97.下準備
〜前回のあらすじ〜
アミとシン、リゼは各々旅行、任務に出かけた。帰ってきたので、今日からはまた黒龍討伐のために必要な魔石集めに向かいます!
本日より、視点はリゼに変更です。ご注意を。
外から鳥の声がする。朝だ。
まだ慣れない中、魔王城という敵の屋敷で目を覚ます。今の時間は…ん?
「あぁぁ!やらかした!アミ、起こしてよぉー!」
朝から私、リゼの悲鳴が響いた。
とりあえずアミに文句言いに行こう。
自分の部屋を出て、アミの部屋の前に行き、扉をノックする。
「アミ!起こしてって言ったじゃん!」
そして叫んだ。
すると、アミは起きていたようで扉が開いた。
「おはよう…そんなこと言われても、起こす約束なんてしてないって」
昨日は疲れていたのだろうか、アミもまだ眠たげだ。
というか
「あれ?約束してないっけ?まあいいや、今日はダンジョン行くぞー!」
昨日のあの地獄のような任務は忘れ、私は決意を新たにした。
「うーん、とりあえずシン起こす?」
「私が朝ご飯作っておくよ。リゼ、任せた」
アミに任された。せっかくなら、シンに痛い目見させてやろう。
「じゃあ、氷魔法でも使うかぁ」
「いや、ちょっと待って!普通に、起こして!」
振り返ったアミが焦った声で止めてきた。
つまんない。
「そっかぁ…じゃあ、普通に部屋に入って、氷を肌に当てて起こすよ」
「それくらいならまあ…よし、リゼ任せたよ…」
とりあえず、扉をノックする。
「シンー、起きてるー?」
もちろん、反応はなし。わかってた。
だから、勝手に部屋に入る。
「起きろ、さっさと」
私はそう言いながら、氷魔法を使う。
もちろん、シン全体を覆うように、だ。
シンがベッドの上で氷に埋まっている。
私にまで冷気が伝わって来るほどだ。
「さっむ!なにこれ…って氷かよ!意味わかんねぇ…今は冬だろ…凍死するって」
やっとシンが起きたようだ。
火魔法を使って溶かしてくる。
それはそれで癪なので、さらに冷水をかけてやる。
「冷たいっ!……リゼかよ」
シンの呆れと怒りの混ざった顔が見える。
「僕が凍死してもいい、と?」
「それくらい些細なことでしょ」
「どこが!」
「それより今、アミが下でご飯作ってくれてるから、行こう」
「わかった」
いつも通り平穏に起こされたシンは眠そうだが、ついてきてくれた。
「リゼ、おかえりー。ご飯できたよー」
下の階に降りると、アミは机にご飯を並べ終わっていた。さすがだ。
今日の朝食は…っと。
机に並んでいるのは、米と卵焼きと味噌汁だ。シンが作ってたのは知ってる。和食というやつだ。でも、どこで知ったんだろう。この知識は、普通に生きていて知るものではない。
「アミ、これはどこで?」
「あっ、タウが教えてくれたやつだよ。まあ、お米の炊き方を聞いたら教えてくれただけなんだけど…」
なるほど。それなら納得だ。
おそらくアミのスキルであろう、あの憎き魔王の復活。いったい何が何なんだか。黒龍討伐の終わった暁には、ぜひ聞いてみたいものである。
「ありがと。じゃあ」
「「「いただきます」」」
その後は3人で黙々と食べて、片付けをした。
各々ダンジョンに出かける支度をしてからリビングに集合ということで話がまとまった。
なので、私は自分の部屋に戻る。
そう言っても、用意なんてほぼないけど。
「とりあえず、髪整えますかぁ」
鏡の前に立ち、髪を結ぶ。いつも通り、上で高くひとつに。
服装は大丈夫。
あとは…毒。準備、大丈夫かな?
とんでもなく強いドラゴンと今日も戦う可能性が高い。ということは、かなりの毒を、さっと用意できるようにしておいたほうがいい。
「一番強いやつは…無理だよね」
それは、最終手段だ。契約を使用しないと作れないレベルなんだから。
「とりあえず、できるだけ数と、質を上げよう…」
数分後。今日は困らないだろうというレベルの毒が完成した。これなら大丈夫だろう。
私は下に向かった。
「リゼ、遅いよー」
アミとシンがリビングで待ち構えていた。
「ごめんごめん。ふたりが早いんだよ!さ、行こう」
「そうだね。今日は、ここだ」
そう言ってシンが指差したのは、黄色で縁取られたコンパスだ。
「きっと、青のところは強い。最後に行こう」
なんで…。
「なんでわかるの?」
うん。アミが代弁してくれた。
「…南の森にはアンデッドが出る。彼らは強い。西の海はわかんないけど、南ほどではないと聞いてる。ダンジョンの中に出るのは、森とかに出るモンスターだから、弱いところを先に攻めよう」
あ、西の海の情報は私が持ってる。
私はスキルを使用する。頭の中に、情報の引き出しがたくさん出てくる。西の海は……これだ。
「西は海だから、魚…と言ってもあの…なんて言うの?あの大きいやつ」
肝心の名前は載っていなかった。
こんなところで役に立たないとは…。
「特徴は?」
念の為、シンが聞いてくれる。
「歯がギザギザで、おっきくて、食べられたはず…。身の色はオレンジ。なんか、寿司にもなかったっけ?」
アミが、少し時間を置いてから言う。
「それって…サーモン?」
それだ!
「あっそれそれ!弱そうに聞こえるけど、強いらしい」
「僕のイメージも弱いね。異世界の知識のせいかな。異世界では弱いらしいんだ」
でも、この世界では強い。
だから私も情報を持っているのだ。
私のスキルにも、量の限界がある。
途方もない限界量だけれど、500年以上受け継いできたら、とんでもない量になる。
だから、必要ないものは残っていないのだ。
その上で疑問が湧く。
これは、アミが知っていることはないはずの情報だ。
「アミ、よく知ってたね…もしかして」
私の推測は、まだ推測にすぎない。でも。
「そうそう。タウが教えてくれた」
正解だ。
「随分と協力的だね…。何を企んでいるのだか」
シンは疑い深くなったようだ。
私も、そう思う。
昔のタウの情報からしても、こんな反応をするとは思えない。
「まあいいじゃん!行こうよ!」
そんなこと考えてても仕方がない。
とにかく、明るくいこう。
「そうだね!」
私たちは、一階に降り、外に出た。




