65.救い
いや、いきなりそう言われましても。
意味がわかってない。
『だから、来いって。さもないと俺から行くぞ』
…なにかわからないけど、多分大丈夫。
とりあえず、近づいてみる。
『何?』
『ほら』
床に座って、タウが手を広げる。
えっ…つまり…
『いいの?そんな…』
『俺がわざわざ許してやっているのだから、さっさと来い』
……不器用。そして、解釈違いだ。でも。
『ありがと』
私はタウの膝の上に乗り、ただただぼーっとしていた。
『まあ、俺はそんな裏切り方はしない』
そう言って頭を撫でてくれた。
『…ありがとうね』
小さい子って感じだったから、ついついそんな口調になってしまった。
私にとっての救いは、彼しかいない。たとえ、人殺しでも、私を利用しようとしていても。
5分ほど後。
『よし。もう大丈夫。また来れるよね?』
『まあ…俺から招集する形にはなるはずだ。俺の方が権限が強いから』
『なんで?』
『魔力量が多いから…かな。まあわからないが』
ふぅん。魔王様にわからないことが私にわかるわけがない。
『ばいばい』
目を開けると、宿だった。
いつの間にか、ソファで寝ている。
近くには、リゼもシンもいた。
「えぇっと…どうして?」
「あ、起きた!シン、起きたよ〜」
「あぁ、よかったぁ。何があったか、覚えてる?」
まだ、タウのことは言わなくていいかな。
「外にパン買いに行って…食べたら毒入りで…倒れた」
「結構鮮明に覚えてるじゃん。まあ、続きとしては、私が起きて、アミがいないことに気がついたからシンも起こして…」
「ちょっと待って。僕はあれを起こした、に入れない。あんな無理やりな起こし方ひどくない!?朝から毒で起きるって…」
まあ、そっちも大変だったということで。
「シンは放置でいいよ。で、探しにいって。まあ、シンが探ってくれたから早かったけどね。気配が薄くなってたから、見に行った。すると、倒れてたから、シンがお姫様抱っこして連れてきた、と」
えぇ…。まあ、ありがとうなんだけどさ…。
「そんな引いた顔しないで…傷つくから…」
だってさぁ…。
「今日はどうする?休んだほうがいい?」
シンに聞かれる。
「いや、大丈夫。行けるよ」
私はそう答える。
リゼはこう言った。
「う〜ん。心配だから、午後から行こっか」
優しいなぁ。この人たちは。
「僕もそれがいい…毒の残りがきつい…」
「起きなかったのが悪いから」
でも、当たりが強いなぁ。
「わかった。じゃあ午前中に昨日の報酬の話ししてよ」
私は、時間を効率的に使おうと提案する。
「そうだね…まあ、お金としてはそんなに多くないんだよね…魔石を落とさなかったじゃん?だから、依頼料だけ。…まあ、金貨10枚だから、いいくらいかな。でもまあ、私たちも結構お金持ってるからそこまで変わらない…」
「それで、魔石については…?」
シンは何かを聞いていたのだろうか。
「何もわかんないって…そんなことあるんだぁって感じらしい」
「それって、普通は魔石が落ちるってこと?」
「そうだね。しかも、その魔物の性質を引き継ぐから…最後の3体のドラゴンとか、絶対良かったのにね」
そうなんだ。なおさら疑問となる。何でそうなったのだろうか。
「多分…」
シンが切り出す。
何か言いたげだ。悩むような素振りのあとに言った。
「僕の予想だと」
少し勿体ぶってから、
「最後に倒すドラゴンの配下だ」
と言った。そしてこう続ける。
「魔石を残していないってことは、何かを媒体としたただの幻想という可能性がある」
「え、でも戦ったよね」
「契約の種類かもしれない…配下を増やす代わりに何かを差し出したのかも。だから、不完全。強いっちゃあ強いけど。それなら魔石がないことにも説明がつく」
なるほど…?
「だからこんなに一気に出てきたのかな」
「多分。様子見とか、実力の判別とか。僕たちが倒しに行くことをどこかで聞いたのかも…」
でも、どうやって?
「アミ、首を傾げてるね。まあ、わからなくても問題ないけど。これも契約だと思う。情報を知る代わりに、何かを差し出してる的な」
「契約ってすごいね」
「契約って、元は私のスキルからだから。理、という存在が確認されたことで、それに任せれば良くなったの。初めは、私たちしかできなかった」
君は何歳なのかな?すごく疑問だけど。
「それにしては私とかシンのスキルって弱k…」
急に、眠気が襲ってきた。
「ごめん、ねるね…」
意識を手放すしかなかった。




