88.タウとの日々〜1〜
〜前回のあらすじ〜
なんか、魔王様だと名乗る声が聞こえてきたんだけど…。とりあえず森に行くか。というアミの夢。
私は起きた。1人の部屋で。いつの間にか孤独になっていた部屋で。朝を迎えた。
『おはよー』
もしかしたらまだいるかもしれない。
私の夢じゃなかったとしたら、いるだろう。
起きたらとりあえず挨拶かな、と思い、一応言った。
しかし返事は返ってこない。夢だったのか?
『……あと3時間寝させろ』
そう思った矢先に返事が来た。夢ではなかった。
というか、寝起きが悪すぎる!
『いや、君が森に行くって言ったから行くんだよ!起きて』
彼の言葉は無視して廊下に出る。この時の私は、彼は別に私が寝ていなくても寝られるということを知らなかったから、このような不思議な会話があるのだ。
本館へ歩く。でないと外には行けない。
本館にはみんながいる。通りたくなかった。
一応、
「おはよう」
と挨拶はした。誰も聞いてなかったけどね。
門に向かうため、本館の中を歩く。
そして、すれ違う人から無視されることに慣れたころ、門に着いた。門番として、職員が立っていた。名前は知らない。
「外に行くの?ああ、そう。元気でね」
私に気がついたのか、まだ何も言っていないのに、遠くから職員が言ってきた。
「あの、朝ご飯…」
私は一応聞いてみる。どうせもらえないだろうが。
「うんうん、外に行くのね。いってらっしゃい」
やはり、聞く耳持たずってやつですね。
もういいや。行こう。
私は、外に出て森を目指した。
森に到着する。お腹がすいた。でも、お金がないと何も買えないから森に最初に来るに他なかった。
『おーい、起きてる〜』
私ははなから、自分で魔物を倒すためにここに来たわけではない。彼が本当に魔王様なのか否か。ついでに魔石でも回収できたらいいな。そんな目的だ。
『寝ている。………!アミ、魔物』
そう言われてばっと振り向いて見ると、すぐそばにゾンビがいる。戦わないと…。剣は…忘れた!これはまずい。近づいてくるゾンビに、何もできずに立ち尽くしていた。
『炎火』
ゾンビがいきなり火に包まれた。
今まで見たことがないような業火に焼かれた。
私が、火魔法を使ったんだ。
……?意味がわからないが、きっと彼が使ったのだろう。自然発生した感じだが、私が使ったはずだ。きっと。わかりやすく言うと、勝手に魔法が出てきたイメージだ。
『どうだ?認めたか?』
ゾンビの魔石を拾った時、タウに問われる。
そりゃあ認めるしかない。でも、そう言っている間にも、他のアンデットは近づいてきていたため、とりあえず返事を保留する。
私はそれらに囲まれた。大体30匹だろうか。なぜこんなに発生しているのかは知らないが、どうしようもない状態なのはわかる。……そうだ!
『うーん、まだ微妙だね。この敵を全部倒せるのなら信じられるかも』
私は起死回生案を思いついた。これだ。
『そうか。炎火』
そう言った直後、辺りが炎に包まれる。
さっきとは比べものにならない高火力。
『暑い!』
『!そうか。結界を忘れていたな』
水魔法での結界を張ってくれた。
『で、どうだ?』
その言葉と同時に炎が消えた。
辺りには何も無い。私の周り、半径10mほどには、魔石が落ちているだけで、他には何も無い。
『どうだって…認めるしかないね。魔王様だ。これから何と呼ばせていただけば…?』
『別に、タウでいい。わかったならば、俺には逆らわないことだな』
そんなことわかりきっているし、逆らう気もない。
『そっか……ちなみに、今回倒したのって…?』
魔石の数の参考に、と聞いてみた。
『ああ、アンデット45匹と、巻き込まれた人間が3人だな』
…あれ?耳が遠くなる。
『巻き込まれた人ってなに?殺したの?』
知ってた。タウは、人を殺すだろうと。
こんなに早くそれに出会うとは思っていなかった。
というか、私が気をつけていれば大丈夫だと思っていた、信じていた。私の采配不足だ。
『何が悪い?人とて、生き物だ。魔物や動物は殺して良くて、なぜ人は殺してはいけない?』
それは…だって…。
私は、なぜ言い訳をしようとした?
私はタウの思考に賛同していたはず。人間を殺すのは怖くない、って。実際目の前にすると、そんなことは言えなくなっていた。
『まあ、いい。認めたなら帰るか。明日からはお前を鍛えるからな』
何も耳に入らないまま、私たちは帰った。




