54.再開
卒業式までの数日を、私は読書?に費やした。もちろん、タウのためにページをめくるだけだ。授業でいろいろなことを学べたのだから、仕方がない。
また、私の集中がすぐに切れるとわかったタウは、時間を区切るようになった。おかげで自由時間もできて、部活でお別れ会までしてもらえた。
そんなこんなで、あっという間に卒業式だ。
「アミとリゼは卒業かぁ……イソク、見習ったほうがいいよ」
クウは、朝ごはんの席でそう発した。
そういえば、クウは卒業じゃないのだろうか。
聞いてみたら、
「私は、もう少しだけここにいたくてね。部活もそろそろ成功しそうなんだ……」
と言っていた。
この学院、意図的に卒業しないでいる学生が多そうな気がしてきた。
「ちなみにリゼ、同伴者って呼ぶ?」
イソクがリゼに尋ねている。
「うーん、そろそろ来るかもしれない……間に合うかな?」
あっ、誰か呼んだんだ。
「誰呼んだの?」
クウが、私の意見を代弁するかのように話す。ナイス。
「2人呼んだ。アミもいるからね、いいかなって思って」
2人……?さすがに国王は呼べないし、誰を呼んだのだろうか……。
疑問に思いながらも朝食を終えた。
「ねえアミ、招待状って見た?」
朝食後、クウは部活に、イソクは遊びに行ったところで、リゼから聞かれた。
「実はまだ見てなくて……何か重要なことでもあった?」
「いや、そこまで。開けてみなよ」
リゼに促され、私は自分のエリアまで手紙を取りに行く。それはすぐに見つかり、リゼのいる机に戻った。
丁寧に封を開けてみると、中には2枚の紙が入っていた。1枚は説明用紙。薄めの紙だ。2枚目は招待状。これは分厚い紙だ、たぶん高い。
説明用紙を読んでいくと、同伴者についてや、開催場所、開催時間、注意事項が書いてある。それと、スケジュールも書いてあった。
招待状には、空欄が1つと、選択肢のようなものがあった。
選択肢には、紙かブローチと書いてある。
説明書に帰って読もう。わかんない。
説明によると、これは卒業証書の渡し方だ。紙ならば、賞状のようなものがもらえる。
ブローチならば、胸に飾れるくらいの金属の飾りがもらえるらしい。
「リゼ、どっち選んだの?」
「ブローチ。即決だった」
「ちなみに理由は?」
「家がない」
シンプルすぎて納得だ。
たしかに私も家はない。となるとブローチのほうが良さそうだ。
ブローチのほうに印を書き、ついでに空欄に名前も書いておく。
説明書によると、卒業式は17時から。約3時間だそう。立食パーティーのような感じで行うため、夕食はとらないことを勧めると書いてある。また、開催場所は……院長室から入場と書いてある。同伴者は別入口から入場のため待機、と。
「それで、同伴者って……」
私がリゼに聞こうとしたとき、部屋の扉の開く音がした。
「いやぁ、久しぶりの雰囲気」
えーっと……この声はたしか……。
「シンだ!早かったね〜」
そう、シンだ!少しの時間しか接していないのに結構な時間会わなかったから記憶から薄れていた。黒龍討伐を一緒にする大切な仲間だというのに……。
「久しぶり。卒業式に?」
私が問うと、笑顔で答えてくれた。
「そうそう。いやぁ、やっぱり頑張ればできるものだよね、2カ月合格も」
2カ月しか経っていないという事実に今さら驚かされるが、そうだった。
「やっほー、リゼ。あ、アミさん?こんにちは〜私、イッシュっていうんだけど……」
シンの後ろから、なんか全体的に白っぽい人が入ってきた。おそらく20代後半だろう、大人っぽいお姉さんだ。
「アミ、これはイッシュ。私の保護者?みたいな人」
リゼが紹介してくれるが、私初対面に弱いんですけど……?
まあいいや。この2人が同伴者ってことか。
「卒業式までまだ時間もあるし、シンの話でも聞く?私はすでに聞いちゃったけど」
イッシュが提案した。
そういえば、シンは外国のダンジョンに行ってたんだっけ?
「じゃあ、話すか。僕はね、アーヴェキニスアって国のダンジョンに行ってきた」
そこから話される冒険譚はまあまあ長く、途中で昼食を挟み、クウが帰ってきて、卒業式の時間に間に合うのか?と言いたくなるようなレベルだったため、私が勝手にまとめていこうと思う。




