61.ドラゴン討伐2
「シン、次はどこにいる?」
毎度、シンに聞くのが最も効率がいい。
頼りっぱなしなことは申し訳ないが、私も転移魔法をずっと使っているのだからいいだろう。
「…今回はちょっと強いかも。気配が強め。でも見つかる程度だから倒せるとは思うけど…」
今まで、最初の攻撃は大抵向こうからだった。特筆するほどでもなく、一瞬で終わってしまったから気にしてもいなかった。
でも、今回は違う。
強いのだとなると、最初の攻撃も命取りかも。気をつけないと。
少しだけ私に緊張が走る。
ふたりは何も感じていないみたいだけれども。
「じゃあ、まずは私が強いやつとの戦い方のお手本見せてあげるよ」
リゼが勇敢すぎる。かっこいい。
「自分の身は自分で守ってね。余裕がない可能性もあるから。だってこれは特級と1級の間くらいの人しか受けられないはずの任務レベルだから」
つまり…今までは1級なら底辺の人でも倒せたけど、今回のは違うってことですよね。
やばいってことですよね。
帰っていいですか?
しばらく歩いたところに赤いドラゴンを見つけ、リゼは素早く走り出した。
「よし、まずは毒…からの解析」
リゼは、走りながら強い毒を付与し、直後に解析をし始めている。
ちなみに、この間にもドラゴンの方は攻撃を準備している。最初から溜め技を放つ予定のようだ。
不意打ちで最初から強い攻撃!という感じでないというところはとても嬉しい。
「よし、解析できたかな。えーと、弱点は…そっち系の毒なら効きそう」
そう言うと、調合をし始めたのか、リゼの動きが止まる。
「あっ…リゼ危ない!」
ドラゴンが、溜めていた攻撃を放った。
赤色のドラゴンだから、火魔法だ。
当たる!と思ったのだが、リゼはそこまで弱くはなかった。
「おっと…防御してなかったら危ないねぇ」
おそらくリゼは、水属性による防御をしていた。防御、と一口に言っても、どの属性で発動させるかによって特性が変わる。例えば火属性で発動すれば火を纏う感じで防御できるし、今回のように水魔法で発動すれば、水を纏っているかのように防御できる。
ドラゴンの放った火は、リゼの防御によって消された。
「そんで…完成。行けっ」
魔法陣が展開され、毒魔法はドラゴンに付与された。
ドラゴンが苦しみだす。
「ふっふ…水の要素を足した薬なんだけどね。君にとっては毒でしょ。私の勝ちだね」
そういうものを、フラグって言うんだと思う。
得意げなリゼに、ドラゴンからの捨て身のタックルと、最初にリゼが放った毒魔法を模倣したものが襲う。
「……っつ…!!」
ドラゴンは死にかけだとはいえ、かなりの威力があるタックルに、自らの強力すぎる毒。
リゼは倒れた。
「リゼっ!!」
私はリゼに駆け寄る。
その間にシンは、ドラゴンを火で檻を作って閉じ込めたようだ。流石に外には出られまい。というか、外に出ようとして死ぬのがオチだ。
「回復っ…効いて…」
私は無詠唱で回復魔法をかける。
「アミ。代わって。僕がやる」
たしかに私よりも、シンのほうが技術はある。
私と立ち位置を変えたシンは回復魔法をかける。
でも…
「あぁ…効かないな。何が原因?強い回復魔法がいるのか…あの程度のやつの攻撃に?……っ!命をかけて契約したのか!あいつ、知識だけはあったのか…」
そこら辺は結構どうでもいい。
それよりも、リゼが、助かるのかどうか……。
「つまり、回復は効かないってこと…?」
私は残酷な確認をした。
段々と、ここらに不穏な空気が流れてくる。
「いや、強ければきっと効く。けど、リゼも死にかけだ。回復に強いやつを連れて来る間に死ぬぞ…」
きっと、ここから街の中心までは遠い。シンがそう言うのならばなおさら確信は高まる。
「手詰まりかよ…」
そして、シンは私に向かって手を伸ばした。
…?何をすると言うのか……。
「それならば、せめて…」
シンは何かしらの魔法を放った。火魔法?
『〈スキル????〉』
気づいたときには、意識が途切れていた。
「何の用だ?ずいぶんと慌てているな、シン」
半分嘲笑の意を込めて、半分興味の意を込めて俺はシンに聞く。
というかガラス細工にすぐに火魔法で溶ける細工をするとか、暇人かよ。
俺の思考とは別に、シンは縋るように、祈るように願ってきた。
「タウ…お前なら助けられるんじゃないのか?」
内心、にやりとした。




