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「スキル????」  作者: 古来 冷翠
4.アミ編
87/120

87.裏切り者

〜前回のあらすじ〜

意味深なスキルをスイウから受け取ったアミ。このあとどうなる…!?というアミの夢。

帰っていいと言われたため、私は部屋の外に出る。

私は帰り際に、


「この事は、絶対に言わないように。尋ねられても、ここに呼ばれて話をされた、とだけ言うように。いい?私の言う事はこの国では絶対だから」


と言われた。そこまで言われているのに話したとしたら、後に苦労しそうだ。国内で絶対だ、という権力者に立ち向かう勇気なんてありやしない。



部屋の外には、アオが待っていた。


「おかえりなさい、アミ。院長は何と」


尋ねられても、答えは1つ。


「話をされただけです。他言無用の」


何かを察したような顔で頷いていた。



廊下を通り、いつもいる本館の方に歩く。

ラゼイはおやつを食べられたのだろうな、と15時20分を指す時計を見て思った。




本館の扉を開く。

子ども30人と、職員10名で構成される孤児院の人々がいる、ボロボロの建物。


「ただいま、ラゼイ」


ラゼイを見つけたので、駆け足で近づく。


「……おかえり、アミ」


それだけ言って、そっぽを向いて奥に消えていった。

私は何かをしたのだろうか?

立ち尽くしても仕方がない。不安だったため、ラゼイを追いかけて、私たちの部屋への廊下を走る。2人部屋なんだから、逃げることないのに。

途中で、ラゼイがトボトボと歩く姿を見つけた。


「ラゼイ!私、何かした?」


ラゼイは振り向かずに、奥へと走り去る。


「別に。アミは外に出られるんだね。おめでとう」


言葉を、脳が、受け付けない。

えっ……?

辺りが暗くなった気がした。

そんな勘違いがあるものか。

いや、あるとは思っていた。でも、それでも。

ラゼイだけは祝ってくれる、信じてくれる、そう思っていたのに。なんで、なんでこうなったの?


「私はっ…!そんなんで呼ばれたんじゃ…!」


合間を入れず、


「じゃあ何!なんで呼ばれたのよ!言ってみろよ!私は、あんたが奥の、高そうな部屋に入っていくのを見た!あそこにいる人なんて、引き取り先じゃなかったらなんなのよ!裏切り者!」


と叫ばれる。言えない。何も。

あの人の言うことはここでは絶対。

言い返せるのならば、言い返したかった。

スイウを、恨まずにはいられなかった。

このことを想定できなかったのか?

私は、なんでノコノコとあの部屋に入ってしまった?


「別にそういうのじゃない!でも…言えない」


「あっそ。隠し通すんだね。もういい。このことは、全員に広まってる。明日からあんたに居場所はない」


知ってる。引き取り先がいるなんて、孤児院で知られたら、終わる。事実は、実際は違う。でも言えないのだから、似たようなものだ。


「部屋は一人で使いな。ばいばい」


ラゼイは、私たちの部屋ではなく、その隣の部屋に入っていった。



どうしようもないため、私もとりあえず自分の部屋に帰る。ガタガタで開きにくい木の部屋の扉を開けると、そこには私のもの以外、なくなっていた。ベッドさえも。もともとほぼ何もなかった部屋だが、1人分しか物がないと更に何もなく感じる。


孤独な、感じだ。


なんなんだよ。あの院長は。

私の居場所を奪うだけ奪って。

外の世界に連れてってくれるわけでもなくて。職員の横暴を止めてくれるわけでもなくて。

これからどうしろって言うの?

ご飯も、もらえるか怪しい。

だって、ここの職員は元はここの孤児だから。考えは孤児と変わっていないんだ。


もしかしたらさ。このまま風邪でもひいてさ、死んじゃったら終わるかな?こんな、苦しい世界で生きなくてもいいのかな……?


この部屋は、とても寒い。今日はまだ、1月だ。


寒いよ、苦しいよ…。

私は目を閉じる。闇がただただ、広がっていた。



『じゃあ、助けてやろうか?』


なんだろう。この声は。

寒すぎて幻聴でも聞こえてきたのだろうか。

でもそれは、ただひとつの光のようでもあった。


しばらく黙っていると、また話しかけてきた。


『ったく…幻聴でも何でもねぇよ。俺だってなんでここにいるのかわからないから説明できないが』


もしかして、心を読まれた?


『違う。お前の独り言が多いだけだ』


あ、なるほど……ってそうじゃなくて!この不可思議な現象をなんとかしないと。まずこの人?は誰だろう。……この物言いは、なんとなく…


『魔王様みたい』


好きな本に出てくる、主人公だ。

私の、心から尊敬する方。


『ん?まさに、俺がその魔王だが?』


一瞬、私の心はその言葉を受け取ることを拒んだ。

ずっと憧れていた。でも、遠くから見ていればよかったんだ。心の支え、それだけだった。

彼は人殺し。我々市民にとっては裏切り者。近くに来るのはある意味怖い。

この状況を表すと、なんかやばいやつ。それに限る。


『名前は?』


念の為に確認しておこう。


『タウだ』


一緒だ…マジで魔王様なのか?

私にできるのは、これが夢だと願うことか?

そもそも魔王様なのか?本当に。

そう思っていたら、相手から提案が飛んできた。


『信じていないか。なら、明日どこか魔物の出る場所…森に連れて行け。この近くにあるだろう?』


それくらいならいいのではないか。どうせ、居場所はない。明日には消えているかもしれないし、約束してみるのもまた一興な気がする。


『いいよ。明日』


死ぬか、なんて考えていたことはどこかへ吹っ飛んでいた。

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