76.冒険に向けて
〜前回のあらすじ〜
魔王城でご飯を食べた。美味しかった。以上!
「じゃあお風呂入って寝よっか」
シンは食器を片付けながら、今後について話し出す。
「あ、部屋割り決めよ!1部屋だけ大部屋があって、もう2部屋は同じ大きさだった。だから、じゃんけんね」
リゼが思い出したように言った。そういえばそうだった。大部屋は渡せない。
「あ、僕は普通の部屋でいいから。お風呂入ってきまーす」
えっ……?本当にいいの?
シンはそさくさと離れていった。食器はきれいに片付いていた。
明らかにあそこが一番よかったのに…。
「じゃあリゼ」
「「じゃんけんポン!!」」
私はパーを出す。
リゼはグーだ。
「やったぁ!」
「あぁ…、まあじゃんけんだからなぁ」
私は見事大きな部屋を手に入れた。
「じゃあ、シンは奥の方の部屋ね」
たぶんわかるでしょ、と言いながら、リゼはお風呂へ向かう。
「私が2番目に入るからね」
釘を差されてしまった。早めに入りたかったのに……。
お風呂に入ってきた。なんか豪華だった。
とりあえず広いし、お湯が注ぎ足されていたし、窓から景色も見えた。……景色と言っても、立ち入り禁止区域の殺風景だけだが。
それは置いておいて、あとは寝るだけだ。
「くぅ…眠い…」
今夜のベッドは期待できるから、楽しみだ。
3階まで上がって自分の部屋に入る。
ベッドに飛び込む。
「わぁ、ふわふわ…」
これはすごい。気力が奪われていく。すごく眠くなる。
『そうだろ?いいだろ』
タウは少し自慢げだ。
『そういえば、あの棚の中ってなに?』
ベッドの上を転がっているときにふと目に入った。
中身のわからない、本棚のようなもの。
『ん?見たいか?』
『少し興味ある…』
『今日はもういいだろ、さすがに。……よし。外に出させろ。別に、他には特になにもしない』
じゃあいっか。
「召喚」
光の粒が集まる。
「よし…まずは音が外に出ないように…」
タウが、風による膜を張っておいてくれた。
そんなに音が出る仕掛けなのか、これ。
「これはなぁ…魔力による鍵だ」
そう言って、棚に魔力を通す。
木が擦れるような音がして、扉が開いた。
これくらいならばわざわざ膜を張る必要はない気がするが、念には念を入れる、というやつだろう。
「これで開いたぞ。読むか?」
「じゃあこれとか読んでみよっかな」
少し薄めの本だった。
開いてみると、黒白で絵が描いてあった。
「何これ?漫画ってやつ?」
「そうだな。俺が昔読んでいたやつだ。懐かしいな……そのシリーズが好きで、持ってきたんだった」
懐かしんで次々と漫画を取り出し始めたタウを横目に、私は他の本も漁ってみる。
……いや、漫画以外にあるものが全部魔導書だと思わないじゃん。しかも古語ばっかり。
棚の中はあまり面白くなかったという収穫を得て、タウはもう消える!やばい!と言いながら棚を閉め、私は寝た。
天井が目に入る。起きた、起きたけど……。
「あ、朝だ…ここは…どこ……タウは?」
『まだ寝るから、起こすな』
タウはいる。ここは……あ、そうだ。魔王城だった。
「他の人たち起こしにいくかぁ…」
窓の外を見ると、すでに太陽は空に上がっていた。
「おーい、リゼ〜」
部屋をノックする。が、返事はない。
シンでもあるまいし、この時間に寝ているわけがない。
「一応シンのところも見に行くかぁ」
隣の部屋の扉をノックする。返事はない。
なにこれ、迷子?そんなはずがない。
「あとは…道場と2階、あ、外の可能性も…」
案外、可能性は広い。
「とりあえずしらみつぶしに探してみよう。まずは道場か…」
道場の、大きい扉を開ける。
「アミ、避けて!」
次の瞬間、シンから怒号が飛ぶ。
よかった、いたと思う反面、危ないの、と不安に思う。
しばらく経って、火の玉が飛んでくる。
私はそれを上半身を反らしてかわす。
「あ、アミ、起きたんだ!今は訓練中〜」
リゼは呑気な声で入り口へとやってきた。
なるほど。まあ、居たからよかった。それだけだ。
しばらく訓練をしてから、いや、私は見ていただけだが、それはいいや。シンは私を見て話し出す。
「アミが起きたってことは、もう朝ご飯を作ったほうがいいね。よし、片付けは任せた、リゼ」
「んー、わかった。ありがとね〜」
シンが道場から出ていった。
「リゼ、朝から何してたの?」
リゼは片付け…といっても掃除だけど。掃除をしている。私はそれを手伝いながら会話を始めた。
「うーん、まあ罠の見分けというか…。アミ、罠って発動する瞬間に少しだけ魔力の動きがあるんだけど、わかる?」
「いや、全然…」
なんか昔にタウが言っていた気がするが、私にはわからなかったため早々に諦めた。
そのため、首を横にふる。
「だよね〜、私もシンに聞くまで知らなかった。だから、それを見るようにする訓練。シンに、魔力を使って火の玉を作ってもらってたの。で、それができる瞬間を察知してた。アミも今度やる?」
やってみたい。少しでも、強くなりたい。
「機会があればやりたいな」
「そっか。よし、掃除も終わったことだし、私らも2階に行こっか」




