第0話 プロローグ:天界を追放された俺は、レベル0の幽霊になった【削除されなかったバグ】
初めまして、白石ソラと申します。
本作は、完璧を謳う天界のシステムエラーから生まれた、存在度0.01%の幽霊「タリエル」が這い上がっていくファンタジー小説です。
本日より【1日1話】のペースで更新してまいります。
皆様の日々の読書のひとときに、少しでも寄り添えれば幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
プロローグ - 削除されなかったバグ
天界の管理室は、今日も忙しかった。
雲の納品書が山積みになり、後光の在庫が合わず、誰かが「また七番区画に穴が空いた」と叫んでいた。
そんな中、一つのエラーが、誰にも気づかれずに表示された。
【存在度0%の魂が、天界に残留しています。自動削除しますか? Y/N】
インターン天使のミカは、両手に納品書の山を抱えていた。
本来はYを押すべきだった。マニュアルにはそう書かれている。
でも、山が崩れた。その拍子に、指先がNに触れた。
カチッ、という小さな音がした。
その一つのNが、一つの物語を始めた。
削除されるはずだった魂は、削除されなかった。
存在度0%なのに、0.01%だけ残った。
バグだった。天界システムが稼働して以来、初めてのバグだった。
そのバグは、透明な幽霊になった。
名前は、タリエル。
後光もない。翼もない。レベル0。
誰にも認識されない。誰にも名前を呼ばれない。認識フィルターにすら引っかからない。ただ、天界の端っこで、小さく丸まっていた。
でも、タリエルは、消えたくなかった。
忘れられたくなかった。
だから、存在しようとした。
名前を呼ばれようとした。
屈辱を受けてでも、存在度を上げようとした。
天界の空は白かった。
でも、その白さの裏側には、無数のコードが流れていた。
存在度、レベル、後光、翼、祈り。すべてが数値で管理されている。誰も見ないコード。誰も気にしないコード。
そこに、一つの魂が引っかかった。
削除されるはずの魂が、コードの隙間に引っかかった。
だから、消えなかった。
存在度0.01%の、透明な幽霊として。
管理室の時計は、今日も少しだけ遅れていた。
天界の時間は、地上より少しだけ早く進む。
だから、時々、こういうバグが起きる。存在しないはずのものが、存在してしまう。
誰も気づかなかった。神ですら、気づかなかった。
たった0.01%では、認識できないからだ。
でも、その0.01%が、物語を始めた。
天界は、神が作った完璧なシステムだと言われていた。
でも、完璧なシステムほど、一つのバグで崩れる。一つのバグが、システムに多様性を与える。
そのバグが、やがて神になる。
片翼しかない、後光もない、不器用な神に。
これは、忘れられた幽霊が、神になるまでの記録である。
まだここにいるから。
消えるまで、ここにいる。
それが、すべての始まりだった。
プロローグをお読みいただきありがとうございました。
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