿道の声援に答える。

そして、ジープの周りを隊員が囲む。 しかし、小さな襲撃者が彼女を襲った。


「父ちゃんと妹の仇!」


6歳くらいの獣人の男の子が、赤い実を彼女に向かって投げた。

その実は、彼女の体に当たり、赤いシミを作った。


「大丈夫ですか!?」


「不届き者を拘束し・・「してはならん!」・・・はい。」


彼女は襲撃者の少年に近づく。 すぐわきの通りから母親と思われる女性が飛び出してきた。


「どうか、お慈悲を!罪は私が受けますので、どうか、どうかこの子だけは!」


母親は必死に地面に頭をつけて命乞いをした。 本来なら即銃殺されても仕方がない事に、周りも静まり返る。

彼女はジープから降り、付いた実の残骸を落とし、歩いていく。 子供に向かって。


「お願いします!この子だけは!」


縋り付くように彼女に頭を下げる母親。 それを気にせずに進む。

子供の前まで来て、しゃがむ。


「ひっ!殺すなら母ちゃんじゃなく、俺を殺せ!やったのは俺だ!」


「いいえ、子の過ちは親の責任です!私を!ですから!」


互いに自分を殺して収めてくれと、主張する親子に彼女は静かなそれでいて、はっきりと伝えた。


「この子に罪を問う事はしません。 それを言うなら守り切れなかった我ら軍人に責はある。 この子も晴らせない悲しみをぶつけたかっただけだ。 悪かった。 君の父と妹を守れなくて」


そういうと、彼女は男の子を抱きしめた。 何も言わず、ただただ抱きしめた。

抱きしめられたことで、堪えていたものが切れたのか、その子は泣きだした。 大きな声で。

彼女はそれを抱きしめたまま、受け入れた。

見れば、沿道の人々も涙ぐんでいる。 多かれ少なかれこの街にいる者すべてが、何か悲しみを持っていたから。


「ごめんなさい。 本当に罰を与えるなら僕にして下さい。」


「だから処罰しないと言っている。」


「ありがとうございます!ありがとうございます!」


母親共々、頭を下げている。 

その光景を見ていた市民たちが、とても良い物のように映った。


「そろそろ行こうか。 道を開けてくれ」


「はい!すいません!」


少年の母親は子供を抱えて、道を開ける。

周りにいた住民たちも道を開けてくれた。 

ジープに戻ってくる彼女を迎えた。


「どうだった?」


「ふむ。 まあ、自分の中でも区切りが出来た。 すまない。」


「どういたしまして」


「あらためて行こう」


「ああ、車を出してくれ」


「はっ!」


再び車両は走り出す。

後続の車両も走り出す。 基地の入り口から基地の奥にある工場へと向かっていく。

食料生産工場は彼女にとっては、大きな目的であった。

自国の食料事情の改善に一役買っているこの工場での生産品は、無視が出来ない。

そして、目の前に流れていく食料を驚きを隠さずに見ている。


「ええ!それは勿論!故国を救ってくれた物資に感謝してもしたりないほどだ!あの食料一つでも多くの人々の腹を支えた物資だ!」


「そっ、そうなのか? まあ、役に立って何よりだ。」


その後、兵器工場等の見学をしてから基地の指令室へと向かった。

そして、彼女は根幹の指摘をした。


「工場を管理している者はいるのか?」


「いや、現状は俺だが、追い付いていない事は否めないな・・・。」


「それはいかんな。 国に問い合わせて、適任者を赴任するように呼び掛けよう。」


「すまんな。 こちらは人材がいなくてな。」


「気にするな!裏から手をまわして、私が赴任するようにするがな・・・」


「ん?なんか言ったか?」


「いや!なんでもないぞ!今日はここに泊るぞ!」


「ああ、構わないぞ。 ただし、女性用宿舎だぞ?合同宿舎じゃないからな。」


「分かっている!まだ節操まではやらん。」


「お前、何言ってんだ?」


こうして、にぎやかでちょっとしたトラブルもあった一日だった。

様々な事柄が起きたが、夜が更けていった。



いま、『アメバTV』の『ゆるキャン』をみながら、うってます。

高校の時の無計画キャンプを思い出します。

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