89.タウとの日々〜2〜
〜前回のあらすじ〜
タウ(声しかないけど)と一緒に森に行き、魔物を狩ろうとしてタウに魔法を使ってもらったら、人を巻き込んだみたいです……。
さすがにお腹が空いていたため、タウの魔法に助けてもらいつつ集めた魔石をギルドで売り、ご飯を買って食べた。
タウによると魔力がすごく減っていたらしく、ご飯が必須な状況だったようだ。だから多めに買って食べた。それでもお金は余った。
やっぱり魔王様はすごいんだ。
そう思いながら帰ったのだが、門番によって私の思考が現実に戻された。
「アミ、今日得たものを渡しなさい」
そう言って職員は、私に手を出す。
なんでわかった?いや、そうか。もらったお金を入れた袋、それをそのまま持ってきてしまっていたんだ。隠しておけばよかった。
『おい、こんなやつの言うことは聞かなくていい。明日の飯にしろ。なんのために渡すんだ?』
タウが、言ってくる。本当にその通りなのだが、職員にも、タウにも逆らう勇気がでない。
『あんまりモタモタしていると、どこからか突然炎が現れるかもしれないぞ』
脅しじゃん!そこまで言われたら逆らえない。
私のことをわかりすぎている、タウは。
「……嫌です」
そういうほかなかった。
「それが通ると思ってるの?渡せ」
『命令口調かよ。感じ悪いなぁ…』
タウに同意だ。どこかの脅してくる、魔王様とかいうやつよりは感じが悪くないけれども。
『おい、あまりに無理そうだったら、俺に任せろ』
わかった。が、そんなことをしたら、孤児院ごと終わるだろう。だって、この孤児院にいる人はみんな同じような態度なんだから、これくらいのことで殺す、傷つけるとかしていたら、人がいなくなる。それは不本意だ。
私が黙っていたら、職員は話題を変えた。
「そういえば、森に行って帰ってこない3人組がいるのですが…何かご存知で?まさか、あなたが見捨てたということではないでしょうが…もしそうなら、然るべき処置を取りますからねぇ…」
これも、脅し?濡れ衣を着させられる?濡れ衣……いや、まさか!!
『タウ、君殺したのって、どんな子かわかる?』
『おそらく幼子だろうなぁ。5,6歳ほどか』
「その子たちは、何歳くらいですか?」
「先日、6歳になったはずです」
ビンゴだ。どうやって誤魔化そうか。濡れ衣ではないが、着させられたくない。
『タウ、どうしよう』
『さあな。俺はどうでもいいからな』
肝心なところで役に立たないね。
「私は存じ上げません。そして、これ。これはお金です。出し渋って申し訳ございませんでした」
『あっちょっと!!俺の飯!!』
仕方がないじゃん。これは。
『必要経費だから。また明日狩ろう?』
『いや、明日はお前を育てるからだめだ。……そうだな。それなら、明日からは、実戦式で鍛える』
…嫌な予感がするが、まあ大丈夫だろう。
職員は満足、という顔を隠しもせず言った。
「そうね。ありがとう。今日はもう寝なさい」
そう言って、部屋まで見送られた。
その次の日。
「お腹すいたぁ…」
昨日の夕飯は、用意されていなかった。
うっかり、食材が1人分なかったらしい。
だからうっかり、私の席にご飯の用意を忘れた、と。
やっぱりご飯がほしい。
今日もご飯は自分で手に入れるしかないのか。
『……これから夕飯は、収納魔法にしまうことにしよう。これからは。魔石を手に入れに行くぞ。武器を持て』
武器?たしかに孤児院には貸し出しの機能があるが
『多分、もう借りれない』
きっと、私に貸してくれる場所など…
『ならば、後で俺が作る。ただ、すぐに壊れるだろうから気をつけろ』
ありがとうございます。めっちゃ助かります。
ご飯を求めて、森に到着した。
『よし、剣だ。これで戦ってみろ』
火属性、鍛冶魔法だと言いながら、タウは剣を作ってくれた。
さぁ、やるしかないか。覚悟は決めた。
都合よく、ゾンビが数匹近寄ってくる。
「いけっ!」
私はひたすらに剣を振るう。
型なんてあったものではない。とにかく死なないように、あと近づかれないように。怖い。
それが結果に結びつき、一応倒せた。
ふぅ……と一息ついていると、呆れを含んだ声が聞こえてきた。
『……お前の剣技の酷さはよくわかった。今日は俺が魔石の分、敵を倒す。お前は拾って金に変えろ。それで飯食って、明日からは部屋でトレーニングだ』
そう言いながら、炎魔法が展開された。
いつの間にか近づいてきていたゾンビは、炭になっていた。いや、すぐに消えて魔石になったと言ったほうが正しい。
うん、私ひとりだったら死んでたね、これは。
その後は、タウの言う通りに行動した。そうしたら案の定、たくさん魔石が集まった。今回は前回よりもお金があるため、美味しいご飯を食べれた。倒した敵が強かったため、魔石の質が良かったらしい。
ちなみに、今日も数人が巻き込まれたが、これは仕方がなしだろう。私の思考は、いつの間にか、知らない間に、鈍っていた。鈍らざるを得なかった。
お腹いっぱいになり、満足しながら孤児院に帰る。今日はきちんと夕食も収納している。
もうすぐ、15時だ。
もしかしたらお菓子をもらえるかとわずかに、ほんとうにわずかに期待しながら孤児院に帰った。
門番には何も言われないだろうそう思っていたのに。
「おかえりなさい、アミ。院長がお呼びです」
またか、あの人。まあ、今さらどうでもいいか。
とりあえず、行くしかない。




