62.ドラゴン討伐3
「ああ、助けられる、と言ったらどうするんだ?そいつは死ぬだろ?おそらく2分ほどで。モタモタしている時間はないはずだ。それを知っているはずだ。そして、俺が無償で何かをするわけがない、とも知っているはずだ。お前は何を犠牲にして助ける?」
俺は、リゼの様子を診察しながら、シンに問う。
「…何か聞き入れるから。内容によっては吟味するけど。だから…お願い」
シンは、屈辱ではあるという顔をしながら言っている。そうだな…。
ただ、今のところ困っていることは特にない。このまま計画が進めば、いずれ……。
何かあったか……そうだ。
「俺がこのように表社会に出られることはアミが言い出すまで放おっておいてくれ。それだけでいい」
「いいから…だから…!早く…」
まだ1分ほどしか経っていないというのに、シンはずっと焦っている。
俺を殺しにくるような弟のためだ。やってやるか。
「はいはい」
……やはり毒だな。ただ、光属性でしか解除できない類だ。しかも、かなり高度な光属性の魔法でしか解除ができなさそうだ。
「逆薬」
リゼは光に包まれ、しばらくするとその光は弾け飛んだ。
リゼは、目に見えて回復している。
ただ、しばらく起きることはないだろう。
「よかった…!」
シンは安堵したように見える。
俺にも得な、いい取引ではあった。
「ついでに魔力も回復しておくか」
俺はこっそりと呟き、回復を始める。
「魔復」
魔力の回復は10秒で1だ。
そこを回復できる。すべて満ちるように。
今で言うと1000まで回復ができるということだ。
「なにかしたか…?」
実はこれ、極秘だったりする。
「いや、問題ない。というか、お前はそんなに人を大事にするやつだったか?」
少し苛立ったのか、シンは話し出す。
「僕は……正しくない死を認めない……だって!こんな死に方、あんまりじゃないか……。僕は死なない。だから、いつもそれを見届けなければ……いやだ……それは……いやだ」
「そうか。俺を殺そうとしたくせに、まだ言うんだな」
皮肉の、つもりだった。
「あぁ、お前はたくさんの人を殺した。それが、その場の流れで行き着いた先だったとしても。だから、それは罰せられなければならない。だから、僕が……僕が殺そうと……」
正当化された理由だ。何度も繰り返して呟いてきたかのような、理由だ。
少しだけ俺は、シンを矛盾に持ち込みたくなった。
「今の俺はいいのか?」
「今は……様子見だ。何を考えているのかを知る必要がある」
あーあ、簡単に答えられてしまった。
ここまで考え込んであるのであれば、おそらく遊ぶことはできない。
「タウ、いったい何を考えているんだ……?」
答えにくい。とても。逃げるか。
「少し待て。……あぁ…もう無理だな」
限度がきた。という言い訳をさせてもらおう。
「また今度。時が来たら言うか。ただ、俺が話すだけでは面白くないからな。全員の過去の話でも聞いてから考えよう」
「スキルの限界が来たか。1日5回だろ」
シンは知っていたか。そうか。
「それは前世から共通だな」
工夫すればまだ…いや、これはいい。
「楽しみにしているよ」
最後に聞いたシンの声は、嘘ではなかった。
「……ッリ、リゼは!どうなったの!?」
いつの間にか、すべて終わっていた。
私がいたのは、シンの膝の上だった。
…まあ、それは置いておこう。
「大丈夫。なんとか解決したよ」
「……あの野郎。次は会って殺してやる」
なんか…ブチギレてませんか?
「あの…リゼになにがあったの…?」
「回復してくれたのが…ちょっとね…」
目を泳がせたシンを見てハッと気がついた。
髪飾りをシンが持っている。
いつの間に…。
「まあ、いいや。これ、落ちたよ」
シンが溶かしたため、前とは別のものだとは、気がつかなかった。
「ありがと」
というか、リゼは助けてもらったのに何で怒ってるのか。意味がわからないけれど、とりあえず放っておこう。
「えーと、とりあえず依頼は終わらせますか」
次の場所へと転移した。




